Resolved 90%止まり:Qwen3.6-27B-Fable-FusionはMTP版Q5がベスト——“創作寄り”マージはコード特化の兄弟版に届かなかった(5構成×60タスク)
創作用モデルなのでベンチマークはあくまで参考。
セキュリティ、創作とか向けのベンチマークみたいの考えるのもありか。
こんにちは、くーるぜろです。
名前がすべてを盛り込みすぎているこのモデル——Qwen3.6-27B-Fable-Fusion-711-Uncensored-Heretic-NM-DAU-NEO-MAX-MTPを、標準版とMTP版・3量子化の計5構成で60タスクに通しました。同じHeretic系のご先祖(Heretic-NEO-CODE)がコーディングで98%台を出していたので、「Fable(創作)を混ぜたこの版はどうなるのか」を確かめたかったのが動機です。
先に結論を言います。5構成のベストはMTP版Q5_K_Mの Resolved 90.0%(54/60)。MTP版は標準版よりはっきり速く、精度もわずかに上ですが、その精度差は今回の1runでは運の範囲を出ません。 そして——コード特化の兄弟版(Heretic-NEO-CODE、Qwopus-Coder)には一歩届きませんでした。 看板に「創作・無検閲」を掲げたマージの地力が、コーディングという土俵でどう出たか。順番に見ていきます。
このモデルの素性

名前の分解メモ:Fable Fusion=創作系Fableのtrace融合、711=公称ARC-C 0.711に由来、Heretic=脱検閲手法、NEO=NEO IMATRIX量子化、MAX=最適化名目、DAU=作者(David AU)、NM=nightmedia。要は「創作寄り・無検閲に振ったQwen3.6-27B denseを、NEO imatrixで焼き直した版」です。
GGUFサイズ(HF記載の二次情報。筆者のベンチ実測値ではない):

検証環境
実行環境: llama.cpp(CUDAビルド)
ハードウェア: EVO-X2 + RTX5090 32GB(当連載の標準リグ)
タスク数: 60問(easy 5 / medium 5 / hard 10 / expert 12 / frontier 8 / architect 20)
実行回数: 各タスク1回(今回はスクリーニング。pass@kは取っていない)
内容: Pythonのバグ修正・実装タスク(関数レベル、決定論的な隠しpytest付き)
サンプリング: モデル公式推奨のコーディング用 temp 0.6 / top_p 0.95 / top_k 20
評価軸: Resolved率 / Quality / Combined / usability / tok/s
比較構成: 標準版 Q4_K_M・Q5_K_M / MTP版 Q4_K_M・Q5_K_M・Q6_K の5つ
llmbenchは、バグレポート+ソースをLLMに渡し、patch適用→LLMには非公開の隠しpytestでresolved判定するSWE-Bench風の自作ベンチです。難易度tierは easy→architect、タスクIDは t001〜t060。Combined = success_rate ×(0.5 + 0.5 × quality/100)× 100(動かないコードは0点)。GitHub: `zephel01/swe-bench`(MIT、stdlib-onlyで再現可能)。
結果サマリ

