おもちと紅葉 (ショートショート)
これ↓シリーズです。ちょっと変わった猫と女の子の話 (読まなくても大丈夫です)
2作目↓
おもちと紅葉
「ねえ、山へ行かない?」
ママにそう言われて、私はえ? と思った。
「七幡山ってところは紅葉で有名らしいよ」
「へえ、そうなんだ」
あまり気乗りしないまま返事をする。
「それと蕎麦がおいしいんだって」
「え、いいじゃん」
つい嬉しそうな声を出してしまった。ママはニヤリ、とする。
「じゃあ、おもちも連れてっていいかな」
私はふと思いついて、聞いてみた。
「おもち? 猫を連れて行っても大丈夫かしら」
本人?を見ると、ニャーンと返事をする。
「調べてみて平気そうならいいんじゃない」 スマホで検索して、問題ないみたいと言うと
「じゃあみんなで行きましょう」
とママは嬉しそうだった。
次の週末、私たちは早起きをして山登りへ行く。パパは仕事が忙しいみたいで出勤だ。でもおもちが一緒だからそんなに寂しくなかった。
麓まで電車に乗って駅を降りる。空を見上げると、空気が澄んでいた。
「やっぱり山は空気がおいしいね」
と言いながら登る。背中のリュック型のキャリーケースにいるおもちもニャア、と言った。
山道の両側にもちらほら紅葉があって、見物しながら登っていく。途中に蕎麦のお店もあった。でもお昼前だし、頂上で食べる事にしてさらに進む。
風が気持ちいい。ずっと坂なので、さすがに汗をかいてくる。最近運動不足のせいか疲れてきたので
「ちょっと休もうか」
と休憩をはさみながら登っていった。
かなり歩いた頃、頂上が見えてくる。てっぺんに『七幡山山頂』と書いた木の板が立っていた。
ママと交代で写真を撮っていると、ママより20歳くらい年上そうな女の人が
「撮りましょうか」
と言ってくれる。お願いして写してもらった。
画面を見ると、楽しそうなママと私が納まっている。
「記念になったね」と笑いあった。
お店に入る前にベンチで一休みする。トン、とキャリーバッグを置くと、フタがはずみで外れたのか、ぴょん、とおもちが出てきた。
あっ! と思ったが、彼はバッグの傍で前足と後ろ足を交互に伸ばした後、おとなしく座って紅葉を見ている。
「きれいだね」
私たちはおもちと一緒にその景色を眺めた。赤く染まった木々が重なって、燃えているようだ。ひらひらと葉っぱも落ちてくる。
「あ、」
見上げるとおもちもそちらを向き、彼の背中にもチラチラと赤い葉が散った。
それを見ていると、葉がくるくると円を描きながらだんだん大きくなっていく。
気がつくと、私はいつの間にか空を舞っていた。
「わあ…!」
驚いて、手足をバタバタさせる。
下を見ると、木々や家が模型みたいに小さかった。美しい風景だったけど、足がすくんでしまう。
「落っこちちゃう…」
思わず震え出すと
「まゆちゃん、落ち着いて」
「えっ」
見ると、おもちも空を飛んでいた。
「今しゃべったの⁈」
「ボクは話せるよ」
「すごい…」
「気づいてなかったんだ」
そう言って笑うと、スイーッと空を泳ぐ。
「待って! おもち、」
「まゆちゃん、大丈夫だよ。君も泳げるから」
励まされてこわごわ静かにすると、私の体も風に乗ってスーイ、と飛んでいく。
「え、何これ?」
「だから平気だって言ったでしょ」
おもちは私と並んで空を進む。
「どこに行ってるの? 私たち」
「どこへだって行けるよ」
そう言うと、おもちと私は空高く、どこまでもどこまでも飛んでいった。
了(1330字)
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他の締切が近々で、9月末までに投稿できなかった_(:3 」∠)_
10月の締切は早めに出します。
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