立秋 ─ 暑さの底で、秋の支度がもう始まっている
🍃 はじめに
皆さん、こんにちは。悠々漢方です。
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「まだこんなに暑いのに、もう秋なんて」──立秋という言葉を聞いて、そう思われた方も多いのではないでしょうか。実際、この時期は一年でもっとも暑い盛りです。それでも東洋医学は、この日を境に体の内側では季節が入れ替わり始めている、と考えます。そして「なんだか疲れが抜けない」「食欲が戻らない」という声が増えてくるのも、ちょうどこの頃です。今回は、2026年8月7日に訪れる「立秋(りっしゅう)」と、暑さの底で始めておきたい秋の支度についてお届けします。
🌤️ 立秋とは?──暦と体感が、いちばんずれる日
立秋は二十四節気の十三番目で、2026年は8月7日にあたります。暦の上では、この日から秋が始まります。
とはいえ、外に出れば猛暑日が続いているはずです。二十四節気は古代中国の黄河流域の気候をもとに作られたものですから、日本の、それも現代の気候とはずれが出ます。立秋は、その中でもとくにずれの大きな節気だといえます。
けれど、まったく的外れというわけでもありません。この日を過ぎると、日の入りが目に見えて早くなります。朝晩の空気に、ほんのわずかですが乾いた気配が混じり始めます。空の高さや雲のかたちも、少しずつ変わっていきます。
東洋医学では、夏至(げし)に極まった陽気がここで下り坂に入り、代わりに陰が生まれ始める、と捉えます。暑さの絶頂にありながら、内側ではもう折り返している。立秋とは、そういう日です。

💨 なぜ立秋に、疲れが出るのか──夏に借りたもの
この時期に「疲れが抜けない」という声が増えるのには、理由があります。
東洋医学では、夏のあいだに体が失うものを二つに整理します。一つは「気(き)」、体を動かしている見えない力です。もう一つは「津液(しんえき)」、体を潤している水分のことです。
汗をかくとき、失われるのは水分だけではありません。汗と一緒に気も外へ漏れていく、と考えます。夏じゅう汗をかき続けた体は、気と潤いを両方とも減らしている。ちょうど、預金を少しずつ引き出し続けたような状態です。
それでも夏の盛りは、暑さそのものに気を取られて、消耗に気づきにくいものです。ところが立秋を過ぎ、朝晩がわずかに過ごしやすくなると、張り詰めていたものが緩みます。そのとき初めて、夏のあいだに積み上がった消耗が表に出てくる。これが、この時期の疲れの正体だと考えられています。
夏に借りたものを、秋の入り口で返し始める。立秋の養生は、そういう性格を持っています。

🏦 返さないまま秋に入ると、どうなるか
体を一軒の家に例えるなら、いまは真夏の日差しに焼かれ続けて、蓄えも湿り気も減った状態です。
このまま何もせずに秋へ入ると、どうなるでしょうか。秋は空気が乾く季節です。乾いた季節に、潤いの足りない体で入っていけば、乾燥の影響をまともに受けることになります。喉が乾く、空咳が出る、肌がかゆくなる。いわゆる「秋バテ」と呼ばれる不調の多くは、この道筋で起こると考えられています。
そして気が足りない状態が続けば、風邪をひきやすくなり、治りきらないうちにまた次をもらう、ということも起こりやすくなります。

このコラム記事は医学的な診断・治療を目的としたものではありません。漢方の考え方に基づく一般的な健康情報としてご参照ください。
つまり立秋の養生は、いまの不調を楽にするためだけのものではありません。二か月先の自分のために、いま手を打っておくという性格のものです。
🍵 立秋の養生を貫く3つの合言葉「補・潤・備」
立秋の養生は、「補・潤・備」という3つの合言葉で整理すると分かりやすくなります。
「補(ほ)」は、夏に減った気を補い始めること。「潤(じゅん)」は、失われた潤いを取り戻し、来たる乾燥期に備えること。そして「備(び)」は、暑さ対策をまだ緩めずに続けながら、少しずつ秋仕様へ切り替えていくことです。
まだ暑いのに秋の支度をする。この二重の構えが、立秋という節気の難しさであり、面白さでもあります。

