一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第4章:開花期|2020年〜2021年(後編)
本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第4章の後編です。
前編の記事は以下のリンクをご覧ください。
インタビューシリーズ第4章の後編にあたる今回は、一般社団法人ポリネが立ち上がったことをきっかけに始まった「ライトハウス」……BowLとポリネの2法人が全体のパーパスや方向性を共有するための場の実践についてや、ライトハウスで醸成された文化を広報やデザインに落とし込んでいったプロセスについて伺いました。



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ライトハウスの本格始動
ライトハウスの背景
―一連のお話を伺って、BowLの変化の最先端を走って、その制度設計にも関わり続けてきたまっきーの葛藤や試行錯誤が感じられました。
まっきー自身の変化もそうですが、ポリネ立ち上げをきっかけにBowL全体として起こった大きな出来事は何かあったのでしょうか?
まっきー:
一番大きいのは「ライトハウス」、そして「灯火の対話」が生まれたことですね。
ライトハウスはポリネ設立をきっかけに生まれた、BowL、ポリネの2法人が全体のパーパスや方向性を共有するための場です。
BowLとポリネは主従関係はなく、独立して動いていく存在です。うつ病を生まない健康なチームが社会に広がるようにBowLは人々の器として生まれ、ポリネは受粉をめざしていくという共有する世界観から生まれました。
そこで、両者が迷うことなくパーパスに向かっていけるように、と設けるよう意図した場がライトハウスでした。
ライトハウスとは灯台。船が、安全かつ効率的に航行するためのサポートを行う拠点という意味が含まれています。

メンバーは全体を見ていくニカさん、二つの会社のお金を見る財務担当だった眞謝さん、BowL JoBから鉢嶺さん、BowL beから大田さん、ポリネからは僕という5名でスタートしました。
いわゆる組織のコアメンバーが集い、コアチームとして意図や起点を共有し、今後の方向性を確認しあう場です。
なんらかの決定機関になるとホラクラシーの意味がなくなってしまうので、ソース原理における組織のソースの思い描くフィールドの輪郭を明確にし、それをわかちあう場という位置付けと捉えていました。
思えば僕は、この頃から僕はBowLのサブソースであるという自覚がありましたね。
ソース原理(Source Principle)は、イギリス人コーチ、コンサルタントであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)が提唱した、人の創造性の源泉と、人と人の創造的なコラボレーションに関する知見の体系です。
起業家やビジネスマンが夢やビジョンを語った後、具体的なお金の話をすると途端に創造性を失ったり、非合理な意思決定を行ってしまう様子を眺めてきたピーターは、お金に対する内面の投影を診断し、介入するマネーワーク(moneywork)を開発し、その最中でソース原理も生まれました。
思い描いたアイデアを実現するために一歩踏み出した時、その人はなんらかのリスクを負い、その活動の創造性の源の役割・ソースになるという考え方をソース原理では紹介しています。サブソースとは、ソースの創造性に対してリスペクトを持ちつつ共感し、ソースが担う役割の一部を自ら担うようになった存在です。
国内における初めての体系的なソース原理に関する解説書であるトム・ニクソン「すべては1人から始まる」(英治出版)は、日本の人事部HRアワード2021で入賞するなど、ビジネスの領域において注目を集めました。
ニカさん:
ライトハウスが始まって、俺だけが照らさなくていい。みんなが照らしてると感じられるようになったね。
まっきー:
組織のパーパス、方向性を共有する上で大事になる守り人的な存在が2種類あると考えています。
1つは、パーパスキーパー。もう1つは、カルチャーキーパーです。
ソースが周波数として捉える価値観やビジョン、これからの方向性についてみんなの元に下ろしてきて、それを現実化する場所。ソースを中心としたメンバーが加わってきて、パーパスを現実化するイメージを共有する場所。こういった場所が当時のBowL、ポリネには必要でした。これらの場を準備し、保持するのがパーパスキーパーです。
また、パーパスだけではなく組織文化、カルチャーも重要です。
BowLらしいカルチャーを実際の支援現場や仕事に落とし込む役割も重要で、当初ライトハウスに集まった5名はまさにこのカルチャーキーパーたる役割を担ってほしいメンバーでした。
ライトハウスは、パーパスと組織文化をわかちあい、チームへ伝えていくための対話の場にもなっている気がします。
ニカさん:
パーパスや組織文化に関するフィールドの境界線を守るのが、ソースたる私の役割ですね。
何をしているのか?
―ライトハウスでは、具体的にどのようなことが話されているのでしょうか?
まっきー:
ライトハウスで最近扱われたアジェンダに「BowLの自立支援」がありますね。

