【AI漫画】いいよ、の意味 (一部手描き)



塾の帰り道、見てしまった。
夕暮れの商店街。父が、見たことのない女性と並んで歩いている。何か話しながら、二人とも声を上げて笑っていた。
父があんな風に笑うのを、この三年間、一度も見てなかった。
気づけば、駆け寄っていた。
「先週、お母さんの命日だったじゃない!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。女性が困ったように頭を下げ、「ごめんなさい」と小さく言って去っていく。父は「……帰るか」とだけ言って、先に歩き出した。その背中が、いつもより少し小さく見えた。
その夜、夢を見た。
台所に、母が立っていた。三年前と同じエプロンで、鼻歌を歌いながら味噌汁の味を見ている。
「陽菜。おっきくなったねえ」
言いたいことが山ほどあったはずなのに、何も言葉にならなかった。
「私が死んで、もう三年よ」
「……うん」
「お父さんには、パートナーが必要なの。まだ一人じゃ立てないの」
母の手が、そっと頭に置かれる。三年ぶりの、あたたかい重さだった。
本当は、わかってる。
目が覚めると、朝だった。枕が少し湿っていた。
食卓で、父はいつも通り味噌汁をすすっている。昨日のことには触れてこない。触れられないのだろう。
陽菜はしばらく黙ったあと、うつむいたまま言った。
「……いいよ」
三年かけて、ようやく出した言葉だった。
父は顔を上げ、深く頷いた。娘の気持ちを、しっかり受け止めるように。
「そうか」
そして、手を伸ばした。
「ありがと」
陽菜のトーストを取った。
「そうじゃない!トーストじゃない!」
「お父さんの恋人よ!!」
口にトーストをくわえたまま、父の目が完全に白くなった。
朝の光の向こうで、たぶん母が笑っている。

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