「水」は、足りないより余ることで不調になります──水滞のサインと養生
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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。
三つめの「水(すい)」です。気(き)と血(けつ)を見てきましたが、水はこの季節、いちばん心当たりのある方が多いかもしれません。
水とは、体の中にある血以外の水分すべてを指します。汗も涙も、唾液も、関節を滑らかにする液も、みな水です。体を潤し、熱を冷ます役目を担っています。
そしてこの水には、気や血と少し違う特徴があります。
水は、足りないより、余ることで不調になります
気は足りなくなり、血も足りなくなる。けれど水は、日本で暮らしていると、余って滞るほうの不調で相談を受けることが多いようです。
理由は、この国の湿度にあると考えられています。梅雨があり、夏は蒸し、秋の長雨があり、冬は冷える。外の湿気が体に入り込みやすい環境です。加えて現代は、冷たい飲み物をいつでも手にできますし、冷房で汗をかく機会も減りました。入ってくる水は増え、出ていく道は細くなっている。
もちろん水が不足することもあります。乾燥した部屋で喉や肌が乾く、目が乾く。そうした状態は確かにあります。ただ今日は、この季節に多い「余って滞る」側を中心にお話しします。
この滞った状態を「水滞(すいたい)」と呼びます。「水毒(すいどく)」という言い方をすることもあります。毒という字が強く見えますが、悪いものが入ってきたという意味ではなく、本来あるべき水が、あるべきでない場所に溜まっているという意味です。

水が滞ると、重くなります
水滞のサインは、ひとことで言えば「重い」です。
体全体が重だるく、朝から鉛を背負っているようだ。頭が重い、締めつけられる。夕方になると足がむくみ、靴下の跡がくっきり残る。指輪がきつくなる。
そして、この季節らしいのが天気との関係です。雨が降る前に頭が痛くなる。低気圧が近づくと調子が落ちる。台風の日は起き上がれない。
なぜ天気で変わるのか。東洋医学では、体の中の水と、外の湿気や気圧は響き合うと考えます。外の湿度が上がれば、体の中の水も出ていきにくくなる。気圧が下がれば、内側の水が膨らむように動く。「雨の日に決まって不調が出る」という訴えは、気のせいではなく、水の巡りとして読み解ける現象なのです。
ほかにも、こうしたサインがあります。
めまいや、ふわふわとした浮遊感がある
吐き気がする、乗り物に酔いやすい
舌のふちに、歯の跡がついている
口の中がねばつく、あるいは水を飲んでも渇きが取れない
下痢や軟便になりやすい
関節がこわばる、動かしはじめが痛む
舌のふちの歯の跡は、自分で確かめられる手がかりです。鏡の前で舌を出してみてください。ふちに波打つような跡がついていたら、水が余っているサインと読むことがあります。

漢方の知恵:水は、減らすのではなく配り直す
水滞への考え方は、気や血と少し違います。
気は補うか流すか、血も補うか動かすか、でした。けれど水は、「減らす」というより「配り直す」という発想をします。
余っているところから、足りないところへ。溜まっている水を、体が使える形に戻していく。この考え方を表す言葉が「利水(りすい)」です。ただ水分を排出させるのではなく、偏りをならす、という意味合いを持っています。
この方向で最もよく名前の挙がるのが、五苓散(ごれいさん)です。沢瀉(たくしゃ)、蒼朮(そうじゅつ)、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)の五つで組まれています。頭痛、めまい、吐き気、むくみといった、水にまつわる訴えが重なる場面で話題にのぼります。
もうひとつ、真武湯(しんぶとう)があります。こちらは、体が冷えていて水を動かす力そのものが落ちている場面で名前が挙がる処方です。同じ水滞でも、温めながら捌くという方向になります。
同じ「むくむ」でも、余った水が問題なのか、それを動かす力が足りないのかで、考える方向が変わる。ここまで三日間見てきた「足りないのか、滞っているのか」という問いが、水でも同じように効いてきます。
※漢方薬は体質(証)や症状によって、合うものが一人ひとり異なります。ご自身に合った漢方薬を選ぶためには、自己判断をなさらず、必ず漢方に詳しい薬剤師や医師にご相談ください。また、症状が強い場合や長く続く場合は、まず医療機関を受診してください。むくみが急に強くなった場合や、息苦しさをともなう場合は、早めに受診してください。

今日の小さな養生:出す道を、ひとつ開ける
水滞に心当たりのある方へ。今日できることを三つ挙げます。どれか一つで構いません。
一つめは、汗をかく機会を作ることです。冷房の効いた部屋で一日を過ごすと、体は水を出す道を忘れてしまいます。湯船に十分つかる、少し早足で歩く。汗という出口を開けるだけで、巡りは変わります。
二つめは、冷たい飲み物を一杯だけ減らすことです。冷えは水を動かす力を弱めます。全部やめる必要はありません。一杯を常温か温かいものに替える。それだけで十分です。
三つめは、足首を回すことです。水は重力で下に溜まります。デスクワークの合間に、足首をぐるりと十回。ふくらはぎを動かすと、溜まった水が上へ戻りやすくなります。

明日は、ここまでの三日間を踏まえて、「いま自分はどれに近いのか」を見分ける手がかりを、一枚にまとめてお話しします。今週から読み始めた方にも、そこだけで通じるように書きますね。
あなたの毎日が、少しでも元気で快適なものになりますように。
悠々漢方
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