【読書】小林秀雄、吉本隆明、福田恆存――日本人の「断絶」を乗り越える (テンミニッツTV講義録 4) その0
出版情報
著者:浜崎 洋介
出版社 : ビジネス社
発売日 : 2024/12/19
単行本(ソフトカバー) : 184ページ
はじめに
1960年代生まれの私にとって、戦前は闇に包まれている。ぼんやりとした、闇。そして、ものすごい断絶感。
母も父も戦前、戦中のことは語ろうとしなかった。昭和5年生まれの母は「物心ついた時からずっと戦争が続いていて、戦争がないということは想像できなかった」と言っていた。戦争中の話をしてよ、と聞いても「誰もが苦労したのよ、私の苦労なんて、大したことない」と。いやいや、大したことあるかないかは、聞いた私が判断することだよ、と思っていても口にしなかったしできなかった。たとえ、そう言ったとしても、きっと母は何も喋ろうとしなかったろう。母は終戦時は15歳ぐらいで思春期だ。
父は大正の終わりの頃の生まれで、多分大学生をまだやっていたんじゃないかな?終戦時には。やはり、多くを語らなかった。父の弟である叔父も学生をやっていたと思うけど、その叔父は学徒動員だか、招集がかかったかで、なんらかの形で戦争を体験した。多分外地に行っていた。満洲かな?ちょっと判然としない。自分の弟の召集に、びっくりした父は片方は下駄、片方は靴で叔父の元に駆けつけた…と叔父は言っていた。いや、そう叔父が言っていたのを母が聞いて、私がさらに聞いたのかもしれない。「兄貴は勉強はできたかもしれないけど、本当に肝心な時には慌てるばかりだった」。叔父はそんなことを言いたかったのかもしれない(知らんけど💦)。
みな故人となった。
そういう私は、のほほんと高度成長期を過ごし、のほほんとバブル期を過ごし、のほほんとその後の人生を送っている。
で、今更ながら気持ち悪い。戦前戦中と戦後の断絶が。
そのギャップはね、自分で埋めるしかない。
この本は、そういう私にまさにピッタリの題名だ。読後の感想としても、「うん、確かに日本人の「断絶」を乗り越える大きなヒントとなった」ように思う。
そんなに厚くはないけど、ぎゅっと詰まっている。ものすごく大切なことが。
そんなに厚くない本の紹介にしては、シリーズものにするという…。実際本を読む方が早いし、充実している…なので、そうしたい方はぜひそうなさってください。この記事は、ホント自分のためのメモです。自分の脳にブックマークをつけるために…。
というわけで以降は、目次をつけますので、目的のところに飛ぶのでも、ここで離脱するのでも。どうぞ、そうしたいようになさってください〜。
若干ネタバレ気味でもあるので、それが気になる方も、離脱をどうぞ〜。
全体を通して
本書の題名は長いので、これ以降、「日本人の「断絶」を乗り越える」と表記する。
災害死史観の国の民=日本人
浜崎はそうは言っていないのだけれど…、全体を通して、「あああ〜やっぱり日本人は『災害死史観』の人々なのだな〜」と感じた。『災害死史観』と『紛争死史観』は国土学を提唱する大石久和氏による分類だ。
詳しくは大石氏の著作を読んでいただければ、と思うのだが、紛争死史観の人々は、紛争死で死んだことを、いつまでも忘れないし、「誰がやったか」を覚えている。そして、恨む。一方、災害死史観の人々は、諦めるしかない。地震に対して、津波や洪水に対していつまでも恨んでも仕方がないのだ。諦めて受け入れる。大切な人であっても。大切な人だからこそ。涙を飲んで受け入れるしかない。それが災害死史観の人々の態度だ。紛争死史観の人々は2度と敵に攻め込まれないように対策をし、災害死史観の人々は2度と犠牲者を出さないように備える。
日本人の断絶は明治維新以降、2度あるという。1度目は明治維新そのもの、2度目は大東亜戦争だ。もし、紛争死史観の人々であれば、アメリカ軍のしたこと(=東京大空襲ほか空襲、広島、長崎の原爆など無辜の民を虐殺したこと、自分たちの勝手な理屈で東京裁判で復讐的な刑罰を課したこと)は、決して忘れないし、決して忘れないことを基点として、断絶なり、なんなりを分析していくことだろう。そもそも精神の断絶は起きないのかもしれない(ドイツは?ドイツでも断絶が起きている。戦中戦後で。それはユダヤ人の扱いに関することを基点としている。それが戦後著しく情報を歪められた結果である可能性について当のユダヤ人たちもさまざまに論考を重ねている。ドイツ人自身の論考もある)。
