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小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑫

企業は自社の外側を知らない

文・武智倫太郎

前回はこちら。

第1話はこちら。

あらすじ

前回は、AIデータセンターについて説明した。

AIは、画面の中で答えているように見える。

しかし、画面の外側では、データセンターが電気を食っている。

冷却が動く。

水が使われる。

送電網に負荷がかかる。

発電所が動く。

GPUを作る半導体工場では、膨大な電力、工業用水、薬品、超純水、クリーンルーム、製造装置が動いている。

半導体は隠れていない。

AI需要で高騰しているので、むしろ目立ちすぎるくらい目立っている。

だが、その半導体の後ろで何が動いているのかまで見る会社は少ない。

クラウドは雲ではない。

地面に刺さった巨大な電力需要だ。

スコープ3は、その地面を見に行く。

今日は、この連載の最終回だ。

人気が爆発したから終わるのではない。

むしろ、あまり読まれていない。

CO₂。

有価証券報告書。

スコープ3。

SSBJ。

字面だけで、人間の読む気力を少しずつ削ってくる。

それでも、ここまで読んだ人は、もう分かっているはずだ。

スコープ3は、地球にやさしい会社の宣伝ではない。

会社が、自分の外側をどれだけ説明できるかを見る話だ。

はじめに

やぁ、みんな。

今日は、スコープ3地獄の最終回だよ。

最終回と言っても、地獄が終わるわけではない。

この連載が終わるだけだ。

地獄は、明日から名前を変える。

SSBJ。

有価証券報告書。

サステナビリティ情報。

保証。

内部統制。

開示プロセス。

どれも、名前だけで会議室の空気を重くする力がある。

だが、その前に一度、ここまでの話を畳んでおこう。

第1話では、有価証券報告書にCO₂がやってくる話をした。

第2話では、Scope 1、Scope 2、Scope 3の違いを見た。

第3話では、取引先からCO₂調査票が来る会社の末路を見た。

第4話では、スコープ3の15カテゴリで人間の目が滑る様子を見た。

第5話では、厳しい基準を競争力に変える日本企業の勝ち筋と、緩いAI規制で沈む発想を見た。

第6話では、レジ袋で地球を救えると思った国の有報開示を見た。

第7話では、廃食油はどこにも余っていないことを見た。

第8話では、水素は夢のエネルギーではなく運び屋だと見た。

第9話では、化学肥料を止めると、持続可能な農業が江戸時代の肥桶へ近づく話をした。

第10話では、植林クレジットは木を植えれば終わりではないことを見た。

第11話では、AIデータセンターが電気を食ってCO₂を吐く話をした。

話題は散らかっているように見える。

レジ袋。

廃食油。

水素。

化学肥料。

森。

AI。

一見すると、別々の話に見える。

だが、全部同じ場所へ向かっている。

会社の外側だ。

スコープ3は、会社の外側を見に行く

会社は、自分の中なら見える。

本社ビルの電気料金。

工場の燃料使用量。

社用車のガソリン。

ボイラー。

空調。

照明。

ここまでは、比較的見やすい。

もちろん、会社によってはここですでに苦しい。

拠点が多い。

海外子会社がある。

計測器が古い。

請求書が紙。

担当者が異動した。

前任者のExcelが謎のまま残っている。

それでも、少なくとも会社の中にある。

問題は、その外側にある。

買った原材料は、どこで作られたのか。

部品は、どの電力で作られたのか。

包装材は、どの樹脂から来たのか。

輸送は、船か、トラックか、航空便か。

クラウドは、どこのデータセンターで動いたのか。

売った製品は、顧客の手元でどれだけ電力や燃料を使うのか。

捨てられるとき、燃やされるのか、埋められるのか、リサイクルされるのか。

