眠れない夜のからだの仕組みと、やさしい整え方
布団に入ったのに、頭だけが冴えている。
明日のことを考えると、かえって目が覚めてしまう。
時計を見ては「あと何時間しか眠れない」と、心の中で計算してしまう。
眠りというのは、「がんばって」つかまえにいくものではなく、からだとこころが「もう安心していいよ」と感じたときに、そっと訪れてくれるものなのです。
眠れない夜、からだの中で起きていること
私たちのからだには、自分の意思とは関係なく、24時間はたらき続けてくれている「自律神経」というしくみがあります。
自律神経には、アクセルの役割をする交感神経と、ブレーキの役割をする副交感神経があります。
日中、活動しているときはアクセルの交感神経が優位に。夜、休むときはブレーキの副交感神経が優位に。この切り替えがなめらかに起きると、私たちは自然と眠りに入っていけます。
ところが、心配ごとや緊張が続くと、交感神経が「見張り番」のまま、なかなか持ち場を離れてくれなくなります。
からだは布団の中にあるのに、内側ではまだ「まだ氣を抜いてはいけない」と、静かに警戒を続けている状態です。
このとき、コルチゾールというホルモンも関係してきます。コルチゾールは本来、朝に多く出て私たちを目覚めさせ、夜に向かって減っていくものです。けれど強いストレスが続くと、夜になっても下がりきらず、からだを覚醒させたままにしてしまうことがあります。
もうひとつ、眠りには深部体温という、からだの内側の温度が深く関わっています。人は、この内側の温度がゆるやかに下がっていくときに、眠気を感じるようにできています。手足がぽかぽかしてくるのは、からだの奥の熱を外に逃がして、眠る準備をしているサインなのです。
眠れない夜というのは、からだが「まだ安全ではないかもしれない」と感じていて、眠りのスイッチが入りにくくなっている状態、とも言えます。
からだは一生懸命、守ろうとしてくれている。
その結果として、眠りが遠ざかっている状態でもあります。


「眠らなきゃ」が、眠りを遠ざける
ここからは、こころの側のお話です。
眠れない夜、多くの人がこう考えます。
「早く眠らなきゃ」 「明日にひびくのに」 「どうして眠れないんだろう」
とても自然な思いです。けれど、じつは眠りには、ちょっと切ない逆説があります。
眠ろうと努力すればするほど、眠りは遠ざかってしまうのです。

「眠らなきゃ」という思いは、こころにとっては小さな緊張です。
緊張はアクセルの交感神経を刺激しますから、眠ろうとがんばるほど、からだは逆に目を覚ましてしまう。
まるで、リラックスしようと力を込めているような、あべこべな状態になってしまうのですね。
さらに、時計を見て「あと5時間しか眠れない」と数えはじめると、こころは焦りでいっぱいになります。
眠れない時間そのものよりも、「眠れないことを心配する時間」のほうが、私たちを疲れさせてしまうことも少なくありません。
そして、いちばんつらいのは、眠れない自分を、責めてしまうことです。
「またダメだった」 「こんなことでどうするんだろう」
そんなふうに自分を責める夜は、こころが二重に疲れてしまいます。
眠れないことに加えて、眠れない自分を裁く痛みまで、抱えることになるからです。
だからどうか、今夜だけでも、その裁きを一度おろしてみてくださいね。
眠れないのは、あなたのせいではないのですから。
眠れない夜の、やさしい整え方
それでは、ここからは、からだとこころをそっと休ませてあげるための工夫を、いくつかお話しします。
「しなければ」ではなく、「してもいい」くらいの、軽い氣持ちで受け取ってくださいね。
◯ からだの奥の熱を、やさしく逃がしてあげる
眠る1時間半ほど前に、ぬるめのお湯にゆっくり浸かってみてください。
いったん温まったからだが、そのあと少しずつ冷めていく…その下り坂で、眠気は訪れやすくなります。
熱すぎるお湯は逆に目が覚めてしまうので、「ほっとする」くらいの温度がちょうどよいです。
◯ 光と、少しだけ距離をとる
夜のスマートフォンの光は、からだに「まだ昼だよ」と勘違いさせてしまいます。眠る前の時間は、部屋の明かりを少し落として、画面からもそっと離れてみましょう。
暗さは、からだにとって「もう休んでいい」という合図になります。
◯ 息を「吐く」ことに、意識を向ける
布団の中でできる、いちばんやさしい方法です。
大きく吸おうとしなくて大丈夫です。ただ、吐く息を、吸う息より長くしてみてください。ゆっくり、ゆっくり、細く長く吐いていく。
息を吐くとき、私たちのからだはブレーキの副交感神経が優位になります。長く吐くことは、からだに「もう安心していいよ」と伝えてあげる、いちばん素朴で確かな方法なのです。
◯ 「眠ること」を、今夜の目標から外してみる
そして、これがいちばん大切かもしれません。
どうしても眠れない夜は、「眠る」という目標を、いったん手放してしまっていいのです。
眠れないなら、目を閉じて、ただ横になって、からだを休めているだけでいい。眠らなくても、静かに横たわっているだけで、からだはちゃんと回復しています。

「眠れない夜は、眠ること以外の目標に切り替えていい」という許可を自分で出してあげることも大切です。「〜しなければ」ではなく「〜してもいい」
例えば、「眠らなきゃ」を「休めていればいい」に切り替えるだけで、こころの緊張は、ふっとゆるみます。
そしてその緊張がゆるんだ先に、眠りは、あなたが気づかないうちにそっと訪れてくれることが多いのです。

おわりに
今夜、もし眠れなかったとしても。
からだは、ちゃんと休もうとしています。
こころは、ちゃんとがんばってきました。
眠れない夜は、それだけ多くのものを、あなたが背負ってきた証でもあります。
眠れない自分を責めず、目を閉じて、長く息を吐いて、「今日も一日、おつかれさま」と、自分にそっと声をかけてあげてくださいね。
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