「ありえないことだ。天地がひっくり返っても」|葬送のフリーレン
私は『葬送のフリーレン』の世界を「力による支配 vs 人類」という構造でとらえている。
「力による支配」を象徴するものは魔族で、支配側の弱点として描かれるのが「おごりと油断」である、という解釈については、以前にも書いたとおりだ。
フリーレンたち魔法使いは自らの魔力を制御し、魔族に自分たちの力を見誤らせる。
そうやって魔族の「おごりと油断」を誘い、その隙をついて倒すのだ。
そしてこの「おごりと油断」は、人類にとっても同様に弱点となりえることが、S1E18『一級魔法使い選抜試験』以降のエピソードで描かれていく。
一級魔法使いの選抜試験では、フリーレンは一次試験の開始直後から、ゼーリエが張った結界の解析を始めていた。
一次試験の会場を覆うこの結界は、ゼーリエの絶対的な魔力や権力、そして彼女が作り出す権威的な支配構造を象徴するものだと私は考えている。
S1E21『魔法の世界』で、フリーレンはその結界を破ってみせる。
支配的な構造を物理的に破壊し、受験者たちの力を解放するのだ。
(「魔法は、自由であるべきだ」)
そして、この場面が象徴する「支配の敗北」という構造を際立たせているのが、一次試験官であるゲナウの存在だろう。
ゲナウは、同じく試験官であるゼンゼと共に、試験会場から遠い場所で、一次試験が終了するのを待っている。
ゼンゼはかねてより、受験者のひとりが結界の解析を進めているとゲナウに進言していた。
しかしゲナウは、まったく警戒しなかった。
大魔法使いゼーリエを超える魔法使いなど存在するはずがなく、彼女が張った結界が破られることはあり得ないと、決めてかかった。
フリーレンの魔法が結界を破ろうとする、その瞬間に至ってもなお、ゲナウは視線を結界の方へ向けようともしない。
優雅なティータイムを楽しみ続ける。
その余裕に、態度に、「おごりと油断」があふれ出ている。
フリーレンの魔法が結界に届き、突き破ろうとするその時、ゲナウはこう言うのだ。
問題ない。
ありえないことだ。
天地がひっくり返っても。
その直後に、「ありえない」ことが実際に起こる。
結界が、破られるのだ。
フリーレンの師匠であるフランメは、
かつてフリーレンに対し、魔族の弱点について
以下のように説明したことがある。
今まで研鑽を積んできた魔法に対する、自信と信頼。
要するに、クソみたいなおごりと油断だ。
これは等しく、人間にも当てはまる。
私たちは、知っておくべきなのだろう。
自分自身の「クソみたいなおごりと油断」が、自らの足元をすくうこともあるのだということを。
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