「魔法は、特別であるべきだ」|葬送のフリーレン
アニメ『葬送のフリーレン』の世界を「力による支配」対「人類」という構造でとらえ、さらに深掘りし、現実社会との比較をしてみようと思う。
以前に物語における象徴的な存在を、以下のように分類した。
魔族:「力による支配」の象徴。その頂点に君臨していたのが魔王
魔法:人類を支配しうる力・叡知であり、人類が魔族に対抗するための武器
大陸魔法協会:人類の中で支配構造を生む、権威的な存在。その頂点に君臨するのが大魔法使いゼーリエ。
今回は、上記3つ目の大陸魔法協会について、考えてみたい。
「全知全能の女神」に匹敵する能力を持つとも評される大魔法使いゼーリエは、その絶対的な知識と魔力を原資に大陸魔法協会を立ち上げた。
S1E25『致命的な隙』の回想シーンでゼーリエは、自分のもとを訪れてきたフリーレンに対し、魔法について、以下のように話した。
魔法は特別であるべきだ。
才ある者以外に教えるつもりはない。
彼女の専制的な思想が健在化する印象的なセリフだ。
大陸魔法協会では、魔法使いに3級、2級、1級という階級が設定されている。
そして、命すら落としかねない選抜試験を乗り越えて1級魔法使いまで上り詰めた者には、
「望む魔法をひとつ与える」という特が用意されている。
この特権について、S1E20『必要な殺し』ではリヒターがこのように説明している。
巨万の富を得ることも、大病を癒すことも、
絶大な力を手に入れることだってできる。
「巨万の富」「大病を癒す」「絶大な力」
どれも、人生を変えうるほどの特権である。
(このリヒターの発言について詳細は「一級魔法使いは、人外を疑うような化け物ぞろいだ」をご参照ください)
そして、こうした利権をとりまく権威構造は、現実社会のそれと酷似している。
例に挙げるとすれば、近現代国家における「高級官僚制」だろうか。
優秀な人材を難関試験で選抜し、国の統治を強化する目的で組織化する。
しかし、上位者に地位や財産の保障、高い裁量権といった特権を与えると、それ自体が利権化し、内部闘争を生むことが多い。
つまりゼーリエの大陸魔法協会による新たな権威構造は、人類が外部脅威に対抗するために団結しても、
内部で新たな階級・闘争が生じる、という歴史のパラドックスを表しているのだと思う。
単純比較はできないが、あえて表にまとめるとすると、以下のようになるだろうか。
【人類が生み出す権威構造 フリーレンの世界vs 現実の世界】

「魔法は特別であるべきだ」とするゼーリエの姿勢は、一見すると理知的で、優秀な魔法使いを育てるうえでも効率的な思想に見える。
しかし、社会でそれを仕組み化すれば、必ずと言っていいほど、権威構造が生まれてしまう。
フリーレンの世界でも現実の世界でも、私たちは、歴史のパラドックスから逃れられない。
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