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ずっと謝り続けている人間関係   「すみません」の奥にある、存在することへの罪悪感


「すみません」

その言葉が、口癖だった。

朝、出勤して「すみません、おはようございます」。
誰かに話しかけるとき「すみません、ちょっといいですか」。
お礼を言う場面でも「すみません、ありがとうございます」。
何も悪いことをしていないのに「すみません、すみません」。

周囲の人は最初、礼儀正しい人だなと思う。
でもしばらくすると、少しだけ違和感を覚えはじめる。

——この人は、なぜこんなにも謝るのだろう。

「謝る」ことで居場所を確保する

過剰に謝罪を繰り返す人のなかには、謝ることでしか人との関係を保てないと感じている方がいます。

「先に謝っておけば、怒られない」 「自分が悪いことにしておけば、場が収まる」 「相手の機嫌を損ねる前に、頭を下げておこう」

これは単なるクセではありません。 幼い頃から積み重ねてきた、生き延びるための戦略なのです。

相手の怒りや不満を事前に鎮めるために、自分を小さくして差し出す行為。それは、子どもが不安定な養育環境のなかで身につけた、精一杯の自己防衛でもあります。

「存在していること」が申し訳ない

過剰な謝罪の根っこには、もっと深い感覚が横たわっていることがあります。

それは、「自分がここにいること自体が迷惑なのではないか」という感覚。

存在することへの罪悪感、と言ってもいいかもしれません。

幼少期に、こんな経験を重ねてきた人がいます。

「あなたがいなければ楽なのに」と言われた。
泣いたら「うるさい」と突き放された。
甘えたら「いい加減にして」と拒絶された。
自分の気持ちを言うと、家の空氣が凍りついた。

こうした体験が繰り返されると、子どもの心にはひとつの信念が刻まれます。

「自分の存在は、誰かにとって負担なんだ」

この信念は、大人になっても静かに生き続けます。誰かと親しくなりかけると不安になる。好意を向けられると居心地が悪い。自分の意見を言うことが、相手への加害のように感じられる。

だから、謝る。

ここにいてごめんなさい。 あなたの時間を使ってごめんなさい。 迷惑をかけてごめんなさい。

その「すみません」は、謝罪ではなく、存在の許可を求める言葉ともいえます。

「いい人」の鎧の内側

過剰に謝る人は、しばしば周囲から「いい人」「優しい人」「気遣いができる人」と評されます。

でもその「いい人」は、本人が選び取ったものではないかもしれません。

「いい人でいなければ、ここにいてはいけない」

そう信じるしかなかった子どもの頃の自分が、今もなお大人の自分を動かしている。それは防衛機制のひとつであり、インナーチャイルドが必死に握りしめている生存戦略でもあります。

看護の現場でも、カウンセリングの場でも、こうした方にお会いすることがあります。「大丈夫です、すみません」という言葉がとても多い。ご自身の苦しさを語ることすら「申し訳ない」と感じてしまう。

その姿を見るたびに、思うのです。

この方は、ずっとずっと、自分の氣持ちよりも相手の氣持ちを優先してきたのだな、と。

「すみません」を「ありがとう」に

よく「すみませんを、ありがとうに変えましょう」というアドバイスを耳にします。

それは間違いではないけれど、少しだけ注意が必要です。

過剰な謝罪が幼少期の傷つきから来ている場合、表面的な言葉の置き換えだけでは根本は変わりません。むしろ「すみませんと言ってはいけない」と自分を制限することが、新たな抑圧になってしまうこともあります。

大切なのは、言葉を変えることではなく、

「自分は謝らなくても、ここにいていいんだ」と感じられるようになること

それは一朝一夕には叶いません。長い年月をかけて刻まれた信念は、長い時間をかけて、少しずつ書き換えていくものだから。

あなたは、謝らなくていい

もしこの記事を読んで、ドキッとした方がいたら。

あなたが「すみません」と言い続けてきたのは、あなたが弱いからではありません。 それは、あなたがずっと一生懸命、周りとの関係を守ろうとしてきた証です。

でも、もうそろそろ、その鎧を少しだけ緩めてもいいのかもしれません。

「すみません」と言いたくなったとき、ほんの一瞬だけ立ち止まってみてください。

今、私は本当に何か悪いことをしたのかな。
それとも、ここにいることを許してほしいだけなのかな。


あなたは、存在しているだけで、誰かに謝る必要なんてないのです。
ここにいていい。
あなたのままで、いていい。


公認心理師・看護師として、心とからだの両面から「あなたがあなたでいること」を応援しています。



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