11/17 HPVワクチン薬害訴訟(東京) 被告側の証言との矛盾
2025年11月17日、HPVワクチン薬害訴訟 原告本人尋問を傍聴しました。東京地裁では最後の原告本人尋問です。原告3番さん、15番さん、59番さんが法廷に臨み、自身の被害やこの裁判にかける思いを訴えました。今回も詳細なレポートは書けませんが、メモをもとに感想を書きたいと思っています。この日は10時から17時過ぎまで、長時間にわたって原告本人尋問が行われました。1回では書き切れないので、何回かに分けて報告します。この記事は3本目です。
認知行動療法に関する証言への疑問
前回からの続きです。
1本目
2本目
被告側は、原告117人の症状はすべて「心因性」であり、適切な治療をすれば治ると主張しています。その治療方法としてあげているのが、認知行動療法です。5月12日に被告側が証人として申請した住谷昌彦医師の主尋問も傍聴しましたが、認知行動療法の専門家として立派な経歴をお持ちであることが被告側弁護士により確認されていました(下記参照)。
住谷医師は、認知行動療法により、痛みがあるからできなかったことが少しずつできるようになっていき、自信を取り戻すことで痛みも軽減されていく、というような説明をしていました。
この治療によって、HPVワクチン接種後の健康被害で受診して回復した人もいて、例えば思春期に受診して回復後、留学したり、希望の企業に就職できたケースもあるとのことでした。
一方で、よくならなかったケースもあるという例として、下記のような説明をしていました。
・痛みがあるからやりたくない、1歩を踏み出したくないという人はよくならない。その背景に、保護者の過保護・過干渉が影響しているケースが多い。
・痛みがあるから外出させない、成績が下がっても痛みがあるから仕方がないなどと親が思っていると、子どもはその説明に自分の行動を当てはめようと過剰適応するようになる。
今回の本人尋問を傍聴して、彼女たちはこの説明には当てはまっていないと感じました。
例えば、59番さんは下記のように語っていました。
以下、傍聴メモより要点のみ。
高校では進学クラスにいたので、
周りは札幌方面に出るのが当たり前の流れだった。
大学進学も考えたが、通院等も多く諦めた。
2018年から、札幌の体操教室のスタッフとして勤務。
PCの前に座って事務仕事をするより、
体を動かすことが好きだから少しでも体を動かしたい。
心配もあったが、やってみようとチャレンジした。
4月から札幌でひとり暮らしを始めた。
自分が動く仕事ではなく、動いているお客さんの筋肉などを見て指導する教室だったのでそれほど負担はないと思った。
受付や電話対応などもしていた。
7月に体調が悪くなり入院。
頭痛、全身痛、倦怠感、手足のふるえ、脱力など。
退院後は実家に戻ったが、回復しなかったので9月末に退職。
続けたかったが体調がもう限界だったので断念。
とても悔しかった。
自分では頑張りたいという思いがあったが、
実家の方が体への負担が減らせると思った。
ひとり暮らしの期間が短く、やめることなど悔しい気持ち。
今は実家で生活しながら仕事もしている。
働くことをやめると社会と離れてしまうことが不安。
短いスパンで職場を変えたのは、
採用する人は理解してくれても、
現場の人は自分が急に休んだり、物覚えがわるいことで
迷惑をかけて居づらくなったりしたから。
今は子ども向け写真スタジオで勤務。
衣装を選んだり、撮影した写真のセレクト、時には撮影も。
頭痛、全身痛、倦怠感などは今もあり、症状には波がある。
調子が悪くなると、光や音、臭いに過敏になるが、
そのようなときは、裏での作業などのできる仕事をふってくれる。
混雑状況によっては、休んでいいよと言ってもらえたりもする。
59番さんは様々な症状を抱えながら、高校卒業後に実家から離れてひとり暮らしをしたのです。
59番さんが経験したこと、今経験していることは、「痛みがあるからやりたくない、1歩を踏み出したくない」に当てはまるでしょうか。「(保護者が)痛みがあるから外出させない」に当てはまるでしょうか。
