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AI時代の創作メモ|Web小説のタイトルはなぜ長くなり続けるのか。ガラケーの3D機能から考える「性能差」の罠(#創作論 #Web小説 #note #吉本ばなな #書籍化 #生成AI #画像生成AI)

こんにちは。こんばんは。
普段はラノベを書いている「うら表紙」と申します。

よくバカにされるWeb小説のタイトル。
びっくりするぐらい長くなっていますよね。

「あらすじを全部タイトルで説明している」
なんて言われることもありますが、
書いている側からすると、これには切実な理由があるのです。
むしろ、そこには今のWeb小説市場が抱える厳しい事情が表れています。

今のWeb小説界隈は、需要に対して供給が完全に上回っています。
ひょっとしたら、これまでに異世界へ転生した人の総数は、
現実の日本の人口を超えているかもしれない……。
それくらいジャンルとして成熟し、作品数が膨大になった世界です。

こうした飽和市場で起きる現象を考えると、分かりやすい例があります。

それがスマホです。
今や持っていない人の方が珍しく、
生活インフラと言ってもいい存在になりました。

こういう「誰もが知っていて、誰もが持っている」市場では、
もはやスマホそのものを宣伝しても意味がありません。

そこで各社がアピールするのは「性能差」です。

「カメラが高画質です」
「処理速度が速いです」
「価格が安いです」

大きな枠組みは同じだからこそ、
わずかな違いを必死に伝えなければ手に取ってもらえない。

私はWeb小説の長いタイトルも、
これと非常によく似た構造だと思っています。

「この作品は他の転生ものとここが違います」
「この作品にはこんな特徴があります」

そうした性能差を、
読まれる前の段階でできるだけ伝えようとした結果が、
長文化したタイトルの正体です。

ここで罠なのが、
性能差をアピールすること自体が、
必ずしも良い結果につながるとは限らないということです。

かつて、飽和した市場で差別化を意識するあまり、
ユーザーとの盛大なミスマッチを起こしたものがありました。

それが「ガラケー」です。

昔、
ガラケー全盛期に
「メガネをかけなくても3Dに見える液晶画面」
を搭載した機種がありました。

当時としてはかなり先進的な機能でしたが、
実際には大きな制約がありました。
3Dで見るためには、
画面を真正面からほとんど動かさずに見続けなければならなかったのです。

しかし携帯電話というのは、
歩きながら見たり、
片手で操作したり、
少し角度を変えたりするのが当たり前の道具です。

つまり「携帯する」という本来の用途と、
3D機能がうまく噛み合っていなかった。

ユーザーが本当に求めていたのは、
未来的な3D表示よりも、

「どこでも安定して通話できる」
「電池が長持ちする」
「落としても壊れにくい」
「水に濡れても大丈夫」

といった、日常を支える基本性能の向上だったのです。

そして、
この話はweb小説にも通じる気がしています。

どんなジャンルにも、
読者が期待している基本機能があります。

追放ものなら、痛快な逆転や断罪。
チートものなら、圧倒的な無双感。
恋愛ものなら、安心して読める溺愛や幸福感。

もちろん作品ごとのアレンジはありますが、
まず読者はそのジャンルならではの魅力を求めて作品を手に取ります。

つまり、
基本機能が満たされて初めて、
性能差が魅力として機能する
わけです。

ところが差別化だけを追い求めると、

「チート能力を持っているのにずっと活躍しない」
「追放されたのに延々と悩み続ける」

といった、
本来そのジャンルに期待されている体験を外してしまうことがあります。

それは新しい挑戦なのかもしれません。

しかし読者から見れば、
「3D機能は付いているけれど使えない携帯電話」
と同じです。

だからこそ、
飽和したジャンルで目立つために必要なのは、
単純な奇抜さではありません。

大切なのは、
「読者が絶対に外してほしくない基本機能」

「他作品との差別化になる性能差」
この二つの境界線を見極めることです。

私は、最初、
書籍化となった自分の作品のタイトルが長くなった時、
それを前向きに受け入れることができませんでした。

しかし、最近はそのことがむしろプラスになっていると感じています。
飽和した市場の中で「この作品の性能差」を伝えようとする、
ある種の必然でもあるからです。

結局のところ、
読者さんがタイトルで探しているのは
「見たことのない何か」だけではなく、
「自分が好きなものがちゃんと入っている安心感」
でもあるのでしょう。

だから長いタイトルは、
「この作品は、あなたが期待している基本機能をちゃんと搭載しています」
という保証書
であると最近は思っています。


あとがき:
性能差で言えば、うちの姫猫様たちのご飯も最近は「性能差」で勝負するメーカーが増えてきました。一昔前は「食い付き」が圧倒的な売り文句だった気がするのですが、今ではどのフードも普通によく食べてくれるのが当たり前になっています。だからなのでしょうね。最近のパッケージには、原材料や栄養成分、機能性の説明がびっしりと書かれています。もちろん私は穴が開くほどに読み込みますよ(笑)自分が食べるウインナーの原材料や添加物はほとんど確認しないのに、姫猫様たちのフードだけは隅々までチェックしてしまう立派な下僕です。そう考えると「基本機能が満たされた市場では性能差が語られる」という話は、案外どこにでも転がっているのかもしれません。


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