結論: 名目上のチャンピオンはMTP版Q5_K_M(90.0%)。ただしMTP版3つ(88.3〜90.0%)は取りこぼしタスク数にして1問差の中に固まっており、1run・±1〜2問の差では優劣を断定できません。 実質的に読み取れる信号は2つだけ——(1)MTP版(88〜90%)が標準版(85〜87%)をやや上回る、(2)MTP版は標準版のほぼ倍速。この2点です。
MTPは「速い」——ただし「賢い」かは今回の1runでは断定しない
MTP版のtok/sは標準版のおよそ1.7〜1.9倍でした(標準~58〜65 → MTP~103〜116)。これは投機的デコード(先読み)が構造的に速い数字を出しているだけで、速さは賢さの証明ではありません。denseの標準版が遅いのは素直な挙動で、遅い=劣っている、ではない——連載の読者にはおなじみの但し書きです。
精度についても正直に書きます。MTP版Q5(90.0%)と標準版Q5(86.7%)の差は+3.3pt。1run・60タスクで+3.3ptは、運の範囲に収まりうる幅です(このシリーズでは「±3pt程度では断定しない」を原則にしています)。したがって今回言えるのは「MTP版が速く、かつ標準版を下回ってはいない」まで。「MTPで賢くなった」とは書きません。 精度の序列を確定させるには5runsが要り、これは宿題にします。
量子化の逆転:今回はQ5がピーク、Q6で半歩下がる
MTP版の中で見ると、Q5_K_M(90.0%)がピークで、より上位ビットのQ6_K(88.3%)が半歩下がりました。 「ビットを上げれば精度が上がる」が成り立たない、この連載の常連パターンです。ご先祖のHeretic-NEO-CODEでは逆に「Q5だけ一段低い」谷でしたが、今回はQ5が山。量子化と精度は素直な単調増加をしないという一点だけが、系譜を通じて一貫しています。
ただしQ6の「失速」も中身は1問差(54→53)。Q6_Kが落としたのはhardのt020とexpertのt021(バンカーズ丸め)で、Q5が拾っていたt021をQ6が落とした——という1タスクの揺れです。逆転現象として見出しは立てますが、断定はしません。用途で選ぶなら「MTP版はQ5を第一候補、VRAMに余裕がなければQ4でも実用上ほぼ同じ、Q6をあえて選ぶ理由は薄い」が今回の落としどころです。
architect帯が分水嶺:差はすべてここに出た
難易度別に割ると、easy〜frontierはほぼ天井に張り付いていました。

非architectの40問は各構成37〜39/40で、ほぼ横並び(天井効果)。5構成の差は事実上ぜんぶarchitect帯(14〜15/20)で決まっています。 逆に言えば、このモデルは中級〜上級の実装バグはdenseの地力で素直に潰せて、設計レベル(architect)で頭打ちになる、という素直な形をしています。序列をきちんと出したいなら、次はarchitect帯を厚くするかrun数を増やす——これも宿題です。
全構成が揃って落とした5問——シリーズの鬼門系譜
5構成すべてが落としたのは t020・t044・t046・t047・t059 の5問。うち4問はこの連載で名前の付いた鬼門です。
t020[hard] calculator ignores precedence and parentheses(電卓の演算子優先順位・括弧)。シリーズ最大の常連鬼門。Qwable系8量子化が全滅し、過去にMTP版Qwopus-CoderのQ6だけが一度突破した、あの壁です。Fable-Fusionは5構成すべてで撃沈——電卓の壁は今回も健在でした。
t044[architect] plugin load order is fragile and cycles are undetected(プラグインのロード順とサイクル検出)。過去記事ではID列挙のみで内容解説がなかったタスクですが、今回も全構成が落としています。
t046[architect] singleton and request lifetimes are not honored(DIのシングルトン/リクエストライフタイム)。Gemma4検証では「量子化を上げても解けない構造的な鬼門」と評した問題。patchは生成できているのに隠しテストを一度も通せない型で、今回も系統を問わず全滅でした。
t047[architect] failed migration leaves later ones marked applied(マイグレーション失敗時のロールバック)。設計を正しく組まないとテストが通らない、architectの定番。
t059[architect] floating-point sum drifts from the true value(浮動小数点合計のドリフト=破滅的桁落ち)。Heretic-NEO-CODE検証で「今シリーズで誰も——専用コーダーのQwopusもBugTraceも——解けていない真の天井タスク」と書いた、あれです。Fable-Fusionもここは越えられませんでした。
t020(電卓)とt046/t047/t059(設計三兄弟)——この連載の宿題は、モデルが変わっても変わりません。
usability(実際どれくらい任せられるか)
Resolved率だけでなく「レビューなしでそのまま使えるか」で3分類した結果です。
🟢 自律: レビューほぼ不要でそのまま使える
🟡 補助: レビュー前提なら任せられる
🔴 不可: 任せられない

🔴不可がMTP版で6〜7問(10〜12%)まで下がり、標準版の8〜9問(13〜15%)よりわずかに良好。実務的には**「補助つき運用なら十分戦力、フルオート委任には設計タスクの取りこぼしが残る」**という位置づけです。丸投げできる子ではないが、レビュー前提なら27Bとして素直に使えます。
兄弟モデルとの距離:コード特化版には届かなかった
同じQwen3.6-27B系・実測スコアと並べます(タスク数・run数・architect有無が違うので単純横並びは禁物。分母を添えます)。

