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うつ病になった医療従事者が四枚の絵に込めた本当の話

これは、うつ病で休職するまでの医療従事者である僕自身の物語です。絵には、その時々の心情が込められています。

©️AI illustration / concept by S.T


僕は作業療法士という仕事が好きでした。

患者さんが少しずつ歩けるようになること。

元の生活を取り戻していくこと。

退院の日に「ありがとう」と言ってもらえること。

この仕事は、自分の天職だと本気で思っていました。

だから十数年間、続けてこられました。

もちろん、一人ではありません。

ここまで頑張れたのは、周りのスタッフに恵まれていたからです。

人間関係は、決して悪い職場ではありませんでした。

でも、その職場は少しずつ変わっていきました。

仲の良かった先輩。

尊敬していた先輩。

支えてくれた人たち。

「もう、やってられん。」

そう言って辞めていく姿を、僕は何人も見送ってきました。

病院の方針が合わなかった人。

心を痛めて辞めた人。

気が付けば、知っている顔より、知らない顔の方が増えていました。

同じ病院なのに、違う職場へ来てしまったような感覚。

あの頃から、僕の心は小さな違和感を訴えていたのかもしれません。


©️AI illustration / concept by S.T


医療従事者は、聖人じゃありません。

ただ医学やリハビリ知識を学んだ、ごく普通の人間です。

腹も立つ。

傷もつく。

泣きたくなる日もあります。

看護師さんらに対して「白衣の天使」という言葉が、昔はよくありました。

テレビドラマとかドキュメンタリーで、そういった表現がありました。

でも、天使なんかじゃありません。

人間です。

医療従事者は、ただの人間です。

だから、嫌な患者さんに対して警戒します。

クレーマー。

カスタマーハラスメント。

本当に多い。

「担当を替えてくれ。」

「〇〇さんはもっと良くしてくれた。」

「あんた、下手くそやな。」

時には暴言。

時には暴力。

もちろん、病気の影響や不安から出る言葉もあることは理解しています。

そういう患者さんには我慢できます。

でも、理解できない患者が、たまにいます。

はっきり言って、やってられません。

何年も積み重なれば、人の心は少しずつ削られていきます。

あの巨大な怪物は、一人の患者さんではありません。

クレーマー。

カスハラ。

理不尽。

仕事への責任。

家庭での出来事。

将来への不安。

全部が重なって、僕の中で一匹の怪物になっていました。


©️AI illustration / concept by S.T


休職する半年前くらいから、上司には少しずつ愚痴をこぼすようになっていました。



休職する前日。

その日は半休でした。

午前中に担当したのは、当院でも、一番有名なクレーマーの患者のくそばばぁ。

対応を終えた頃には、心はもう空っぽでした。

その日、もう限界で、直属の上司より上の人と話をしました。

ナースステーションの一角でした。

周りにはスタッフがいました。

そんなことを気にする余裕はありませんでした。

涙が込み上げました。

そして、僕は言いました。

「目眩とか、不調が先月から酷くなって、、、」

「もう無理、まじ限界なんです…」

しばらく話を聴いてもらい、今後のことを話し合いました。たくさん、励まされました。カスハラに関しては、なんとかしてくれると言われました。

張り詰めていた糸が切れた音がしました。

午後は休み。

頭が全く働かず、残った仕事の処理や申し送りをしていたら、帰宅予定より2時間近くオーバーしていた。

たまたま休みだった仲の良い年下の先輩にLINEしていました。

「もう限界、辞めたい」と。

「愚痴、聞いたるよ」と近くの喫茶店へ呼んでくれました。

先輩は、最近産まれた赤ちゃんを抱きながら、一時間ほど僕の話を聞いてくれました。

仕事ここと、家でのこと、地域の活動の愚痴

プライベートなこと

少しだけ気持ちは楽になりました。

でも、店を出てからの記憶が曖昧なんです。

気が付けば夜でした。

車を運転して帰ったはずなのに、その記憶もほとんどありません。

家に帰り、ビールだけ飲んで眠りました。

翌日、母に言われました。

「昨日、お昼に帰ってくるんじゃなかったんか?どうしたんや?」

その言葉で、自分が普通じゃなかったことに気付きました。


©️AI illustration / concept by S.T


翌日は、たまたま仕事が休みでした。

目眩。

吐き気。

激しい動悸。

体を起こすこともできませんでした。

病院を受診しました。

医者からは、「とりあえず1ヶ月は休もう」といわれました。心が限界突破してる状態らしいですを

翌日から休職しました。

上司らからは、休職を「突然やったで、びっくりした」と言われました。

でも、僕にとっては全く突然ではありません。

二年くらい前から、それとなく「もう嫌や」と言い続けていました。

SOSは出していたつもりでした。

でも、自分でも「まだ頑張れる」と思い込んでいたんです。

冗談に聞こえたのかな?

ただの、愚痴っぽくなっていたのかな?



あの四枚の絵の中の、逃げている子たちは僕です。

桜の下で笑っていた頃の僕。

怪物から逃げる僕。

段ボールの中で息を潜める僕。

泥だらけになって泣いている僕。

でも、この物語は絶望で終わりません。

四人は生きています。

怪物を倒せなかったけれど、生き延びました。

僕も同じです。

休職は敗北じゃありませんでした。

生き延びるための選択でした。

今はまだ、段ボールの中に隠れているような毎日です。

それでも、いつかまた。

心から笑える日が来ると信じています。



限界せぷてんば


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