投資先や融資先は、何を作っているのか。

会社は、こうした外側に依存している。

依存しているのに、知らない。

知らないのに、サステナブルと言う。

そこへスコープ3が来る。

静かに来る。

そして言う。

では、外側を数えましょう。

この一言で、会議室の温度が下がる。

会社は買ったものを知らない

スコープ3のカテゴリ1は、購入した製品・サービスを扱う。

会社は、いろいろなものを買っている。

鉄。

アルミ。

樹脂。

ガラス。

紙。

包装材。

半導体。

部品。

農産物。

食材。

クラウドサービス。

外部委託。

広告。

コンサルティング。

会計士。

弁護士。

大人の会社は、毎日なにかを買う。

経理には請求書がある。

購買には発注データがある。

倉庫には入荷記録がある。

現場には納品書がある。

だが、その後ろにある排出量になると、急に視界が曇る。

その鉄は、電炉か高炉か。

そのアルミは、どこの電力で製錬されたのか。

その紙は、どこの森林と工場から来たのか。

その食品原料には、どれだけ肥料が使われたのか。

そのクラウドサービスは、どこのデータセンターで動いたのか。

請求書には金額が書いてある。

しかし、CO₂は書いていない。

そこが地獄だ。

会社は、金額で世界を見てきた。

スコープ3は、その請求書の裏にある物理を見ろと言う。

金額の後ろには、鉱山、農地、工場、船、倉庫、発電所、水、廃棄物がいる。

会計上は購入費。

炭素会計では、会社の外側に伸びた足跡になる。

会社は運ばれ方を知らない

物流も同じだ。

会社は、ものが届くことに慣れている。

部品が届く。

原材料が届く。

商品が出荷される。

翌日配送。

時間指定。

港から倉庫へ。

倉庫から工場へ。

工場から卸へ。

卸から店舗へ。

店舗から家庭へ。

物流は、会社の血管に近い。

詰まれば会社は動かない。

ところが、炭素会計になると、この血管が急に見えなくなる。

トラックは何を燃やしたのか。

どれだけの距離を走ったのか。

積載率はどの程度か。

混載か、専用便か。

帰り便は空か。

船はどの航路か。

航空便を使っていないか。

倉庫の冷蔵・冷凍設備はどう動いているのか。

国際取引なら、インコタームズも出てくる。

所有権はどこで移ったのか。

危険負担はどこで移ったのか。

輸送手配は誰がしたのか。

小学生向けのはずなのに、急に国際取引実務が廊下から入ってくる。

怖いね。

だが、これが現実だ。

物流を知らない会社は、自社のスコープ3を知らない。

物流を設計できない会社は、削減余地も見えない。

平均値で計算することはできる。

初年度なら、それで入口に立てる場合もある。

だが、平均値のままでは、どこを直せばよいのか分からない。

船へ変えるのか。

鉄道へ変えるのか。

積載率を上げるのか。

倉庫配置を変えるのか。

調達先を変えるのか。

配送頻度を見直すのか。

スコープ3の物流は、CO₂計算の小問ではない。

サプライチェーン設計そのものの話だ。

会社は売った後を知らない

会社は、売ったら終わりだと思いたがる。

商品を出荷した。

売上が立った。

請求書を出した。

入金された。

会計上は、そこで一つの区切りがつく。

だが、スコープ3はしつこい。

売った後も見る。

素材メーカーなら、顧客がその素材をどう加工するのか。

機械メーカーなら、顧客がその機械をどれだけ使うのか。

自動車メーカーなら、車が走る間にどれだけ燃料や電力を使うのか。

家電メーカーなら、製品が家庭でどれだけ電力を食うのか。

ボイラーを売る会社なら、顧客が何を燃やすのか。

建材を売る会社なら、建物の使用時排出にどう関係するのか。

食品会社なら、冷蔵、調理、廃棄まで関係するかもしれない。

販売後の使用。

販売後の廃棄。

ここは、会社のビジネスモデルに直撃する。

自社工場をLEDにした。

本社ビルの電力を再エネにした。

