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「心」は、眠りと熱をあずかる係です──眠れない夜と、胃腸の意外な関係

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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。

五臓(ごぞう)の二つめ、「心(しん)」です。

心臓のことだろうと思われるかもしれません。血を全身に送り出すという点では、たしかに重なります。けれど東洋医学の心には、もう一つ大きな役目があります。

心は、意識と眠りをあずかっています

東洋医学では、心が「神(しん)」を宿すと考えます。

神といっても、宗教的な意味ではありません。意識、思考、記憶、そして眠り。私たちが「心」という言葉で呼んでいるものに近い働きを指します。

つまり東洋医学の心は、血を送り出すポンプであると同時に、意識の座でもある。西洋医学が脳に割り振っている働きの一部を、東洋医学は心に置いているのです。

だから心の不調は、こういう形で現れます。

  • 寝つきが悪い、あるいは夜中に何度も目が覚める

  • 夢を多く見て、眠りが浅い

  • 動悸がする、胸がざわつく

  • 落ち着かない、集中が続かない

  • 顔が赤くなる、のぼせる

  • 舌の先が赤い

眠れないのは、心の血が足りないから

心の不調でよく語られるのが、心を養う血が足りない状態です。

心は血によって静められていると考えます。血が十分にあれば、意識は落ち着いた場所に収まる。けれど血が足りなくなると、意識は落ち着き先を失って、夜になっても静まらない。これが「眠れない」という状態の、東洋医学的な説明のひとつです。

先週、血には「心を落ち着ける役目がある」とお話ししました。その落ち着ける先が、この心なのです。

そして、ここで昨日の話につながります。

血はどこで作られるか。食べたものからです。そして食べたものを気血に変えるのは、五臓のうち「脾(ひ)」の仕事です。

つまり、脾が弱れば血が作れず、血が足りなければ心が静まらず、眠れなくなる。「胃腸の調子が悪いと、よく眠れない」という経験には、こういう道筋があると考えるわけです。

眠りの相談なのに、胃腸を整えることから始める。漢方のこうした遠回りに見える手順は、五臓のつながりを知ると腑に落ちてきます。

心には、熱がのぼりやすい

もう一つ、心は熱と関わります。

心は五行(ごぎょう)でいえば火にあたり、体の上のほうを受け持ちます。だから熱は上へ、心のほうへ昇りやすい。のぼせ、顔の赤み、口内炎、舌先の赤さ。こうしたものが心の熱として語られます。

夏に不調が出やすい方が多いのも、この季節が心に負担のかかる時期と考えられているためです。

漢方の知恵:眠りの相談で、胃腸から入る

心の不調に対しては、心を直接静めるだけでなく、血を作るところから考えることがあります。

帰脾湯(きひとう)は、その代表です。名前に「脾に帰す」とあるとおり、脾を立て直して血を作り、それによって心を養うという組み立てになっています。眠りの相談で胃腸から入るという考え方が、処方の名前そのものに表れています。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)は、眠りそのものに焦点を当てた処方です。中心となる生薬の酸棗仁(さんそうにん)は、サネブトナツメの種で、古くから眠りとの関わりで語られてきました。

※漢方薬は体質(証)や症状によって、合うものが一人ひとり異なります。ご自身に合った漢方薬を選ぶためには、自己判断をなさらず、必ず漢方に詳しい薬剤師や医師にご相談ください。また、眠れない状態が長く続く場合や、日中の生活に支障が出ている場合は、まず医療機関を受診してください。

今日の小さな養生:夜、頭を冷まし、お腹を温める

眠りが気になる方へ、二つお伝えします。

一つめは、寝る前の一時間、頭に熱を上げないことです。強い光、興奮する情報、熱い議論。どれも心に熱を集めます。照明を一段落とすだけでも変わります。

二つめは、お腹を温めることです。眠りの話でお腹、と思われるかもしれませんが、先ほどの道筋のとおりです。血を作るのは脾です。夜、冷たいものを控える、腹巻きを一枚足す。遠回りに見えて、実は近道かもしれません。

そして、眠れない夜に「眠らなければ」と思うほど、心は静まりません。目を閉じて横になっているだけでも体は休まります。そのくらいの構えでいるほうが、結果としてうまくいくことが多いようです。

明日は「脾(ひ)」を見ていきます。今日から二度も登場した、あの係です。悠々漢方でいちばん多く書いてきたテーマでもあります。

あなたの毎日が、少しでも元気で快適なものになりますように。

悠々漢方


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