Gemini Omni Flashは動画版ナノバナナなのであった
糸島の大口海岸で自撮りした一本の動画が、Gemini Omni Flashにかかると渋谷のスクランブル交差点になり、雪山になり、スノーボーダーになった。ゼロから作る動画AIはもう珍しくない。だが「直せる」動画AIには、正直、椎名誠風に言うなら「ぶったまげた」のであった。

オフィスを舞台に、永井豪テイストで女子社員の肩に上司が手を置き、払いのけられるという一コマ動画。そこから「服を破って変身する様子を大迫力で描いて」と続けると、スーツの男が筋骨隆々の姿へと変身していく映像が出てきたのである。素材は同じキャラクターシート一枚。指示は日本語の会話だけ。これはもう、絵コンテを切ってから編集ソフトを開く、という工程そのものが要らなくなる未来の匂いがした。
Geminiだけでなく、flowやhiggsfieldでも、omni flashを使えます。
https://labs.google/fx/ja/tools/flow

添付1から添付2に服を破って変身する様子を大迫力で描いて。永井豪テイスト。背景は深夜のオフィス
糸島の大口海岸に、わし一人で立っていた。
Tシャツに黒いキャップ、背後には夏いちごの農場長時代を思わせる山の緑。スマホを回して十秒ほどの自撮り動画を撮る。それだけの、なんてことのない映像であった。
ところがこの動画をGoogleのGemini Omni Flashに放り込んで「背景を東京渋谷のスクランブル交差点にかえてください」と打ち込んでみたら、次の瞬間、わしは渋谷のど真ん中に立っていたのであった。海はビルに変わり、波音は雑踏に変わった。人物のポーズも表情も一切崩れないまま、背景だけがまるっと入れ替わっている。まったく理屈がわからない。わからないが、動いた。それが全てである。


調子に乗って続けた。「服装をスノーボーダー姿に」と打つ。すると同じ人物が、同じ立ち姿のまま、黄色いスノーウェアに身を包んで渋谷の交差点に立っていた。さらに「背景を雪山にして。空は真っ青」と重ねると、今度は本物の雪山でスノーボードを構える映像に化けた。極めつけは「雪山でスノーボードで滑ってるように」の一言。次に出てきたのは、雪煙を上げてゲレンデを滑走する動画である。海岸の自撮りから、雪山滑走まで。会話を四回重ねただけであった。

ここで正直に言っておく。Gemini Omni Flashは2026年5月19日のGoogle I/Oで発表され、6月30日からGemini APIとGoogle AI Studioでパブリックプレビューが始まった、できたてほやほやのモデルである。料金は動画出力一秒あたり0.10ドル。今のところ生成できる長さは最大十秒、音声の編集や動画の延長にはまだ対応していない。Googleは自社でこれを「Nano Bananaの動画版」と位置づけている。ナノバナナが画像を対話で直せるようにしたのと同じことを、動画でやろうとしているわけなのであった。
従来の動画生成AIは、要するに一発勝負であった。照明を夕方にしたいだけなのに、プロンプトを書き直せば構図もキャラの顔つきも全部変わってしまう。気に入るまで何度もガチャを回すしかない。ところがOmni Flashは「Interactions API」という仕組みで、直したい部分だけをピンポイントで直せる。海岸の動画から渋谷に飛び、渋谷からスノーボーダーに化け、雪山に飛ぶ。その全部が、元の人物の動き・表情・カメラワークを保ったまま進んでいく。これが「会話型編集」の正体である。
わしはこれまで、AIマンガもキンドルも動画編集も「0から1を作る」ことにばかり気を取られていた。だがOmni Flashをいじっていて気づいたのは、本当に時間を食っているのは0→1ではなく、1を99まで直す作業のほうだということなのであった。背景を変える。衣装を変える。表情を直す。その度に撮り直し、描き直し、レンダリングし直す——その手間が、会話一往復で終わる。まったく、なんという時代になったものか。
ちなみに生成された動画にはSynthIDという透かしが仕込まれていて、Geminiアプリや検索でAI生成であることを確認できる仕組みもあるらしい。便利さと出所の証明が同時に進んでいるのは、今のAI業界らしいバランス感覚だと思う。
というわけで、糸島の海岸から渋谷、雪山まで、わしは一歩も動かずに旅をしたのであった。まったく便利な時代になったものだが、汗もかかず日焼けもしないまま「行ってきた」気になれるというのは、少し寂しいような、少し怖いような話でもある。
読んでくれてありがとう。次回はこの技術をマンガの背景制作にどこまで転用できるか、実践編を書く予定である。
受講生様のnoteです。
フォローをよろしくお願いします。
