『レインツリーの国』読書感想
ちょっと一息、本の時間。
読書感想です。
今回読んだのは、有川浩氏の『レインツリーの国』(電子書籍)です。
※少々ネタバレあります。
あらすじ
「忘れられない一冊」をきっかけに始まったメールのやりとり。
やがて主人公は相手に会いたいという気持ちを強く抱くようになる。
しかし、彼女には簡単には会えない事情があった――。
会社員の信行は、ある本についての感想が載ったサイトを見つけ、運営者のひとみに連絡を取る。
メールを重ねるうちに、信行の心は「会いたい」という想いで満たされていき、最終的に二人は実際に顔を合わせることになる。
ただ、ひとみには深い理由が隠されていた。
感想
読み終えても、この物語は「まだ始まりにすぎない」と感じました。
これから先、二人の関係が幸せな方向に進むのか、そうでないのかは分かりません。
ただ、不器用な部分を含めて互いに向き合い、納得しながら歩んでいくのだろうと思いたいです。
読み終えたとき、思わず手を"ひらひらと揺らして"、気持ちを表現したくなるような、そんな余韻の残る作品でした。
全体のボリュームが多くなく、読み進めやすい作品だと思いました。
少し物語の核心に触れますが、ひとみが事故をきっかけに聴覚に障がいを持っていることを前提に書きます。
異なる立場の人間同士が、それぞれの想いをぶつけ合いながらも次第に歩み寄っていく過程が描かれており、読んでいて自分の心情を代弁してもらっているような共感を覚えました。
伝えたいのに言葉にできない感情や、うまく表現できない思いを整理してくれているように感じ、特に自分の感情をまとめて言葉にするのが不得手な私には響きました。
また、物語を読みながら、過去の仕事の経験を思い出しました。
以前勤めていた職場で、聴覚障がいのある方々が主催する大会に関わったことがあります。
今回の物語に出てくる難聴とは少し異なりますが、音が聞こえない方々が一堂に会する催しでした。
そこには自治体や市議会議員、協会やボランティア団体など多くの人が関わり、私は会場の様子を撮影し、別室に中継するという役割を担いました。
会場に入った瞬間から手話が飛び交っていて、普段自分が当たり前だと思っている“声による会話”のない世界が広がっていました。
これまでの自分の生活圏とは全く異なる光景に驚かされると同時に、その場のやりとりを理解できないもどかしさも感じたのを覚えています。
けれど、撮影をしながら参加者の様子を見ていると、そこには「特別な場」というよりも、笑ったり真剣になったり、ときに口論したりするごく自然な日常がありました。
自分とは違う世界に見えても、根本的にはよくある人間の営みなんだと思わされました。
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