⚪️掌編小説|蜜柑堂書店 第十三話
第十二話からの続き
朝来たら蜜柑さんが申し訳なさそうな、それでいて面白がるような表情を浮かべていたので、何だろうと思って訊ねてみると、驚いたことに、文芸書コーナーの一部(平台)をぼくに任せたいと言う。
「ほんとですか!」
それは何というか、とても名誉なことだ。自由にレイアウト出来る場所を貰えるのだから。
「やってくれる?」
「もちろんです!」
嬉しくて、思わず顔がにやけてしまう。
***
「それでね」
蜜柑さんが何やら隠し持っていたものをぼくに見せようとしている。
それは手描きのポップだった。
***
蜜柑堂書店の新人スタッフ♡
メロン君の推薦図書コーナー
***
「え、それ、ちょっ、え? メロン君、て」
「これ、ヒーラギさんが作ってくれたのだけど、わたし訊いたのよ、不意撃ちじゃないわよねって。ヒーラギさん絶対大丈夫って言ってらしたから」
蜜柑さん。明らかに笑いを堪えてる。
あーもー、ヒーラギさん! これ、何! めちゃめちゃ恥ずかしいんですけど!
そもそも歓迎会で一度会ったきりなのに、どうしてこんな大胆なことを仕掛けてくるんだ?
***
「あなた蜜柑がお好きなのね?」
「まあ、好きですね」
「青いわね」
「はい?」
「青い性」
「はあ」
「性欲はお強いの?」
「何を言ってるんですか、訴えますよ?」
「デザートには蜜柑を頂くのかしら?」
「デザートに蜜柑を出すイタリア料理店なんてあります?」
「あたしお肉が良い!」
「それデザートじゃないから!」
「でも一番好きな果物は蜜柑なのでしょう?」
「いや普通にメロンですね」
あれか! あの時のあれか!
***
ぼくはデータベースを叩き、メロン君の十冊?のための候補作をピックアップした。
雨模様が続いているからみんなきっと青空を欲しているに違いないし、ヒーラギさんに敬意を表して。まずは初回、青のグラデーションで遊んでみるか。
『限りなく透明に近いブルー』村上龍(講談社、1976年)
『青が散る』宮本輝(文藝春秋、1982年)
『青くて痛くて脆い』住野よる(KADOKAWA、2018年)
『青い春を数えて』武田綾乃(講談社、2018年)
『青い山脈』石坂洋次郎(新潮社、1947年)
『青い壷』有吉佐和子(文藝春秋、1977年)
『青の炎』貴志祐介(角川書店、1999年)
『青の数学』王城夕紀(新潮社、2016年)
『青のフェルマータ』村山由佳(集英社、1995年)
『青い花』ノヴァーリス(青山隆夫訳、岩波書店、1989年)
『青い鳥』メーテルリンク(末松氷海子訳、岩波書店、2004年)
『青い城』モンゴメリ(谷口由美子訳、角川書店、2004年)
『青春の門』五木寛之(講談社、1970年)
『青春デンデケデケデケ』芦原すなお(河出書房新社、1991年)
『刺青殺人事件』高木彬光(角川書店、1973年)
『瑠璃でもなく、玻璃でもなく』唯川恵(集英社、2011年)
『碧空のカノン』福田和代(光文社、2015年)
『蒼穹の昴』浅田次郎(講談社、1996年)
『蒼ざめた馬を見よ』五木寛之(文藝春秋、1975年)
『蒼天の鳥』三上幸四郎(講談社、2023年)
『蒼い時』山口百恵(集英社、1980年)
(第十四話に続く)
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