社用車をEVにした。

もちろん、その取り組み自体を否定する必要はない。

しかし、売っている製品が顧客の手元で大量の燃料や電力を使うなら、会社の排出の本丸はそこにある。

ここで、サスティナぶる会社は困る。

本社の緑化写真はある。

社員のボランティア写真もある。

環境方針のメッセージもある。

だが、売った製品が顧客の手元で何をしているかは分からない。

これでは、有価証券報告書の前で足が止まる。

製品は、売った後も会社の影を引きずる。

スコープ3は、その影を見に行く。

会社は投資先もクラウドの裏側も知らない

金融機関、商社、持株会社、投資会社は、さらに大変だ。

自社のオフィスを省エネにした。

本店ビルの照明をLEDにした。

会議資料を紙からPDFにした。

それは、それでよい。

だが、融資先や投資先が何をしているのか。

石炭を掘っているのか。

LNGを扱っているのか。

鉄鋼を作っているのか。

化学品を作っているのか。

農業資材を作っているのか。

データセンターを増設しているのか。

そこを見なければ、金融の気候影響は見えない。

銀行の本店ビルがどれほど省エネでも、融資ポートフォリオがどこへ向いているかの方が重いことがある。

商社も同じだ。

トレーディングだけなら軽く見える。

しかし、その先には、資源、物流、発電、肥料、食品、金属、化学品、インフラがある。

持株会社も同じだ。

子会社の数字が集まらない。

海外法人のデータがそろわない。

現地語の帳票が読めない。

会計年度がずれる。

排出係数が違う。

担当者が退職する。

こうして、スコープ3は管理部門の体力を削っていく。

AIデータセンターも、この仲間に入る。

クラウド利用は、情報システム部の契約に見える。

だが、その裏では電力、水、半導体、冷却、建物、送電網、発電所が動いている。

企業がAI活用を書くなら、どこで動かしたのか、どれだけ使ったのか、ベンダーからどんな排出情報をもらえるのかを見なければならない。

AIで業務効率化しました。

それだけでは足りない。

AIを動かすために、何を食わせたのか。

そこまで見なければ、削減効果も環境ポエムになる。

サスティナぶる会社は有価証券報告書で詰む

ここで、サスティナぶる会社の話をしよう。

サステナブルな会社ではない。

サスティナぶる会社だ。

サステナブルっぽい言葉を使い、持続可能な気分になる会社のことだ。

緑色の表紙。

森の写真。

子どもの笑顔。

丸い地球。

手のひらの芽。

青空。

白いシャツ。

やさしいフォント。

社長メッセージ。

未来への責任。

次世代への約束。

地域とともに。

人と地球にやさしく。

このあたりの言葉は、統合報告書の表紙には似合う。

だが、有価証券報告書でスコープ3を扱うなら、足りない。

まず必要なのは、範囲の説明だ。

どこまで入れたのか。

どこを除外したのか。

なぜ除外したのか。

どのデータを使ったのか。

誰からもらったのか。

測定値か、推計か。

排出係数はどれか。

前年と比べて何が変わったのか。

削減なのか、算定範囲の変更なのか。

取引量の増減なのか。

拠点追加なのか。

M&Aなのか。

クラウド利用の増加なのか。

説明できない数字は、後で自分を追いかけてくる。

有価証券報告書は、会社の作文帳ではない。

投資家、取引先、銀行、監査法人、規制当局、競合、メディア、そして将来の自分が読む。

去年の数字が残る。

今年の数字と比べられる。

来年も見られる。

子どものころの作文を、大人になってから読み上げられるようなものだ。

しかも、その作文には排出係数が入っている。

SSBJは作文コンテストではない

ここで、明日からの話に少しだけ橋をかける。

金融庁は、2023年3月期決算企業から、有価証券報告書等に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄を新設した。