だが、本書で取り上げている評論家や作家たち、誰一人として、紛争死史観の観点から、論を組み立てている人はいない。それは三島由紀夫であっても、だ。敵があって我らがいる、ではない。たとえ米国やGHQに命ばかりか、それまでの文化を破壊されたとしても、論考の対象は「敵」ではない。あくまで同胞の心であり、態度であり、自分の内面だ。もちろん、本書の著者 浜崎洋介も。
国破れて山河あり。
まさに、国破れても、私たちは日本人としての(心の)自然を取り戻すことができるし、自然を取り戻せさえすれば、断絶なんて、瞬時に乗り越えられる、というのが、本書の趣旨なのである(究極のネタバレ、ごめん🙇♀️)。
元々はテンミニッツTV
本書は元々はテンミニッツTVという1講義10分間で視聴できるインターネット教養番組の講義録としてまとめられたものだった。そもそも何の準備もなくお気軽に学べるものなのだ。だから、もう、何度も言うようだが、ご興味のある方は、本書を直接読む方が手っ取り早いし、味わいも深い。
ただ、入り口はお気軽だし、論の組み立てや言葉遣いも平易。が、内容は濃密で緻密だ。グイグイと文芸ワールドへ、断絶の現場へと引っ張られていく。浜崎の力量は本当に素晴らしい。…というか…これは私の邪推だけど、こういう力量、つまり、わかりやすく噛み砕きつつ、濃い内容をスピーディに、と言う授業でないと、今時の学生さんたちは、ついてこない、ついてこれないのではないか、と、勘繰ってしまう…。どうなんだろ?
そして戦前戦後の断絶を乗り越えるとともに、左派と右派の断絶も乗り越える話を提供する、と言う。なかなかに野心的だ。
本書の目次
第1講
「断絶」を乗り越えるという主題
第2講
なぜ「批評」は昭和初期に登場するのか
第3講
デビュー論文「様々なる意匠」小林秀雄の試みと、「直観」の真意
第4講
吉本隆明の思想を凝縮した敗戦時20歳の回想「戦争と世代」
第5講
なぜ吉本隆明は60年安保の時に進歩的知識人を批判したのか
第6講
江藤淳と柄谷行人、1960年代に彼らが感じた焦燥感とは
第7講
小林秀雄”最後の弟子”福田恒存の言葉と日本人の「自然」
第8講
70年代以降の大衆化、根こそぎ変わった日本人の「自然観」
第9講
「大衆の反逆」でオルテガが指摘した「大衆化」の問題とは
第10講
「一匹と九十九匹と」…政治と文学の関係を問うた福田恒存
第11講
福田恒存の思想の根幹にあるロレンスの「黙示録論」とは
第12講
自由とは奴隷の思想ではないか…福田恒存の人間論とは
第13講
宮本武蔵「我事に於いて後悔せず」の真意と小林秀雄の自然観
第14講
福田恒存「快楽と幸福」から読み解く日本人の流儀
太字は引用者
本書で取り上げている評論家、作家たち
表題に出てくる、小林秀雄、吉本隆明、福田恆存ほか、江藤淳、柄谷行人、そして、オルテガ。浜崎が近代日本の大衆論を説く際には、必ずオルテガが出てくる(識者の方にとっては当たり前なのかもしれないけれど、私はモノを知らないので…💦)。
今後の予定
今のところ、下記のように記事を書き進める予定である。
【読書】日本人の「断絶」を乗り越える その0
【読書】日本人の「断絶」を乗り越える その3 第6講、第7講
【読書】日本人の「断絶」を乗り越える その4 第8講、第9講、第10講
【読書】日本人の「断絶」を乗り越える その5 第11講、第12講
【読書】日本人の「断絶」を乗り越える その6 第13講、第14講
引用内、引用外に関わらず、太字、並字の区別は、本稿作者がつけました。
文中数字については、引用内、引用外に関わらず、漢数字、ローマ数字は、その時々で読みやすいと判断した方を本稿作者の判断で使用しています。
また、文言の間違い、表現のわかりやすさなど、随時訂正しています。ご了承ください。
おまけ:さらに見識を広げたり知識を深めたい方のために
ちょっと検索して気持ちに引っかかったものを載せてみます。
私もまだ読んでいない本もありますが、もしお役に立つようであればご参考までに。
本書と連動している動画
下記は同じく戦前戦中戦後の日本人の断絶を扱った動画。
浜崎洋介の著作
国土学
ホロコースト関連
以下の3人の著作については、今後挙げていきます。
小林秀雄
吉本隆明
福田恆存
いいなと思ったら応援しよう!
ありがとうございます❣️よりよい記事を書くために使わせていただきます💫
Thank you for your support! I’ll put this toward creating higher-quality articles.