夢中になれる所属とは何か
「この会社に入った理由って、今とつながってる?」
若手社員とのキャリア面談で、そんな問いを投げかけた。
彼女は少し戸惑いながら、それでも自分の言葉で話してくれた。
「正直、最初はここじゃなくてもよかったかもしれません。でも……今は、この会社で働いてる自分が好きです」
それを聞いて、僕は少しホッとした。
彼女が言った「今は」という言葉に、すごくリアルな温度があるなと思った。
別の日、他のグループ会社で行われた理念研修に参加した。
ファシリテーターが参加者に問いかけていた。
「あなたは、いま所属している組織の理念を“自分の言葉”で説明できますか?」
この問いを聞いたとき、僕は「うん、語れる」と即答できた。
というより、僕自身が、ふだん社員にこの問いを投げている側の人間だ。
理念やビジョンを語ることを、上からの“刷り込み”にしないために。
誰かの言葉をなぞるのではなく、「自分にとっての意味」を見つけてもらうために。
だからこそ、この問いが持つ力と難しさを、よく知っている。
理念は“知っている”だけでは足りない。“自分の言葉で語れるかどうか”がすべてなのだ。
そう改めて、自分自身にも問い直すきっかけになった。
組織に所属するって、いったいどういうことなんだろう?
誰かに指示されて働くことでもなければ、理念を丸暗記することでもない。
僕はやっぱり、「夢中になれること」だと思う。
その組織でやっていることが、自分にとって“意味のあること”だと思える。
自分の価値観と、組織が大事にしていることが、どこかで重なっている。
だから、夢中になれる。迷いながらでも、前を向ける。
でも、ずっと夢中でいるのは難しい。
ときどき、「これってなんのためにやってるんだっけ?」と立ち止まる瞬間がある。
それは、自分の中の“芯”が少し変化したサインかもしれない。
かつて、僕も“所属する意味”を自分に言い聞かせていた。
「これは大事なんだ、これは大事なんだ」って、何度も心の中で唱えるように。
ある種の“呪文”みたいなものだったと思う。
でも、呪文だけじゃ続かない。
信じてた理念が、いつしかただの“ポスターの文字”になってしまうこともある。
そんなとき、自分の中で「組織と自分の関係性」を見直す必要がある。
僕の中にある理想の組織像は、「麦わらの一味」だ。
でも最近、ONE PIECEの最新話を読みながら、ロックス海賊団にも別の魅力を感じるようになってきた。
ロックスは「思想も秩序もない海賊団」と言われてきた。
でも、それぞれが“目的”を持ち、利害を共有していたからこそ、一時的にでも組織として成立していた。
仲間を信じていたわけじゃない。
ただ「目的のために集まった」。
一方、麦わらの一味は「仲間を信じている」けれど、各自が自分の“夢”を持っている。
つまり、“信頼”と“目的”が共存している組織。
この両者に共通しているのは、「誰も、言われて動いていない」ということだ。
自分の意志で、動いている。
それって、まさに僕が理想とする所属のかたちだ。
組織に“入る”ことがゴールじゃない。
入ったあとに、「この組織でどう生きるか?」を自分で考えること。
ときには「今の自分に合わなくなった」と感じることすら、自然なこと。
だから僕は、人事としても親としても、「これを大事にしてね」とは言いたくない。
「あなたが大事だと思うことを、大事にすればいい」
「そのうえで、この組織に所属する意味を感じられるなら、ここにいてほしい」
そう思っている。
若手との面談でも、そういう対話を意識している。
「続けること」よりも、「納得していること」。
「評価されること」よりも、「自分の価値基準を持っていること」。
だからこそ、僕は問い続けたい。
「あなたは、なぜこの組織に所属しているのか?」
「それは、今のあなたにとって意味があることか?」
そして、僕自身にも問い続けたい。
「この仕事に夢中になれているか?」
「組織の掲げる理念が、自分の言葉として語れるか?」
それが、組織に所属するということの“本質”なんじゃないかと思う。
家族も、会社も、きっと同じ。
無理に合わせる必要なんてない。
でも、自分の価値観と接点があると感じたら、その場所で生きていける。
僕は今日も、パパとして、そして人事として、ひとりの社員として——
組織の中で、自分の夢中を大切にしていきたいと思う。
そして、それを“自分の言葉”で語れる自分でありたい。
夜、朝陽(あさひ)と陽潤(はるん)を寝かしつけたあと、リビングで明日の保育園の持ち物チェックをしながら、ふと思った。
——この子たちにとって、「家族」ってどう映っているんだろう?
