⚪️掌編小説|うっせえわ
「明日から連休だね」
「そうだね」
「協力してほしい事があるんだけどさ」
「ぼくに? 何で?」
「暇そうじゃん」
「うっせえわ。いや暇だけど」
「ほら。ありがと」
「協力するとは言ってない」
「あたし写真部を作りたいんだよね」
「うん?」
「だから副部長やってよ!」
***
連休関係なくない? とは思ったけれど、よくよく聞いてみればこういうことだった。
部活動申請書は準備してある。設立目的、活動内容、年次計画も記入済み。部員は2名。ハルが部長でぼくが副部長。顧問は空欄。これを連休明けに提出する際、参考資料として活動イメージを添付したいという。
「街角スナップ撮影会を開催します!」
ふうむ。
***
という訳で、ぼくらは天乃川神社前で待ち合わせた。ハルの私服姿。赤いセーターに小さなデジカメを斜め掛けして5分遅れで到着したハルを思わずその場で撮ってしまった。スマホだけど。
ここには七五三で来たんだ。振袖着て写真撮ったんだよ。その辺から。撮ってくれる? おんなじ場所で。
はいはい。
ハルはあちこち絵になる風景を見つけては何枚もシャッターを切っていく。ぼくはスマホだし街角スナップと言われてもよく分からないからそんなハルの様子を撮ることにした。
綿菓子を買ってもらったとか、かくれんぼしたとかを聞きながら境内を歩き、ほらこっち抜道、大階段を下って天乃川大橋を渡ると、ここから見る花火がいちばん好きとか。そんなハルの横顔とか。
門前町をぶらぶらして時折スナップしていくハルを見ながら、これって普通にデートだよねと思った途端ハルのセーターより赤くなってしまった。マズいキョドる。
けれど幸いなことに北風がピューッと吹いて彼女の髪を掻き乱してくれた。白いコートのフードをバタつかせてハルが髪に手をやる隙に、風の奴まんまとスカートを捲り上げていった。
ぼくらの見ちゃったと見られちゃったが交錯して固まる。
「シャッターチャンス。逃した」と言った。
「ばーか。タイツだよ」
ハルがスカートをわざと捲って黒いタイツを見せた。
「ほーらほーら」
「やめろ!」
それからぼくらは名物の蕎麦を食べ、甘味処でお茶をして別れた。
「今日は付き合ってくれてありがとう。これからもよろしくね副部長!」
こんなんで部活が作れるのだろうか。
別れてすぐハルからメッセージが入った。そこにはいつの間に撮ったのかぼくの写真が何枚か添付してあって、今度はシャッターチャンス逃さないでねと書いてあった。
あざとすぎだろ!
(つづく)
🟡1026文字
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