11/17 HPVワクチン薬害訴訟(東京) カルテから露呈した医師の脳内変換術
2025年11月17日、HPVワクチン薬害訴訟 原告本人尋問を傍聴しました。東京地裁では最後の原告本人尋問です。原告3番さん、15番さん、59番さんが法廷に臨み、自身の被害やこの裁判にかける思いを訴えました。今回も詳細なレポートは書けませんが、メモをもとに感想を書きたいと思っています。この日は10時から17時過ぎまで、長時間にわたって原告本人尋問が行われました。1回では書き切れないので、何回かに分けて報告します。この記事は2本目です。
被告側が証拠として入手したカルテ
前回からの続きです(下記参照)。
きちんとメモが取れなかったところもあるので、間違いがあるかもしれません。もし、関係者の方がお読みになって間違いに気づきましたら、コメントにてご指摘ください。
反対尋問では、被告側が入手したカルテの記載をもとにあれこれ質問されました。HPVワクチン接種後に受診した医療機関だけでなく、接種前に受診した医療機関のものもあり、心療内科のカルテもありました。
心療内科では、人に聞かれたくないことも話していると思います。そしてその内容が、公になるなんて誰も思わずに話しているでしょう。被告側はそのようなカルテを入手して、「接種前から心の問題を抱えていた」と主張するためにあれこれ質問してきます。
反対尋問を聞いていると、これは何の裁判なのかなという疑問がわいてきます。製薬会社なら、自社の臨床試験でのデータや販売後の調査から安全性を示すと思っていました。きちんとした根拠やデータがあるからこそ、自信を持って販売できるのではないでしょうか。もしそういったものがなかったのであれば、改めて試験や調査を行って確かめるのが製薬会社の責任だと思います。
けれども被告側はそのようなデータは出さずに、カルテに書かれたことから心因性につながる発言を誘導するために、ネチネチと質問を続けていたように見えました。
先日の記事にも書きましたが、Francfrancは2025年3月から6月まで販売していた「フレ スマートハンディファン(2025年製)」に関して、商品不良(充電ICの不具合による動作不良や発熱など)の発生率が高い状況にあることから、対象商品を自主回収すると発表しました。6月に熱で内部部品が溶けた事例が確認され、10月17日に「明確に安全とは判断できない」という調査結果が出たとのことです(下記参照)。
ハンディファンでもこのような対応をしているのに、人の命に関わる医薬品を扱う被告2社は、このワクチンの販売を中止しませんでした。
ワクチン接種後に起きた症状であっても、自社製品とは関係なく、原告側に問題があるという主張は、とても不誠実だと感じます。
カルテの開示について15番さんに、「心療内科にカルテを開示しないようにお願いする手紙を出しましたね?」と被告側弁護士が質問しました。15番さんが弁護士と相談して、そのようにしたことは事実です。被告側は、心因性の証拠を見せたくないからそうしたのだと言っているような質問でした。けれども15番さんがそうした理由は、自分はそこに書かれた内容について知られてもかまわないけれど、家族はそうではないからだと。カルテを公にすることで自分に傷ついてほしくないと、家族が話し合って決めたからだと言っていました。結果として、一部を黒塗りにしてカルテは開示されています。
実際にそこに書かれていたことは、プライバシーの奥深い部分に関わることであり、人に知られたくないと思うのは当然だと思いました。15番さんは堂々と受け答えをしていましたが、家族が心配するのは当然です。製薬会社は、こんなことをしなければワクチンの安全性を証明できないのでしょうか。
15番さんがこのようなことにも耐えて、法廷で証言しているのは、国や製薬会社への強い思いがあるからです。それについては、後日書こうと思っています。
そもそも、カルテというのは、担当した医師の考えや治療方針といったフィルターを通して書かれたものです。ですから、カルテに書かれていることは、必ずしも「事実」ではないと思います。患者が話した内容から、医師が推測したことも含まれているものです。患者が話した内容さえ、うまく言葉にできなかったりして、事実と少し違う言い方をした可能性もあるでしょう。
私はこれまで、自分の診察も含めてカルテに書かれた内容を確認したことはありませんでした。今回の傍聴で、医師による脳内変換がどれほどのものかがわかりました。
恐るべし医師の脳内変換術
特に3番さんの反対尋問で、カルテに書かれたことは事実と異なる点が多いと感じました。その例をいくつか紹介します。
3番さんは2012年6月から、不登校専門外来に通っていました。接種後の症状で学校に通えなくなってしまったのですが、まだワクチンとの関係がわからなかったので、何か原因がわかるかもしれないと思って通ったのだと思います。
3番さんは高1(2012年4月)のときにサーバリックス3回目を接種してから様々な症状に悩まされるようになりましたが、ワクチンとの関連に気づいたのは2013年12月です。家族がHPVワクチン接種後の症状について書かれた新聞記事を見て、3番さんの症状とよく似ていると気づいたのがきっかけでした。