同じ60タスク1runで比べられるのはHeretic-NEO-CODEとThinkingCapですが、コード特化(NEO-CODE imatrix)のご先祖が98.3%だったのに対し、創作寄りのFable-Fusionは90.0%止まり。差の主因はarchitect帯で、Heretic-NEO-CODEがarchitect 19/20だったのに対し本モデルは15/20でした。
ここは因果を断定しません(自信度: MODERATE)。ただ方向としては、「創作・無検閲に振ったマージ」と「コーディング用にimatrixを焼いた版」で、コード土俵の地力に差が出たと読むのが自然です。ご先祖検証で書いた「看板と中身は別物、適性を決めるのは土台」という話の、今度は逆サイド——創作看板のモデルは、創作の看板どおりコードでは兄弟のコード特化版に譲った、という一本でした。
tok/sの読み方(注意)
数字を額面で受け取らないための3点セット:
MTP(投機的デコード)版は構造的に速い数字が出ます(先読みが当たるぶん速いだけで、精度が上がるわけではない)。本記事のMTP版~103〜116 tok/sはこの効果込みです。
dense標準版(~58〜65 tok/s)が遅いのは素直な挙動。遅い=劣っている、ではありません。
本記事のtok/sはすべて単発(1run)時の中央値です。並列実行時の1ストリームtok/sは桁が変わるため、並列運用の数字とは比較できません。
まとめ
5構成のベストはMTP版Q5_K_M(Resolved 90.0%、Combined 82.3)。ただしMTP版3つは1問差の団子で、1runでは優劣を断定しない。
速度重視ならMTP版Q5_K_M(標準版比~1.8倍、精度も下回らない)。VRAM節約ならMTP版Q4_K_M(88.3%、実用上ほぼ同じ)。Q6_Kをあえて選ぶ理由は薄い(半歩失速)。標準版は精度で並ぶがMTP版に速度で大きく譲るので、積極的に選ぶ場面は限られる。
差はすべて**architect帯(14〜15/20)**で決まった。中〜上級バグはdenseの地力で素直に潰せる。
全構成が揃って落とした鬼門は t020(電卓)・t044・t046・t047・t059。設計三兄弟(t046/t047/t059)と電卓は、モデルが変わっても越えられていない。
クロス比較では、コード特化のご先祖Heretic-NEO-CODE(98.3%)に届かず90.0%止まり。創作寄りマージの地力がコード土俵でどう出るかが、そのまま数字になった。
教訓を1つ。「NEO」「MAX」「Heretic」と看板を盛っても、コーディング適性を決めるのは融合したデータの向き(創作寄りかコード寄りか)であって、量子化名やimatrixの銘柄ではない。 創作用に欲しいなら無検閲の地力は魅力ですが、コード運用の第一候補にするなら兄弟のCoder系を選ぶ——というのが、今回の5構成×60タスクからの持ち帰りです。
検証で生成したコード・テスト結果はアーカイブ済みです。「特定タスクの詳細が見たい」「自分の環境でも試したい」はコメントへどうぞ。
モデル情報
HuggingFace: `DavidAU/Qwen3.6-27B-Fable-Fusion-711-Uncensored-Heretic-NM-DAU-NEO-MAX-MTP-GGUF`
ベース: Qwen3.6-27B(dense・27B)/ Heretic脱検閲+Fable創作trace融合+NEO IMATRIX
ライセンス: Apache 2.0
推奨サンプリング: コーディング temp 0.6 / top_p 0.95 / top_k 20(モデル公式推奨)
公称値(実測とは別): ARC-C 0.711(8bit)/0.701(4bit)、ベースを7項目中6項目で上回ると主張
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Qwen3.6-27B-Heretic-NEO-CODE ベース検証(コード特化のご先祖、98.3%)
Qwopus3.6-27B-Coder MTP版 40タスク検証(Q6で100%): https://note.com/zephel01/n/nc29d6bd8ee6e
Qwable-3.6-27b / 27b-MTP 検証: https://note.com/zephel01/n/nda82899fda18
Qwable-3.6-35b 検証: https://note.com/zephel01/n/n93a958cfb42e
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