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#なんのはなしですか【長編小説】第九話(隠された真実)

第一話 キノコのこの子

第八話 憧れに惑わされ

第九話 隠された真実

 木目調のお洒落な扉を引くと、カランカランと鳴るドアベルと一緒に「いらっしゃいませ」と可愛らしい声が出迎えた。
 パグの豆島さんを小脇に抱えたまま俺は店内へと入り、カウンターから出てきた女性へ訊いた。
「すみません、コーヒーとランチってまだやってますか?あと、犬って大丈夫ですか?」
 広めの店内は小物や植物などが飾られ、洋風のモダンな造りでありながも所々に可愛らしさが感じられる。
「ランチですね。大丈夫ですよ。ワンちゃんとでしたら、ペット同伴のお好きな席へどうぞ」
 そう言って店の奥側、革のソファーがいくつか置かれた席へと案内された。空いていた席の壁側のソファーへ豆島さんを下ろし、俺もその横へと座る。
 すると、息付く暇もなく豆島さんが吠えた。
「ワン」(無理やり抱えて路地裏へ連れ込むなんて、私が人間ならあなた今頃捕まってるわよ)
 そういうと、豆島さんはフンと軽く鼻を鳴らした。
 たしかに焦っていたとはいえ、失礼な扱いだったことは間違いない。
「強引な真似をしてしまい、本当にすみません」
 俺は豆島さんへ向かい誠心誠意、平身低頭した。
「ワン」(これだから人間は。まぁ、いいわ。ちょうど昼食がまだだったから、今回はそれで許してあげる)
 俺はその言葉に顔を上げた。
「いいんですか」
「ワン」(ええ、いいから早くメニューを見せなさい)
 そう豆島さんに急かされ、俺はメニューを開いた。
 メニュー表には、パスタやドリアといったランチから、パンケーキやワッフルなどの軽食まで様々取り揃えられており、犬用のフードも種類が豊富にある。
 その中から、それぞれトマトチキンドリアと彩りワンプレートを選び、近くを通りかかった女性店員へと注文内容を伝えた。
 店員は「かしこまりました」と返事をした後、少し屈むような姿勢で俺の方をうかがった。
「あの、失礼でしたらすみません。もしかしてトキオさんですか?」
「あ、はい、トキオです」
「やっぱり、間違えてなくて良かったです。私、ここのマスターをしています、RaMと言います。今はコニシさんの秘書という形で、SNSの広報をお手伝いもさせてもらっているのでご挨拶をと思いまして」
 RaMさんは可愛らしいほんわかとした雰囲気で穏やかに微笑んでみせた。
 ちょっと待て、従業員はいないはずじゃないのか。よりによってこんな可愛らしい秘書を隠していたとは…
「そうなんですね。秘書さんがいたとは。今後もよろしくお願いします」
 俺はRaMさんへ向けて笑顔で返事をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ランチの方、出来上がり次第お持ちしますので、少しお待ちくださいね」
 そう笑顔で返す彼女がまるで天使のように見える。
「ワン」(物腰の柔らかな可愛らしい人ね)
「そうですね。こんな素敵な秘書がいたなんて驚きました。まぁ、それについては後でコニシさんを問い詰めることにします」
「ワン」(そうね。それよりあなた、テレパシーを受け取れるのに、送ることはできないわけ?このままだと、ただの犬と話す変人だと思われるわよ)
 たしかに思い返してみればテレパシーを受け取ったことはあっても、送ったことはなかった。
「そうですね…じゃあ、ちょっとやってみます」
 俺は意識を頭のキノコへと集中させ、そこから思考を飛ばすイメージで豆島さんへとテレパシーを送ってみた。
(あの、聞こえますか…?あれ?これで合ってます?豆島さーん、聞こえ――)
(うるさいわね、少し落ち着きなさい。ちゃんと聞こえてるわ。意外とやれば出来るものなのね。それとも案外あなた勘が良いのかしら)
 なんだか少し豆島さんに褒められた気がして嬉しい。
(おぉ、こんな感じなんですね。というか、豆島さんも吠えなくてもテレパシー使えたんですね)
 豆島さんは前足を組み替えるようにして言った。
(当たり前よ。あなたと一緒にしないでくれる。私はちゃんと状況に応じて吠えているの)
(大変、失礼しました)
 豆島さんに地頭の違いを見せつけられ、俺は目をつぶって素直に謝った。
 そうこうしていると、こんがりと焼けたチーズの香ばしさとトマトの甘酸っぱい匂いを近くに感じた。
 目を開けると、両手にお皿を持った男性店員がテーブルの前に立っていた。
「お待たせしました。トマトチキンドリアと彩りワンプレートでございます。ワンちゃんのフードはこちらの台へ起きますね。それと、RaMさんからトキオさんだと伺いました。僕はここのスタッフでUと申します」
 そう挨拶してきた彼は超ド級のイケメンだった。
「初めましてトキオです。Uさんですね。今後もよろしくお願いします」
 イケメンを前にすると社交辞令は言えても、どうにも笑顔が引き攣ってしまう。