不登校専門外来の医師は、学校に通えないのは「過去の出来事」に原因があると考え、過去の出来事をあれこれ探った記録が残されていました。
その中で私が気になったのは、被告側弁護士が「小学生の頃、奴隷のように扱われた」と書かれていたことについて質問したことです。
これについて3番さんは、「私が思っていることとは違います」と答えています。仲のいい子たちと一緒に下校するときに、じゃんけんで負けた人がみんなのランドセルを持つという遊びをしていたら、それを見た人が奴隷のように思ったのではないか、というような話だったようです。自分としては酷い扱いをされたとは思っていないし、仲良く遊んでいたと語っていました。
診察では過去の出来事をものすごく深掘りしたので、無理矢理過去を思い出す中で、カルテにそうまとめられたのではないかということです。
この遊びは「ランドセルじゃんけん」などと呼ばれ、いじめに見えるとか、いじめにつながるからやめようなど、いろいろな意見があると思います。私も小学生の頃にやったことがありますが、仲のよい友達と楽しくやりながら帰った記憶として残っています。本人がどう思ってやっていたかに重点を置かずに、「奴隷のような扱い」と書き残すのは適切だったのでしょうか。
3番さんが登校できなかったのは、体調不良が一番の原因です。その体調不良の原因がわからないから、過去の出来事に原因があるという「仮説」のもとで診察が行われていたようです。
不登校外来の医師は、登校できないのは「過去に原因がある」というゴールを決めて診察をし、そこだけに向けた診察を進めていたように思えます。そこにつながるような出来事を掘り起こしていったので、少しでもつながりそうな出来事が見つかったら、「これだ!」という確信めいた気持ちになってしまったのではないでしょうか。「ランドセルじゃんけん」→「奴隷のような扱い」→「いじめ体験」のように脳内変換された結果が、カルテに書き残されていたのではないかと思いました。
中学受験をして中高一貫校に通っていた3番さんは、高校生になるときに仲が良かったグループと別のクラスになってしまいました。カルテには「いじめっ子のいるクラスになってしまった」と書かれていたようですが、「友人の悪口を言っていた人がいた」という程度で、これもニュアンスがずいぶん違うと3番さんは語っています。
3番さんが学校に行けなくなったのはいじめっ子がいたからではなく、4月にワクチンを接種して、その後体調が悪くなって1ヶ月通えなくなったことが大きな理由です。新しいクラスになって1ヶ月もすれば、みんな打ち解けて新しい友達もできて、人間関係が出来上がっているでしょう。1ヶ月休んでまだ体調も悪い中で頑張って登校して、記憶障害の影響で席の前後のクラスメイトと話をしても次の日に名前を忘れてしまう状態では、楽しい学校生活が送れるでしょうか。
医師によるフィルターがどの程度かは、個々によって違うと思いますが、証拠として出されたカルテからは脳内変換の痕跡が多々見られました。
3番さんは個人の先生にダンスを習っていたこともあったそうですが、それはラジオ体操よりちょっと動きが多い程度のもので、クラスが上がった際にはもう少し時間を長くしたレッスンを受けた程度だと3番さんは話しています。それがカルテには、「激しいダンス」と書かれていました。
一番驚いたのは、被告側が職業について「アクション女優をしていましたね?」と質問したときです。カルテには「アクション女優(本人は公にしたくないよう)」と書かれていたとのこと。
これには3番さんも、「は?」という感じに見えました。もともと演劇に興味があったので舞台に立ったことはありますが、セリフもないような役だったりで、自分としては「アクション女優」だと認識したことはないそうです。なぜそう書かれたのか3番さんもよくわからないようでしたが、「アクションなどで運動量も多くなったのに体重が増えた」と言ったことなどから、「アクション女優」と書かれたのではないかと推測していました。もしそうだとしたら、脳内変換が酷すぎると思います。
役の動きとして、何らかのアクションがあることもあるでしょうが、それだけで「アクション女優」と思うでしょうか。
JAE(旧JAC)などのようなアクション俳優を多く排出している事務所に所属しているならわかりますが、どこから「アクション女優」という言葉が出てきたのか謎です。それを法廷の場で証拠として出してきた被告側弁護士も、なぜその記載が変だと思わなかったのかなと思いました。
「本人は公にしたくない」という部分についても、「舞台に出ている」というと「有名人と一緒に仕事をしたことはあるか?」などと、根掘り葉掘り聞かれることがあるので、あまり言いたくないという意味あいだったそうです。
このような脳内変換が多々行われているカルテには、どれくらいの証拠力があるのでしょうか。
まだまだ書きたいことはあるので、次の記事に続きます。
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