⚪️掌編小説|蜜柑堂書店 第十五話
第十四話からの続き
蜜柑の味と、伊予柑の味?
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蜜柑さんはいつも柑橘系の香水ですねと勇気を出して訊ねてみると、そうなのずっと同じのばっかりで、たまには変えてみようかなとも思うのだけれど、コレというのがなくてね、と言った。
「バレンシアオレンジですか?」
「そう。それとグレープフルーツも少し入ってるみたい。香水は嫌じゃない?」
蜜柑さんが心配そうに訊ねる。ぼくは「嫌じゃないです好きです」と、でもこれはちょっと力強く言い過ぎたかもしれない。大丈夫かな。
そんな話から柑橘類全般の話題になり、どんな種類があるかとか、何が好きかとか、味の違いが分かるかというように会話が弾んでいって、今あらゆるものが弾んでいる。
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一方で、ヒーラギさんから「メロン君」なるキャラ名?を頂いている手前、何となく居心地が悪いというか、メロンのくせにみたいな負い目もあって、そんなこと言ってどうせあなたはメロンでしょなんてイジられやしないかと気が気でなかったのも確かだ。
でも、メロンは野菜らしいので……
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「オレンジ」
「ネーブル」
「グレープフルーツ」
「セミノール」
「はっさく」
「伊予柑」
「はるみ?」
「はるみに似た名前のがあったわよね、はるか……はるかだっけ」
「紅、はるか?」
「やだーそれさつまいも!」
蜜柑さんがお腹を抱えてころころと笑った。
「ふがー温州みかん!」
「ぽんかん」
「甘夏」
「夏みかん」
「あ、そう言えば実家の庭に夏みかんの木が植えてあるんです」
「素敵ね、食べる用に?」
「それが何故か何年経っても実が付かないんです」
「不思議ね」
「不思議なんです」
「夏みかんなのは確かなの?」
「母はそう言ってます」
ぼくたちは笑った。
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どの味が好き?と蜜柑さんが訊いて来たので今度こそ失敗は許されない。ぼくは蜜柑です、絶対的に蜜柑です、と全力で答えた。少しウケた。
「今度食べ比べをしましょうよ」
「ブラインドテストですか」
「面白そうじゃない?」
蜜柑さんは、みかんをどんなふうに食べるのだろう。白いスジを綺麗に取って一粒ずつ、横向きに食べるか縦にして食べるか、あるいは皮ごと口に放り込むのかな、いいや、まさか。
ぼくは気づいたら蜜柑さんの口元をガン見していて、それに気づいた蜜柑さんが「はてな?」という顔で首を傾げている。
ぼくは慌てて「面白そうです!」と叫んだ。
蜜柑さんがまたころころと笑った。
(第十六話に続く)
*見出し画像は@羽さんの作品です。
*関連エピソード:第六話、第十三話
