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🟡掌編小説|料理部を作りたい

前作からの続き

「明日からGWだね」
「そうだね」
「あたし料理部を作りたいんだ」
「ずいぶん端折ったね」
「だから副部長やってよ!」
「でも料理部って、既にあるよ?」

***

 ハルにとって、それはどうやらそれほど大した問題ではないらしい。

 当然今回も部活動申請書は準備してある。設立目的、活動内容、そして写真部や温泉部とも両立可能な年次計画。部員は2名。ハルが部長でぼくが副部長。顧問は空欄。これをGW明けに提出する際、参考資料として活動イメージを添付したいという。

「明日、うちに来てよ」
「なるほど。え、ええっ?」

***

 という訳でぼくは今ハルの自宅マンション前にいる。どこかで待ち合わせてふたりで行くのかと思ったら直接来てくれと言う。だからひとりだ。

***

 朝起きてまずお風呂に入り、歯を磨いて、いつもより少しだけ余所行きの普段着を着て、家から一番近い洋菓子店で焼き菓子を買った。

 ハルの普段着は何度か見たことがあるけれど、それはどちらかと言うとちゃんとした外出着だったように思う。家ではどんな格好をしているのだろう。

 部屋番号と「呼出」ボタンを押すとスピーカーから「はーい」とハルの声がして、ぼくはどうして良いか分からず「あ、来ました」と言った。

 ハルが「なに緊張してんの?」と笑いながら「上がって来て」と言う。そしてオートロックの玄関ドアを開けてくれた。

 ぼくは勇者の如くダンジョンに足を踏み入れる。

***

 ハルはピッタリしたデニムのパンツにマルチボーダーのニット。その上からエプロンをしていた。家の中でも靴下とスリッパを履く人だった。

「ママがいるけどもう出掛けるから」
「お、お邪魔します。これ、手ぶらじゃあれだと思って、え、マ、マ?」

 ハルが多分ぼくに何かを話しかけたのだけれどよく聞こえなかった。居間に通されるとそこにハルと良く似た大人の女の人がいたので「お邪魔します」と挨拶した。

「こんにちは。いつもハルがお世話になってるみたいで、迷惑掛けてなーい?」
「いえ、迷惑だなんてそんな」
「そう? ハルったら、あなたのことが好き過ぎるみたいで」
「あははは、え、えっ?」

 ぼくは、もしかしたら場違いな声を出してしまったもしれない。

 ハルは呆れたみたいに「やめてよ、困ってるじゃない」と苦笑している。お母さんは「良さそうな子ね」とハルに向かって親指を立てた。

***

 ぼくらは今からふたりで餃子を作るらしい。

***

 材料は既に用意してあり、ぼくはハルの指示通りにそれらをフードプロセッサーでみじん切りにしていく。

「餃子、好きなの?」
「一緒に作ったら楽しいでしょ?」

 台所にふたりで立つとハルの顔がすごく近くにあって、それに髪をポニーテールにしているからハルはハルじゃないみたいだし、ぼくもまたぼくじゃないみたいだ。

 刻んだ野菜を三等分して別々のボウルに入れ、挽肉と調味料、それからニラ、大葉、セロリを刻んでそれぞれ別のボウルに加え、ハルが「いいよ」と言うまで念入りに混ぜた。

 ダイニングテーブルに場所を移して、ぼくらは並んで座り、とても器用に餃子を巻いていくハルの手を見ながら、その横で、ぼくも不格好ながら辛うじて餃子と呼べそうなものを、まあ、作った。

 ハルの餃子は、まるでハルの書く字みたいだ。

***

「ごはん食べていくでしょ?」
「良いのかな」
「せっかく作ったんだし。食べようよ」

 ハルが餃子を六個ずつ焼いてくれて、白ごはんと味噌汁も出してくれた。

「美味しいね」
「うん」
「辛子醤油で食べる人初めて見た」
「うん」
「何か言いなよ」
「部活動申請、通ると良いね」
「そうだね、でも無理じゃないかな?」
「うん。え?」

 いま何て?

(つづく)

🟡1494文字


【附記】

ハルの部活シリーズ第3弾。
もうね、ハルが可愛い過ぎる!

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