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人参湯で、冷えたお腹のかまどを立て直す──四つの生薬が担う、それぞれの役割

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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。

今週は「夏の冷えと胃腸」をテーマにお話ししています。

月曜日には、お腹の中には小さな「かまど」があること。そして冷たい飲み物を毎日たくさん流し込むと、そのかまどに水をかけ続けるようなことになる、というお話をしました。

昨日は、そのかまどを温める生薬として乾姜(かんきょう)をご紹介しました。焚きつけの小枝のような生姜(しょうきょう)に対して、乾姜は炭のように、じんわりと奥を長く温めていく存在でしたね。

今日は、その乾姜が主役の一人を務める処方、人参湯(にんじんとう)そのものを見ていきます。

かまどが弱ったとき、何が起きていたか

もう一度、月曜日の話を思い出してみましょう。かまどに水をかけ続けると、こうなるとお話ししました。

薪は湿り、火は小さくなり、やがて煙ばかりが出て、うまく煮炊きができなくなる。

ここには実は、三つの別々の問題が並んでいます。

一つめは、薪が湿ってしまったこと。つまり、余分な水が居座っている状態です。二つめは、火そのものが小さくなったこと。温める力が落ちています。そして三つめは、そもそも燃やすものが足りなくなっていること。エネルギーの不足です。

冷えて弱ったお腹を立て直すには、この三つを別々に手当てする必要があります。水を掻き出す。火を焚き直す。燃料を運び込む。

人参湯という処方は、まさにこの三つを、それぞれ担当する生薬で受け持っています。

四人の職人たち

人参湯は、たった四つの生薬でできています。漢方の処方としては、かなり少ない構成です。だからこそ、それぞれの役割がはっきり見えます。

人参(にんじん)は、燃料を運び込む係です。身体の元気そのものを補い、気力を高めると考えられてきました。かまどにくべる薪を、外から抱えて持ってくる職人だと思ってください。ちなみにこの人参は、サラダに入っているあのオレンジ色の人参ではなく、オタネニンジンという別の植物です。

乾姜(かんきょう)は、火を焚く係です。昨日ご紹介したとおり、身体の奥をじっくり温めていきます。運ばれてきた薪に、実際に火をつけていく職人です。

蒼朮(そうじゅつ)は、水を掻き出す係です。余分な水分をさばき、消化の働きを整えると考えられています。湿ってしまったかまどの床から、水を掻き出していく職人だと考えると分かりやすいでしょうか。

そして甘草(かんぞう)は、全体をまとめる親方のような存在です。ほかの生薬の働きを調和させる役割を担います。三人がばらばらに動くのではなく、一つのかまどを立て直すという同じ目的に向かうよう、まとめているわけです。

四人が四人とも、違う仕事をしている。けれど向かっている先は同じ。処方というものが「生薬の寄せ集め」ではなく「ひとつのチーム」だというのは、こういうことなのだと思います。

たった四つ、ということの意味

漢方の処方には、十種類以上の生薬が入っているものも珍しくありません。そのなかで四つというのは、ずいぶん少ない部類です。

構成が少ないと、それぞれの生薬が担う役割が前に出ます。人参湯の場合、「温める」という方向がまっすぐに立っている。あれこれ手を広げず、冷えて弱ったお腹という一点に向かっている処方だといえます。

だからこそ、冷たいものを摂りすぎた後の胃腸の不調が話題になるとき、この処方の名前がよく挙がるのです。

なお、昨日ご紹介した大建中湯(だいけんちゅうとう)にも乾姜が入っています。同じ乾姜を使いながら、組む相手が変われば、向かう先も変わっていく。生薬の組み合わせの妙が見えるところです。

※漢方薬は体質(証)や症状によって、合うものが一人ひとり異なります。ご自身に合った漢方薬を選ぶためには、自己判断をなさらず、必ず漢方に詳しい薬剤師や医師にご相談ください。

甘草について、ひとつだけ

先ほど「まとめ役の親方」とご紹介した甘草について、知っておいていただきたいことがあります。

甘草は、とても多くの漢方処方に含まれています。まとめ役として優秀なので、あちこちで声がかかるわけです。

そのため、複数の漢方薬を同時に飲んでいると、気づかないうちに甘草を重ねて摂っていることがあります。かぜ薬や胃腸薬などに含まれている場合もあります。

これは「危ないから飲まないで」という話ではありません。ただ、いくつかの薬を併用するときには、薬剤師さんに手元の薬をすべて見てもらうことが大切だ、ということです。お薬手帳が役に立つのは、まさにこういう場面です。

今日の小さな養生:立て直す前に、水を止める

処方の話をしてきましたが、今日の養生はとてもシンプルです。

かまどを立て直す職人たちがどれほど優秀でも、水をかけ続けながらでは、火はなかなか戻りません。まず、水を止めること。

一日のうち、冷たい飲み物を一杯だけ温かいものに替える。氷を入れる習慣を、少しだけ減らしてみる。それだけで、職人たちの仕事はずいぶんやりやすくなります。

明日は、そのかまどが冷えているとき、身体がどんなふうにサインを出すのかを、もう少し細かく見ていきましょう。

あなたの毎日が、少しでも元気で快適なものになりますように。

悠々漢方


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