SSBJは、2025年3月5日にサステナビリティ開示基準、一般開示基準、気候関連開示基準を公表している。

名前だけでも重い。

読む前から肩がこる。

だが、方向ははっきりしている。

会社は、気候関連のリスクと機会を、経営、戦略、リスク管理、指標と目標の中で説明しなければならない。

そこに温室効果ガス排出量が入ってくる。

Scope 1。

Scope 2。

そして、Scope 3。

スコープ3は、15カテゴリの上流・下流を扱う。

GHG ProtocolのScope 3 Standardも、企業のバリューチェーン全体の排出を把握するための枠組みを示している。

ここで大人は、また期待する。

どこかに、簡単なテンプレートがあるのではないか。

チェックボックスを埋めれば終わるのではないか。

SaaSに入れれば、自動で出るのではないか。

AIに聞けば、きれいに書いてくれるのではないか。

甘い。

テンプレートは必要だ。

SaaSも役に立つ。

AIも下書きや整理には使える。

だが、自社が何を買い、どこへ運び、何を売り、顧客がどう使い、最後にどう捨て、どこへ投資しているのかは、会社自身が知らなければならない。

知らない会社に、ツールは答えをくれない。

知らない会社にできるのは、空欄をきれいに整えることだけだ。

空欄を整えても、開示にはならない。

最初から完璧でなくてもよいが、雑に白く塗ってはいけない

ここは誤解しないほうがよい。

初年度から完璧なスコープ3を出せという話ではない。

むしろ、最初から完全な数字を作ろうとすると、会社は倒れる。

全カテゴリ。

全拠点。

全取引先。

全製品。

全物流。

全クラウド。

全投資先。

全証跡。

全部を一気に抱えると、会議室の椅子が足りなくなる。

最初は、重要なカテゴリを見つける。

どこが大きいのか。

どこにデータがあるのか。

どこにデータがないのか。

誰が持っているのか。

誰に聞けばよいのか。

どの前提で推計したのか。

どこを除外したのか。

来年どこを改善するのか。

この順番でよい。

荒い推計から始めることもある。

ただし、荒いなら荒いと分かるように書く。

推計なら推計と書く。

除外したなら除外したと書く。

来年直すなら、直す場所を書く。

ここで見栄を張ると危ない。

排出量を小さく見せたい。

対象範囲を狭くしたい。

排出係数を都合よく選びたい。

海外子会社は来年にしたい。

カテゴリ11は大きすぎるから見なかったことにしたい。

クラウドは環境負荷ゼロの雲にしたい。

植林クレジットで白く塗りたい。

このあたりから、有価証券報告書は罠になる。

数字は一度書くと残る。

翌年も残る。

投資家も見る。

監査法人も見る。

取引先も見る。

将来の担当者も見る。

白く塗ったつもりの場所ほど、後で剥がれる。

剥がれた下から出てくるのは、多くの場合Excelだ。

企業が最初にやるべきこと

では、会社は何をすればよいのか。

まず、スコープ3を環境部だけに押し込めない。

環境部だけでは、会社の外側を知らない。

経理がいる。

購買がいる。

物流がいる。

製造がいる。

営業がいる。

法務がいる。

情報システムがいる。

IRがいる。

海外子会社がいる。

取引先がいる。

場合によっては、銀行、監査法人、会計士、弁護士、コンサルタントも来る。

会議室がまた狭くなる。

次に、自社にとって重いカテゴリを探す。

製造業なら、購入品、資本財、燃料の上流、物流、販売後の使用、廃棄が効きやすい。

食品なら、農業、肥料、包装、冷蔵、物流、廃棄が効く。

自動車や家電なら、販売後の使用が本丸になりやすい。

金融なら、投資が重い。

ITなら、クラウド、データセンター、半導体、外部サービス、顧客利用が問題になる。

商社なら、取引形態、物流、投資、販売先、連結範囲が絡む。

建設なら、資材、建設機械、廃棄物、建物使用時の排出が出てくる。

そのうえで、データの出所を確認する。

請求書。

発注データ。

購買台帳。

輸送実績。

燃料使用量。

電力使用量。

クラウド利用レポート。

製品仕様。

販売数量。

使用年数。

廃棄シナリオ。

投資先情報。

こうしたものを集める。

そして、証跡を残す。

誰が、いつ、どのデータを、どの方法で使ったのか。

これを残さないと、翌年に同じ地獄をもう一度掘ることになる。

大人の地獄には、再演がある。

しかも、たいてい年度末に来る。

小学生向けのたとえ

最後に、小学生向けにたとえよう。

スコープ3は、クラスで開く文化祭の出店に似ている。

自分たちの教室だけなら見える。

机を並べる。

看板を作る。

カレーを売る。

ジュースを冷やす。

会計係が売上を数える。

ここまでは分かる。

しかし、先生が言う。

「この出店の外側も説明してください」

急に話が変わる。

米はどこで作られたのか。

肉はどこから来たのか。

野菜は誰が運んだのか。

カレー粉はどの工場で作られたのか。

紙皿は何でできているのか。

冷蔵庫の電気はどこから来たのか。

残ったカレーはどう捨てるのか。

来場者はどうやって学校に来たのか。

売上金は何に使うのか。

最初は、みんな怒る。

「カレーを作るだけでよくないですか」

「そこまで聞くんですか」

「去年は言われませんでした」

「先生、細かいです」

先生は言う。

「今年から有価証券報告書です」

小学生には分からない。

大人にもつらい。

だが、これがスコープ3だ。

カレーそのものではなく、カレーを作るために動いた外側を見る。

そして、その外側を説明できる班は強い。

材料を知っている。

運び方を知っている。

残り方を知っている。

来年の改善点も分かる。

面倒な班だ。

だが、仕事を取るのは、こういう班だ。

そしてCO₂は有価証券報告書に書かれた

この連載の第1話は、有価証券報告書にCO₂がやってくる話から始まった。

最終回では、そこへ戻る。

CO₂は、煙突から出るだけではない。

請求書の裏にいる。

発注データの奥にいる。

倉庫の外にいる。

港にいる。