 しかし、Uさんはそんな俺を気にすることなく、自然な笑顔のまま爽やかな優しい声で言ってみせた。
「こちらこそ、よろしくお願い致します。キノコ、可愛いですね。また今度、そのお話聞かせてください。では、ごゆっくりどうぞ」
 その瞬間、俺の心がトゥクンと波打つ。
 いやいや、おかしい。イケメンにちょっと優しくされたくらいで、ありえない。俺は頭を振ってから目の前のドリアへと手を合わせた。
「いただきます」
「ワン」(まぁ、そういう時もあるわね)
 なぜだろう、豆島さんのフォローがフォローになっていない。
 俺はドリアを食べながら話題を変えるように豆島さんへと訊いた。
(ところで、例の話ですけど、路地裏の秘密を探っているというのは、いったい何の話ですか。Oパーツと何の関係があるんですか)
 豆島さんは水を一口飲んでから言った。
(あなたも私と同種かと思ったけれど、どうやら違うみたいね。いいわ、教えてあげても。ただし、そのOパーツを見つけたら私へ渡しなさい。それは私達のものよ)
(豆島さん達のもの?それは、どういうことですか…)
(そのOパーツは私の仲間が過去に失くした物よ。それを探すために私はここへ来たの。あなたこそ、なぜそれを探しているの)
 え?このOパーツはポン先生のものじゃないのか?それにこれは未来から持ってきたはず。
(俺はとある人に頼まれて…あの、あれは本当に豆島さん達の物なんですか。何か証拠はあるんですか)
(証拠なんてないわね。ただ、証拠と言えるかは分からないけれど、Oパーツについての秘密を少し話してあげる)
(Oパーツについての秘密…)
(まず、この路地裏には過去と未来を行き来したり、離れた場所同士を繋ぐためのゲートがあるわ。そして、そのゲートを使うために必要なのがOパーツよ。私はそれを見つけて故郷へ持ち帰る事が使命なの。どう?理解できたかしら)
 確かに豆島さんの話は、ポン先生が未来から来たこととも合致していた。
(はぁ、なんとなく…それで豆島さんが探している路地裏の秘密というのは、そのゲートがある場所のことですか?)
(いいえ、違うわ。私はそのゲートを使ってここへ来たんだから、ゲートの場所なんて秘密でもなんでもないわ。私が知りたい秘密は、なぜこんな場所にゲートが造られたのか、その理由よ)
(え…?)
 俺は呆気にとられた。
(通常、ゲートというものは造るのに膨大なエネルギーを要するの。だから新たに発見した惑星や、特殊な鉱物・資源の採取、特別なパワースポットなど、何かしら価値のある場所にだけ造られる。だとすればここもゲートが造られるほどの価値になるような何か、つまり秘密があるはずよ。私はその秘密を知りたいの)
(なるほど…)
 でもここに、そんな価値のあるような秘密が本当にあるのだろうか。こんな何の変哲もない町に。
(まぁでも、秘密を探るのは私の個人的な興味だから、とりあえずOパーツが見つかればそれでいいわ。それに、この感じだと各自で探した方が良さそうね。何か必要があれば協力し合いましょう)
 確かにお互いOパーツについて情報を渡すメリットはない。しかし、人間と犬という姿の違いやテレパシーによる意思疎通が必要となる場面があるのかもしれない。きっと頭の切れる豆島さんのことだから、それを思っての打診なのだろう。
(そうですね。分かりました。必要時は協力し合いましょう)
 俺達はランチの残りを食べ終えて席を後にした。
 会計にて待っていたRaMさんへとオーダー表を手渡す。
「ご馳走様でした。美味しかったです」
「良かったです。またぜひ、いらしてください」
 RaMさんの微笑む顔は何度見ても癒される。
「はい、またぜひ。あ、あと、突然のお願いで申し訳ないのですが、こういう感じの物をもし見かけたら教えていただけませんか?」
 俺はポケットへ入れていた紙を取り出してRaMさんへと広げてみせた。
「分かりました。あの、よろしければ、そのイラストをお店の入り口あたりに貼っておきましょうか?」
「え、いいんですか。ありがとうございます。助かります」
「ワン」(あら、良かったわね)
「見つかるといいですね。何か連絡があればお伝えしますね」
 RaMさんはそう言うと、早速イラストのコピーをとり、『探しています。見つけたら当店のマスターまで』と可愛らしい字でその紙へと書き込んだ。



第十話


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第一話 キノコのこの子



本作品の注意点

《登場人物》
 上記の記事で許可を得て、noterさんよりお名前や設定を拝借しております。小説内の人物像は作者の想像のため、お名前をお借りしたnoterさんの実際の人物像とは異なる場合がございます。
 また、ネタバレを考慮し、noterさんや元ネタ記事の紹介を長編小説の投稿終了後に行う場合があります。
ご了承くださいm(_ _)m
 ご不明な点や不備・要望がありましたら、教えていただけると幸いです。

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