陽潤は、まだ言葉がつたなくて、でも最近「ぱぱ」となんとなく呼んでくれるようになった。
朝陽は、1年生になって、自分の意思を少しずつ強く持つようになってきた。
「どうしてこれやらなきゃいけないの?」
「今はこれをやりたいから、あとにする」
「パパはどう思うの?」
朝陽とは、そんな会話が少しずつ増えている。
僕はそのたびに、自分の“芯”を問われている気がする。
何を大切にしてるのか。
なんでそれを大切にしてるのか。
それは、どんな未来につながると信じてるのか。
会社でも、家庭でも、やってることは結局同じなのかもしれない。
組織であれ、家族であれ、「ここにいていい」と思える土台をつくること。
そのために、対話を繰り返し、信頼を積み上げていくこと。
でも、ひとつだけ会社と違うのは、親は“評価者”ではないということだ。
僕は、パパとして彼らの人生を評価しない。
ただ、見守る。
導くことはあっても、決めることはしない。
朝陽に「どうしてもやりたいこと」が出てきたら、たとえ僕の価値観とは少し違っても、応援したいと思ってる。
陽潤がその日、初めてできたことを「すごいなあ」と笑って受け止める時間に、誇りを感じてる。
所属とは、与えられるものじゃない。
信じられるから、所属できるんだ。
彼らが「この家族にいてよかった」と、心から思えるような毎日を、僕はつくっていきたい。
——会社でも、家庭でも。
「ここにいたい」と思える場所を、自分で選び、自分でつくっていけるように。
その背中を見せられるように、僕自身が、自分の言葉で生きていく。
「パパって、どうしてこの仕事してるの?」
「なんで毎朝早起きするの?」
——いつか、そんな質問が来たとき。
僕はちゃんと、自分の言葉で答えたいと思ってる。
#組織に所属するとは
#夢中になれる仕事
#理念と共感
#自分の言葉で生きる
#価値観の言語化
#人事の視点
#家庭もチーム
#パパのまなざし
#ONEPIECEから学ぶ
#湯鶴の物語
湯鶴の裏方より
このnoteでは、湯鶴というひとりのパパの日常をもとに、仕事・育児・人生にまつわる物語を綴っています。
無料物語では、子どもとの時間で考えたことや、仕事をする中で考えていることなど、毎日のなかにあるささやかな気づきを描いています。
でも実は——
誰にも言えなかったことや、少し勇気がいるようなことは、有料物語で綴っています。
湯鶴がこれまで向き合ってきた葛藤や選択。
その背景には、言葉にならなかった想いがあります。
僕は、湯鶴の“裏方”として、そのひとつひとつを記録してきました。
有料物語は1本100円。
ですが、マガジン(500円)を購読していただければ、これまでに公開された有料記事も、これから追加される物語もすべてお読みいただけます。
子どもを育てること。
働き続けること。
自分のままで在り続けること。
どれかひとつを選ぶのではなく、どれも大切にしていきたい。うまくできない日があっても、それでも今日を重ねていく。そんな湯鶴のまなざしと向き合いながら、言葉を編んでいます。
もしも、どこかで心に触れる瞬間があったなら、マガジンをのぞいていただけたら嬉しいです。
▼マガジンはこちら
▼前回の無料物語はこちら
スキを押してくださった方へ、湯鶴の言葉をひとつ、おみくじと共にお送りします。
たまたま出会ったようで、どこかで必要としていたかもしれないひとことを、そっと手渡せたらと思っています。
▼おみくじをつくった背景については、こちらにまとめました。
