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おもちの魔法 ショートショート

 うちの猫のおもちはちょっと変わっている(ちなみに丸いのでそういう名前)。
 彼は、ふだんは白地に小さなグレーのぶちが背中にあって、しっぽは縞々しましまだ。

 でも、外へ出ると毛皮の色が変わる。晴れていれば空の青、曇っていれば灰色、夕方になると夕焼けのオレンジ色になる。
 夕暮れ時はたいてい私の部屋に来て、窓辺の戸だなの上で、道行く人やハトなんかをじっと見ていた。

 おもちはオレンジ色からしだいに赤、赤紫、濃い紺色になり、最後は真っ黒に変化する。星みたいに、チカチカと光る点々も現れた。
 そうすると、あーんと大きいあくびをする。グーッと伸びをして、ストンと床へ降りた。
 そして
「にゃーん」と鳴きながら足元にすり寄ってくる。

 私はハイハイと言って、リビングにあるおもちのお皿にカリカリを出してあげた。彼は近寄ってくると、フンフンと匂いを嗅ぐ。そして音を立てておいしそうに食べ始めた。

 背中には、相変わらずキラキラの点々がある。毛づくろいで飲み込むんじゃないかとちょっと心配だ。でも、今のところ大丈夫そうなので、あまり気にしていなかった。

 ある日、いつもの夕暮れ時、おもちは窓辺で毛づくろいをしている。前足で顔を洗い、背中や足の手入れをしていた。その時鼻に毛でも入ったのか、クシャンとくしゃみをする。
 すると、口からぴょんと何かが飛び出してきた。それは小さな丸いもので、床に転がらず、宙にフワフワと浮いている。

「え、何…?」
 私は驚いて固まってしまう。それは、おもちの毛が丸まったようなものだった。オレンジ色の光を放っている。

 状況がよく飲み込めなくて、ただじっとおもちと、それを見つめていた。
 やがて、ゆっくり転がるように動き出す。部屋の中をグルグルーッと2、3回回った後、ポーンと勢いよく窓から飛び出していく。

「あっ…!」
 私は駆け寄って外を見た。それは、ぐんぐん速さを増していき、地平線のお日さまの方へ飛んで行っている。
 やがて、ピカーッ! とまぶしい光を放ったかと思うと、太陽と同化して見えなくなった。

「…え、消えちゃった…?」
 私は呆然と、その行方をいつまでも見ていた。でも、光がまぶしくて思わず目をつぶる。しばらくして目を開けて辺りを見回したけど、飛び出していった何かはどこにもなかった。
 大きな息を一つ吐いて、おもちの方を向いた。

「今のって…いったい何?」
 でも、彼も目をまん丸に大きく見開いて、びっくりした顔でその方向を見つめている。
 それをながめていたら、だんだんおかしくなってきて、しばらくの間笑い転げていた。

              了(1000字)


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