トラックにいる。

クラウドの向こう側にいる。

農地にいる。

肥料工場にいる。

森林クレジットの契約書にいる。

投資先の事業計画にいる。

売った製品の使用期間にいる。

捨てられた後の処理にもいる。

会社は、これまでその外側を見ないで済んできた。

少なくとも、見ないふりをする余地があった。

スコープ3は、その余地を狭くする。

もちろん、すべてを完璧に見ろとは言わない。

だが、見ていないものを、見たことにしてはいけない。

分からないものを、分かった顔で書いてはいけない。

小さな数字に見せるために、範囲を細くしてはいけない。

森の写真で、排出量を消した気分になってはいけない。

AIの画面だけ見て、発電所を消してはいけない。

廃食油という名前だけで、資源量を増やしてはいけない。

水素という言葉だけで、エネルギー収支を消してはいけない。

サステナブルという言葉だけで、農業の肥料を消してはいけない。

会社の外側は、消えない。

有価証券報告書は、その外側を少しずつ紙の上へ呼び出す。

そしてCO₂は、有価証券報告書に書かれた。

書かれた瞬間から、会社の環境ポエムは数字になる。

数字になった瞬間から、前年と比べられる。

比べられた瞬間から、説明が必要になる。

説明できる会社は強い。

説明できない会社は、会議室で静かに固まる。

本日のまとめ

第12話をまとめる。

スコープ3は、会社の外側を見に行く話だ。

会社は、自社の電気や燃料ならまだ見える。

しかし、買ったもの、運ばれ方、売った後、廃棄後、投資先、クラウドの裏側になると、急に見えにくくなる。

この見えにくい場所に、排出量がある。

レジ袋、廃食油、水素、化学肥料、植林クレジット、AIデータセンターは、別々の話に見えて、全部この一点でつながっていた。

会社は、自社の外側を知らない。

だが、有価証券報告書に書くなら、知らないままでは済まない。

初年度から完璧を狙わなくてもよい。

しかし、範囲、前提、推計方法、排出係数、除外事項、改善計画は説明できなければならない。

サスティナぶる会社は、写真とメッセージで気分を作る。

サステナブルな会社は、データ、証跡、改善で説明する。

この差は、最初は地味だ。

だが、開示、保証、取引先調査、金融機関の審査が重なると、差が出る。

スコープ3地獄は、ここでいったん終わる。

だが、会社の外側が消えたわけではない。

むしろ、ここから有価証券報告書に入ってくる。

明日からは、SSBJだ。

地獄の名前が変わるだけで、会議室の空気はたぶん軽くならない。

連載リンク

第1話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ①|有価証券報告書にCO₂がやってくる

https://note.com/aiethics496/n/n5467ae1329fa

第2話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ②|Scope 1・Scope 2・Scope 3は何が違うのか

https://note.com/aiethics496/n/nc397d8f23175

第3話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ③|CO₂調査票が来た会社の末路

https://note.com/aiethics496/n/nb823fd9a43e7

第4話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ④|スコープ3の15カテゴリは、全部読むと眠くなる

https://note.com/aiethics496/n/n385045ac862c

第5話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑤|厳しい基準で勝つ国、緩い規制で沈むAI

https://note.com/aiethics496/n/n219d91fc6a14

第6話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑥|レジ袋で地球を救えると思った国の有報開示

https://note.com/aiethics496/n/n587496f58475

第7話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑦|廃食油はどこにも余っていない

https://note.com/aiethics496/n/n9b8378886dcf

第8話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑧|水素は夢のエネルギーではなく運び屋である

https://note.com/aiethics496/n/ne0e33cc6ee07

第9話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑨|化学肥料が止まると、持続可能な農業は江戸時代に戻る

https://note.com/aiethics496/n/n16ed7ab944b4

第10話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑩|植林クレジットは木を植えれば終わりではない

https://note.com/aiethics496/n/nd0b21f6d8176

第11話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑪|AIデータセンターは電気を食ってCO₂を吐く

https://note.com/aiethics496/n/n88c755206bc5

第12話:小学生でもわかるスコープ3地獄 ⑫|企業は自社の外側を知らない

https://note.com/aiethics496/n/ndde4684c9afd

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