🌿 秋の入り口を整える、立秋の3つの養生
1. 【食養生】気と潤いを、同時に補う
立秋の食養生では、冷ますことより「補うこと」に少しずつ軸を移していきます。
気を補う代表は、山芋、かぼちゃ、いんげん、鶏肉、米などです。どれも滋養があり、胃腸に負担をかけにくい食材とされてきました。夏のあいだ冷たいものを摂り続けて弱っている胃腸には、温かく、消化のよいものが向いています。
潤いを補うほうでは、白い食材が古くから知られています。れんこん、白きくらげ、梨、豆腐、豆乳、白ごま。東洋医学では、白い食材が秋の臓である「肺(はい)」を潤すと考えられてきました。梨をそのまま食べるのもよいですし、蒸したり、はちみつを少し加えて煮たりすると、より潤す方向に働くと言われます。
冷たい飲み物は、まだ完全にやめる必要はありません。ただ、一日のうち一杯を常温か温かいものに替える。それだけで、弱った胃腸には十分な助けになります。

2. 【生活習慣】暑さ対策は続けつつ、朝晩だけ秋仕様に
まだ猛暑日が続く時期ですから、熱中症への警戒は緩めないでください。日中の外出は控え、水分と塩分をきちんと摂ることが最優先です。
そのうえで、朝晩だけ秋の支度を始めます。
夜、冷房の設定温度を一度だけ上げてみる。タオルケットを一枚足す。朝、窓を開けて外の空気を入れてみる。まだ暑いはずですが、日中とは違う質の空気が入ってくることに気づく日があります。
汗をかいたら、そのままにしないこと。濡れた衣類は体を冷やします。この時期の冷えは、秋になってから響いてきます。
そして、激しい運動はまだ控えめに。汗を大量にかくことは、気と潤いをさらに減らすことになります。散歩なら、日が傾いてからが心地よい季節に入ってきます。

3. 【心身の養生】早めに休み、乾きに先回りする
秋に向けての養生で、いちばん効くのは睡眠です。
陽が下り坂に入ったこの時期は、夜更かしの負担が夏よりも大きくなると考えます。いつもより十五分でよいので、早く布団に入ってみてください。気は、休んでいるあいだに少しずつ戻ります。
乾きへの備えも、いまから始められます。エアコンの効いた部屋は、思いのほか乾燥しています。喉が渇いてから飲むのではなく、こまめに口を湿らせるくらいの間隔で水を摂る。これは「潤」の養生の、いちばん身近な形です。

漢方では、体質によって用いられる処方も異なります。暑さで気と潤いの両方が減っているときには清暑益気湯(せいしょえっきとう)、気の消耗が前面に出ているときには補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、喉の乾きや空咳が気になるときには麦門冬湯(ばくもんどうとう)が、それぞれの状態に合わせて用いられることがあります。気になる方は、かかりつけの薬局や医療機関でご相談ください。
なお、強い頭痛や吐き気、めまい、体に力が入らないといった症状がある場合は、熱中症のサインであることもあります。涼しい場所で休んでも回復しないときは、ためらわず医療機関に相談してくださいね。

🌟 終わりに
立秋は、暦と体感がいちばん食い違う節気です。外はまだ真夏で、秋という言葉に実感が伴わない。それでも東洋医学は、この日から体の内側で季節が入れ替わり始めていると考えます。
夏に借りたものを、少しずつ返し始める。気を「補」い、潤いを「潤」し、暑さへの構えは緩めずに秋へ「備」える。この3つを、今日から少しだけ意識してみてください。
温かい汁物を一杯、梨をひとつ、いつもより十五分早い就寝。そんな小さな積み重ねが、二か月先の自分を助けてくれます。あなたの毎日が、少しでも元気で快適なものになりますように。悠々漢方でした。
今回ご紹介した「補・潤・備」のセルフケア、ぜひ今日から試してみてくださいね。
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