正解のない組織に、芯を持つということ
「組織って、いろいろあるよね」
夜、娘の朝陽(あさひ)が眠ったあと、漫画『ONE PIECE』の新巻を読み進めていた。
いわずと知れた国民的漫画。僕は今でもずっと連載を追い続けている。その中には、実に多様な“組織”のかたちが描かれている。
読んでいて、いつも思うことがある。
——ああ、これは、組織づくりの教科書だな。
僕は人事の仕事をしている。
組織づくり、制度設計、人材育成、採用、評価、労務、総務など・・・人にまつわるあらゆることに関わってきた。
もちろん、正解なんてものはない。けれど、だからこそ、「何を正解とするか?」を自分の中で定義しておくことが、とても重要になる。
それは経営者にも、管理職にも、そして家族を持つひとりの大人としても、共通する問いだ。
ONE PIECEの世界には、さまざまな“組織”が登場する。
ルフィの麦わらの一味。
白ひげ海賊団。
黒ひげ海賊団。
ロックス海賊団。
赤髪海賊団。
海軍。
革命軍。
世界政府。
それぞれの組織には、トップの思想が強く表れている。
麦わらの一味は、まさに「個性の集合体」。誰ひとり、同じような人間はいない。でも、その中心にあるのは、ルフィの”信頼”だ。
「おれは信じてる」
何度となくルフィが口にするその言葉は、他の誰でもなく、自分が信じると決めた仲間を、疑わないという覚悟だ。
一方で、白ひげ海賊団は「家族」だ。
仲間を“息子”と呼び、全員に平等に愛を注ぐ。そこに強い上下関係はなく、「船長=親父」としての包容力が組織を支えている。
黒ひげ海賊団は、ある意味で最も“現代的な組織”かもしれない。
利害が一致すれば仲間になるが、信頼や情のようなものは二の次。目的のためには裏切りも辞さない。トップが持つカリスマではなく、“結果主義”が支配する世界。
ロックス海賊団は、まさに「力こそ正義」。
最強の海賊たちが集まった組織だが、そこには統制もルールもなく、互いのエゴがぶつかり合っていた。最終的に空中分解したのは、必然だったのだろう。
赤髪海賊団は、“信念”でつながっている。
無駄な争いを避ける理性と、強い矜持が同居する。シャンクスの圧倒的な人間力が、全体を緩やかに束ねている印象だ。
海軍や世界政府は、言うまでもなく「体制の象徴」だ。
秩序と法律、正義という名のもとに構築されたピラミッド組織。個よりも全体。現代社会にも通じる構造だ。
そして革命軍は、体制へのアンチテーゼとして生まれた“思想の組織”。
——何を壊し、何を創るのか。
思想や理想を掲げ、それに共鳴する者が集まるこの組織は、まさに「理念共感型」と言える。
こうして見渡すと、どの組織にもトップの思想や哲学が色濃く反映されていることがわかる。
ONE PIECEの世界は、ただの冒険漫画じゃない。
組織論、リーダー論、価値観論、そして人間関係論が、縦横無尽に張り巡らされている。
だから僕は、組織づくりに悩んだとき、ONE PIECEに立ち返るようにしている。
そして、最近はふと思うことがある。
リアルな世界においても、組織の強さは経営者の信念によって決まる部分が大きい。自分の会社も含めて、同じリソースや環境であっても、トップの思想次第で全く違う組織になる。
「何を大切にしているか」
「なぜそれをやるのか」
「この組織で何を実現したいのか」
——それが明確であるほど、人はそこに集い、力を発揮する。
逆に、その芯がなければ、どんな立派な制度や戦略があっても、組織は脆くなる。
僕が理想とするのは、やはり麦わらの一味だ。
「こうあってほしい」とか「この方向に行こう」と示すけれど、最終的にはそれぞれが自分の意志で進む。
誰かの犠牲の上に成り立つのではなく、全員が“自分の人生”を背負いながら、それでも同じ船に乗る覚悟を持っている。
だから、ルフィは命令しない。けれど、信じる。
「やれるか?」と聞かず、「やれると信じてる」と言う。
この“信頼のスタンス”が、僕の組織づくりの根幹にある。
そして、このスタンスは、家庭にも通じる。
ある日、娘の朝陽がこんなことを言った。
「パパって、なんでも知ってるよね」
少し照れくさい気持ちになりながら、僕は言った。
「そんなことないよ。でも、なんでも“知ろう”とはしてるかも」
——わからないことを、わからないままにしない。
——自分の頭で考える。
——答えがないときは、自分なりの“正解”を決める。
これは、仕事でも家庭でも変わらない。
家族もまた、一つの組織だ。
トップは誰か?と問われたら、答えはない。パパかもしれないし、ママかもしれない。子どもたちが大きくなれば、時に彼らが導いてくれることもある。
ただ一つ言えるのは、「どんな家族でありたいか?」というビジョンがあるかどうかが大切だということ。
我が家のビジョンは、こんな感じだ。
——自分の意志で動くことを大切にする。
——違いを尊重する。
——やりたいことに挑戦できる土台をつくる。
だから、叱るときもある。
でも、それは支配するためじゃない。
「君の人生を、君の足で歩けるように」
そのために、大人として、親として、背中で見せていきたいと思っている。
組織には、正解がない。
でも、正解がないからこそ、「どう在りたいか?」を明確にしておかないと、どこにもたどり着けない。
ONE PIECEの世界にあるのは、まさにその問いだ。
力で支配するのか?
思想でつなぐのか?
家族のような関係で結ぶのか?
結果だけを追い求めるのか?
どんな組織であっても、トップがその問いに向き合っているかどうかで、組織の“芯”が決まる。
そして、その芯があるからこそ、たとえ荒波に揉まれても、船は進み続けることができる。
家庭も、会社も、人生も、全部つながっている。
今日もまた、僕は朝陽と陽潤の寝顔を見ながら、自分がどんな“船長”で在りたいのかを、自分に問いかけている。
——いつか彼らが、自分の船を持つその日まで。
それまでは、僕が僕の“芯”を持って、進んでいこうと思う。
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湯鶴の裏方より
このnoteでは、湯鶴というひとりのパパの日常をもとに、仕事・育児・人生にまつわる物語を綴っています。
無料物語では、子どもとの時間で考えたことや、仕事をする中で考えていることなど、毎日のなかにあるささやかな気づきを描いています。
でも実は——
誰にも言えなかったことや、少し勇気がいるようなことは、有料物語で綴っています。
湯鶴がこれまで向き合ってきた葛藤や選択。
その背景には、言葉にならなかった想いがあります。
僕は、湯鶴の“裏方”として、そのひとつひとつを記録してきました。
有料物語は1本100円。
ですが、マガジン(500円)を購読していただければ、これまでに公開された有料記事も、これから追加される物語もすべてお読みいただけます。
子どもを育てること。
働き続けること。
自分のままで在り続けること。
どれかひとつを選ぶのではなく、どれも大切にしていきたい。うまくできない日があっても、それでも今日を重ねていく。そんな湯鶴のまなざしと向き合いながら、言葉を編んでいます。
もしも、どこかで心に触れる瞬間があったなら、マガジンをのぞいていただけたら嬉しいです。
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スキを押してくださった方へ、湯鶴の言葉をひとつ、おみくじと共にお送りします。
たまたま出会ったようで、どこかで必要としていたかもしれないひとことを、そっと手渡せたらと思っています。
▼おみくじをつくった背景については、こちらにまとめました。
