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「肝」は、めぐらせる係です──イライラ、目の疲れ、月経前の不調がつながる理由

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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。

昨日は、五臓(ごぞう)が臓器の名前ではなく、体の働きをまとめた五つの係だというお話をしました。今日はその一つめ、「肝(かん)」です。

肝と聞くと、お酒と肝臓の話を思い浮かべる方が多いと思います。けれど東洋医学の肝は、それとはかなり違う顔をしています。

肝の仕事は、とどこおらせないこと

東洋医学の肝は、ひとことで言えば「めぐらせる係」です。

体の中を流れている気を、全身にゆきわたらせる。この働きを「疏泄(そせつ)」と呼びます。疏も泄も、通す、流すという意味の字です。

道路の交通を管理する係だと考えると、近くなります。信号が正しく変われば車は流れ、どこかで止まれば渋滞が起きる。肝が受け持っているのは、この「流れの管理」です。

そしてこの係は、もう一つ大切な仕事を持っています。感情の波を調えることです。

東洋医学では、感情と気の流れを切り離しません。腹が立てば気は上に昇り、思い悩めば気は結ぶ。感情が動けば、気の流れも動く。だから気の流れを管理する肝は、そのまま感情の管理も担うことになります。

肝が滞ると、どうなるか

肝の不調でいちばん多く語られるのが、流れが止まった状態です。「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼びます。

この状態では、こうしたことが起こります。

  • 理由もなくイライラする、あるいは急にふさぎ込む

  • 喉やみぞおちに、つかえた感じがある

  • お腹が張る、ゲップやため息が多い

  • 脇腹のあたりが張って苦しい

  • 症状の出る場所が、日によって変わる

  • 緊張やストレスの後に、はっきり強くなる

先週の「気滞(きたい)」を覚えていらっしゃる方は、よく似ていると思われたはずです。そのとおりで、気滞の多くは肝の滞りとして捉えられます。気血水の見方と五臓の見方は、別々の体系ではなく、同じ状態を違う角度から見たものなのです。

肝は、目と爪と筋にあらわれます

もう一つ、肝には覚えておくと役に立つ結びつきがあります。

東洋医学では、肝は目に開くと考えます。肝が養う血が足りなくなると、目が乾く、かすむ、疲れやすくなる。逆に、目を使いすぎると肝の血を消耗する。パソコンやスマートフォンを長時間見た日に、なぜかイライラしやすくなる。この経験は、この結びつきで説明できます。

爪と筋も肝の管轄です。爪が割れやすい、筋がつる、体がこわばる。これらも肝の状態を映していると考えます。

そして、女性の月経とも深く関わります。肝は血を蓄える働きも持つとされ、月経前の張りや気分の波が肝の滞りとして語られることが多いのは、このためです。

イライラ、目の疲れ、爪の脆さ、月経前の不調。一見ばらばらに見えるこれらが、東洋医学では一本の線でつながります。これが、五臓という見方の便利なところです。

漢方の知恵:流れをととのえる

肝の滞りに対しては、流れをととのえる方向で考えます。

よく名前の挙がる生薬が柴胡(さいこ)です。滞った気を動かす代表格とされ、多くの処方に組み込まれています。

処方では、抑肝散(よくかんさん)が知られています。名前のとおり、高ぶった肝を抑えるという考え方です。いらだちや神経の高ぶりが相談の中心にあるときに登場します。

加味逍遙散(かみしょうようさん)は、肝の滞りに熱や血の不足が重なった場面で名前の挙がる処方です。「逍遙」とは、あてもなくゆったり歩くという意味の言葉です。症状が日によって移り変わる、そのさまを表した名前だと言われています。

※漢方薬は体質(証)や症状によって、合うものが一人ひとり異なります。ご自身に合った漢方薬を選ぶためには、自己判断をなさらず、必ず漢方に詳しい薬剤師や医師にご相談ください。また、症状が強い場合や長く続く場合は、まず医療機関を受診してください。

今日の小さな養生:目を休め、息を吐く

肝に心当たりのある方へ、二つお伝えします。

一つめは、目を休めることです。肝の血は目で消耗します。一時間に一度、二十秒だけ遠くを見る。それだけで違います。夜、寝る前の画面を一つ減らせれば、なおよいと思います。

二つめは、長く息を吐くことです。滞った気は、吐く息とともに動きます。四つ数えて吸い、八つ数えて吐く。三回で構いません。ため息が出たなら、こらえずに出してください。ため息は、気が動こうとしている合図です。

香りも昔から肝を巡らせるとされてきました。柑橘の皮、紫蘇の葉、ミントなど。難しく考えず、心地よいと感じる香りで十分です。

明日は「心(しん)」を見ていきます。眠りと熱をあずかる係です。「胃腸の調子が悪いと眠れない」という経験の理由も、そこで見えてきます。

あなたの毎日が、少しでも元気で快適なものになりますように。

悠々漢方


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