YouTuberの"正義"が、現代のリアルを映す『正義の申し子』
ちょっと一息、本の時間。
読書感想文です。
今回は、染井為人氏の『正義の申し子』です。
この本の舞台は、私たちが毎日当たり前のように見ている「YouTube」(Youtuber)が出てくる、非常に読みやすい物語になっています。
画面の中で自信満々に振る舞う、無敵のスーパーヒーロー。
でも、一歩カメラの外に出れば、そこには現代人の誰もが抱えているような、行き場のない「闇」の中にいるような感覚。
ネットニュースの向こう側の話だと思っていたことが、実は自分のすぐ隣で起きているかもしれない。
そんな「生々しいリアル」に引き込まれ、気づけば驚くほどのテンポで最後まで読み終えていました。
YouTubeやSNSの空気感に、どこか息苦しさを感じているなら、この本は間違いなくおすすめの物語です。
あらすじ
現実では引きこもりながら正義のユーチューバー“ジョン”として活躍する青年・純。
悪徳請求業者に電話をかけ、相手をおちょくったところ大好評。
キャラの濃い関西弁男を懲らしめた動画は爆発的に再生数を伸ばす。
味をしめたジョンは、男とリアルに会って対決し、それも配信しようと画策する。
一方、悪徳請求業者の鉄平も、ジョンを捕まえようと動き始める。
2人が顔を合わせた時、半グレや女子高生をも巻き込む大事件に発展する!
感想
読書が苦手な私でも、本当にスラスラと読めた物語でした。
現代では馴染みのあるユーチューブ(ユーチューバー)の要素があり、悪徳請求業者の設定もわかりやすく、ユーチューバーの企画としても、直接対決というあり得そうな展開のリアルさも楽しめました。
ただ、この物語は、ユーチューバーと悪徳業者が対決して、果たしてどうなるのか?!といった単調な具合にならないのもまたいいところです。
私自身もその程度の認識で読んでいましたが、物語が進んでいくごとに展開し、最終的に納得のいく感覚が得られる終結だったなと思いました。
ユーチューバーという仮面
作中に出るユーチューバーは、いわばコミュ障と言われる部類に入るキャラクターでしょう。
まぁなにをもってして、どんな条件が揃えばコミュ障になるかは、かなり広義なものになるかと思いますが、少なくとも私としては、この物語に出てくるユーチューバーにはその印象を当てはめて読んでいました。
ユーチューバーではなくなった瞬間、魂さえも入れ替わってしまったかのような人格の変わりようには、リアルに想像してしまって辟易するような・・・。加えて、ユーチューバーという仮面がはがれてしまえば、まぁなんと貧弱な・・・。
人というものは、仮面をつけたり、何かに成りきる、演じることで普段の様子とはまったくの別人に誰もがなり得るものですね。
その良し悪しは、その人次第。
つまり、結局は"人"だなとも思いました。
話はもっと広がる
これは、告発系ユーチューバー vs 悪徳請求業者という単純な話ではなく、もっとスリルもあり、バラバラに散らばっていた要素が集まっていくようなわかりやすいうえにリズムも掴みやすい展開が面白いです。
ハチャメチャなことも、どうしようもないようなクズっぷりもあり、サスペンスでありながら、エンターテインメントも欠けることがないですね。
最終的にどうなるかは、読んでみてのお楽しみなんですが、非常に納得感と清々しさに近い感情になりました。
もちろん、話の中で出てくる悪事は、今生きるリアルの中では微塵も許容できるはずもないものばかりですが、なかなか憎みづらい面もあり、読み応えがあるといえるでしょう。
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