被告側弁護士は、「陳述書によると写真スタジオ以外の仕事もしていますね?」と質問しました。
被告側弁護士は、「時々居酒屋でバイトをすることもある」ことを確認していました。59番さんの体調を理解してくれる人からの依頼で、写真スタジオの閑散期で居酒屋の人手が足りないときなどに、自分の体調がよければヘルプ的に入ることがあるそうです。
他にも、病院のカルテから「いろいろな仕事をしていますね?」と被告側弁護士は確認しました。コンビニや飲食店、老人ホームなどで働いた経験がありますが、やってみたら思った以上に体への負担が大きかったり、採用する人と現場の人の考えが違うなどの理由で、続けることが出来なかったのです。
現在働いている写真スタジオはシフト制なので、月に半分ぐらいのときもあれば週5日入ることもあり、1日3~6時間の日もあれば、休憩を挟んで7時間働く日もあるとのこと。体調への理解もある職場のようで、体調に合わせてできる仕事をしていることが伝わってきました。
被告側弁護士は、普通に体を動かせることを確認したかったのかなと思いますが、この事実によって私は住谷医師の証言との矛盾を感じました。
59番さんは、できないだろうと最初から諦めるのではなく、まずはやってみようと様々な仕事にチャレンジしています。やってみたけれど、思った以上に体への負担が大きかったり、現場で体調への理解がなかったり、急に休んだりすることで大きく迷惑をかけてしまう職種だったりで、続けることができなかったのです。
59番さんは、その職場でできることをやろうと努力してきました。「痛みがあるからやりたくない、1歩を踏み出したくない」などと思っていないことは明らかです。では、なぜ治らないのでしょうか。
目標をクリアしているのによくならない
59番さんは、もし仕事をしなくなったら「社会と離れるのが不安」だと言っていました。
その思いは、15番さんも同じです。
15番さんは、就労継続支援B型の事業所で働いています。
高校卒業後、専門学校に行きたいと思ったけれど、取り寄せたパンフレットに「心身ともに健康な人」という条件が書かれていて、週5日、朝から夕方までカリキュラムをこなすのは難しいと判断して諦めたそうです。
在宅ワークも勧められましたが、人と接する仕事がしたいということで、就労継続支援B型の事業所で仕事をすることに。運動が好きで健康だったのに、それしか選択肢がないのが辛い。人と比べて選択肢が狭すぎるのが辛いと語っていました。
私は「就労継続支援B型」の事業所について知らなかったので、帰宅してから調べました。「就労継続支援B型」は、障害や難病のある人が利用できる障害福祉サービスの1つです。障害や体力などの理由から、一般企業などで雇用契約を結んで働くことが難しい人に対して、就労の機会や生産活動の場を提供しています。けれども、B型事業所に通って、生産活動に対する対価としてもらえる工賃は、事業所によって異なりますが、時給換算で平均243円程度だと書かれていました。15番さんは、週1日3時間、自分にできることを頑張っています。
同じ時期に入った人は、B型事業所での経験を経て、一般企業などで働くことが困難であるものの、一定の支援があれば雇用契約に基づいて働ける人を対象にした「就労継続支援A型」に移る人がほとんどとのことです。けれども15番さんは、作業時間を増やすと翌日から数日寝込んでしまうので増やせません。
収入のことだけを考えたら、在宅ワークの方がよくなるかもしれません。けれども、「人と接する仕事がしたい」という思いを持って、15番さんは短時間でも外に出ていっています。15番さんは在宅ワークではなく、痛みをこらえて外に出ることを選び、週1日、3時間という目標を頑張ってクリアしているのです。住谷医師の治療方法では、小さな目標をクリアできたら痛みが軽減されて、少しずつ行動範囲が広がるはずです。では、なぜ15番さんはよくならないのでしょうか。
これに関する被告側弁護士の指摘があったので、それは次の記事で書きます。
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