見出し画像

「気」は、足りなくなるより先に、滞ります──気虚と気滞の見分け方

この記事の内容を、毎朝1分で復習したい方へ。

Substackでは、今日のテーマを「朝の漢方1問」として、クイズ形式でお届けしています。登録していただいた方には、漢方の基礎を学べる「厳選30問ドリル」もお渡ししています。読むだけで終わらせず、少しずつ身につけたい方はこちらからどうぞ。

無料で登録して、朝の漢方1問を受け取る

皆さん、こんにちは。悠々漢方です。

昨日は、漢方が体を「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の三つで見ること、そして不調は「足りない」か「滞る」かの二通りで起きることをお話ししました。

今日はその一つめ、「気」を見ていきます。三つの中で、いちばん想像しにくいものかもしれません。目に見えず、検査でも測れない。それでも、東洋医学が二千年近く大切にしてきた考え方です。

気は、体を動かしている力そのものです

気とは、ひとことで言えば「体を動かしている見えない力」です。

心臓が動くのも、食べたものが消化されるのも、傷が治っていくのも、体温が保たれるのも、すべて気の働きだと考えます。家でいえば電気に当たります。照明も冷蔵庫も、電気が来ているから動く。止まれば、家そのものは無事でも、何ひとつ機能しなくなります。

東洋医学では、気にいくつかの役目があるとされています。体を温めること。外からの寒さや暑さ、病の元から守ること。血や水を体じゅうに押し流すこと。そして、内臓や血が本来の場所から落ちないよう、支えておくこと。

このうち最後の役目は、意外と知られていません。夕方になると胃が下がった感じがする、立ちっぱなしの日に脚が重くなる。こうした変化を、気の支える力が落ちていると捉えることがあります。

足りない気虚と、滞る気滞

さて、気の不調は二通りです。

一つは、量そのものが減っている「気虚(ききょ)」。もう一つは、量は足りているのに流れが止まっている「気滞(きたい)」です。

どちらも「元気が出ない」という似た訴えになりますが、体が出している信号はまるで違います。

気虚は、じわじわと下がっていきます

気虚は、電池が減っていく状態です。

朝、目が覚めても疲れが残っている。午後になると力が出ない。少し動いただけで息が上がる。声が小さくなり、話すのも億劫になる。食が細くなり、食べた後に強い眠気が来る。風邪をひきやすく、長引きやすい。

気虚の特徴は、休むと少し楽になることです。減っているのですから、補えば戻る。逆に言えば、無理を重ねるほど深くなっていきます。

気滞は、張って、詰まります

気滞は、流れが止まっている状態です。

喉やみぞおちに、何かがつかえた感じがする。飲み込めるし、検査でも異常はないのに、そこに何かある気がする。東洋医学では古くからこの感覚を、梅の種が喉にあるようだという言い方で表してきました。

お腹が張る。ゲップやため息が多くなる。イライラしたかと思えば、急にふさぎ込む。症状の出る場所が日によって変わる。そして何より、緊張したり気を遣ったりした後に、はっきり強くなる。

気滞の特徴は、動くと楽になることです。散歩に出た、深呼吸をした、大きなため息が出た。そのあと少し楽になったなら、詰まっていたものが動いた合図と考えます。

見分けるための、ひとつの問い

迷ったときは、こう自分に聞いてみてください。

「休むと楽になるか。それとも、動くと楽になるか」

休んで楽になるなら気虚に、動いて楽になるなら気滞に近いと考えられます。もちろん例外もありますし、両方が重なっていることも珍しくありません。それでも、方向を決める手がかりにはなります。

漢方の知恵:補うのか、流すのか

気虚と気滞では、考える方向が正反対になります。

気が足りない側でよく名前の挙がるのが、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。名前の「中」はお腹のあたりを指し、「益気」は気を増やすという意味です。つまり、お腹の力を立て直して気を増やす、という考え方が名前そのものに入っています。

この処方の中心にいるのが黄耆(おうぎ)という生薬です。気を補い、体の表面を守る働きを担うとされ、疲れやすさや汗のかきやすさが話題になる場面でよく登場します。同じく人参(にんじん)も、気を補う側の代表格です。

一方、気が滞っている側で登場するのが、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)です。喉のつかえ感が相談の中心にあるとき、名前の挙がることが多い処方です。半夏(はんげ)、厚朴(こうぼく)、蘇葉(そよう)といった、詰まりを動かす方向の生薬で組まれています。

ここで大切なのは、気滞に補う処方を使っても、詰まりは動かないということです。渋滞している道路に車を増やしても、流れはよくなりません。逆に、気虚に流す処方ばかりを使えば、もともと少ない気をさらに使ってしまうことになります。

同じ「元気が出ない」でも、方向を取り違えると噛み合わない。ここが、漢方が体質を見る理由のひとつです。

※漢方薬は体質(証)や症状によって、合うものが一人ひとり異なります。ご自身に合った漢方薬を選ぶためには、自己判断をなさらず、必ず漢方に詳しい薬剤師や医師にご相談ください。また、症状が強い場合や長く続く場合は、まず医療機関を受診してください。

今日の小さな養生:気虚には休息を、気滞には呼吸を

昨日のチェックで気虚に近かった方は、まず削ることを考えてみてください。

気を増やす近道はありません。減らさないことが先です。夜更かしを一日だけやめる、予定を一つ断る、冷たいものを一杯減らす。気は食べたものと呼吸から作られると考えられていますから、胃腸を冷やさないことも、そのまま気を守ることになります。

気滞に近かった方は、体を動かすほうへ。

長く息を吐くだけでも構いません。四つ数えて吸い、八つ数えて吐く。それを三回。ため息が出たら、我慢せずに出してください。ため息は気が動こうとしている合図であって、行儀の悪いことではありません。香りのよいもの、柑橘の皮や紫蘇の葉なども、昔から気を巡らせるとされてきました。

明日は、三つのうち二つめの「血」についてお話しします。足りない血虚(けっきょ)と、滞る瘀血(おけつ)。気とはまた違う信号が出てきます。

あなたの毎日が、少しでも元気で快適なものになりますように。

悠々漢方


📩 毎朝届く「朝の漢方1問」──無料で始める養生習慣

「漢方って難しそう」と思っていませんか?
悠々漢方のSubstackでは、毎朝1問ずつ、暮らしに活かせる漢方の知恵をお届けしています。
今ご登録いただくと、「厳選30問・養生ドリル(PDF)」もプレゼント中。

無料で登録する

悠々漢方のほかの活動

🌿 二十四節気と漢方(季節の養生ガイド)

📚 Kindle書籍(電子書籍シリーズ)

😊 LINEスタンプ


いいなと思ったら応援しよう!

悠々漢方 記事が参考になりましたら、チップで応援いただけると励みになります。活動を応援してくださる方、チップでのサポートをお願いします。ご支援いただけると幸いです🌿