BowLでは一人ひとりが力を持った存在と考えており、研修生として受け入れることになる一時的に鬱になってる人に対しても、手取り足取り支援しているわけではありません。
BowLのスタッフ一人ひとりだけでなく、研修生もまた、自分のいる場に対して役割を持って、自分もこの場を共につくる一員であるという共同体感覚を持つことを大切にしています。例えば復職先の職場とのやりとりに一つとっても、研修生主体で行う方針としてきました。
ただ、ある時、復職先の職場で不具合があったのか、BowLのスタッフが職場の人事に呼び出されて「なぜ支援スタッフは毎月訪問してくれないのですか?」「BowLは研修生の対応について、職場に任せっきりではないか」と伝えられたことがありました。
その職場に通っていた研修生の了解のもと、職場とのやりとりについて自分で考え、行動できるように支援を行っていたのですが、結果的に人事からこのような指摘を受けたわけです。
そして、呼び出されたスタッフはその場で謝ったのですが、この対応はBowLっぽくない対応です。
この謝罪対応は「研修生は弱い立場であり、BowLはその方をサポートすることで、職場に受け入れてもらう存在である」という無意識レベルで縦の関係性を強化することになり、その構造から抜け出せなくなることを助長する可能性があると考えるからです。
この場合、どういう支援を行うべきだったか?これから、どのような対応を行っていけば良いか?
このようなことがアジェンダとして扱われ、じっくりと対話を重ねました。
大切にしていること
―ニカさんが社内共有ツールで発信していたある課題についての向き合い方や、BowLとして大切にしたいあり方について、より具体的なシチュエーションを扱って対話している場、という感じなのですね。
まっきー:
ライトハウスで大切にしているのは、シェアされていることを大事に扱うことです。
あるテーマをシェアしたいと感じた人が話し合いの場でシェアするのですが、聴く側も「これはその人にとっても、組織にとっても重要なシェアだ」と心がけて聴く姿勢を大事にします。
扱われるものの多くが、答えのないものや扱うことが重要な意味を持つもの、BowL全体にとって価値のあるものです。
ニカさん:
ライトハウスをこうした場として意識して作っていくことで、参加するメンバーにも「この場は重要なものだ」と伝わっているように思います。
このライトハウスの対話の場を、ポリネが関わるクライアント企業のうち4社ほど、このような場づくりを提案し、伴走しています。
―ホラクラシーで一般的に行われるタクティカル・ミーティングやガバナンス・ミーティングとはまったく質感の異なるものですね。
ホラクラシー(Holacracy)は、HolacracyOne社のブライアン・ロバートソン氏らによって開発された組織運営法であり、組織のパーパス実現のために日々の仕事上で起こる違和感(テンション)を即座により良い組織構造や仕事の進捗へと繋げる仕組み・やり方が設計されています。
フレデリック・ラルー「ティール組織」(英治出版)の中でも事例として紹介されており、国内最大規模の事例としてGMOグローバルサイン・HD全体550名超での導入・実践などがあります。
ニカさん:
違いますね。むしろ、タクティカル・ミーティングやガバナンス・ミーティングがあったからこそ生まれた取り組みだと思います。
ライトハウスではこれらのミーティングとは異なり、一旦、普段自分が受け持っているロールを外して、個人として参加し語れる場です。このような場が組織には必要だな、と感じました。
まっきー:
ある人が声を出すと、言葉がその場に置かれる。ライトハウスでは、この感覚が特徴的ですね。
ニカさん:
組織における他者信頼や透明性が大事だと取り上げられることがありますが、ある人の発言の意味と意図、背景の透明性こそが大事なものです。
ライトハウスではそれらが共有され、自然と信頼性に繋がっていくような感覚です。このようなプロセスを共有する場ですね。
まっきー:
このプロセスを経ると、合意形成という枠組みからも外れていく感じがします。
ニカさん:
あるプロジェクトの背景やプロセスを共有していれば、チームの関係性が壊れにくい気がしています。この視点は重要なポイントです。
あるプロジェクトが「これがきっかけに始まったんだ」と起点や意図が共有されることで、その後、アクションの方向性がずれた時に、相互にフィードバックを受け取りやすくなります。
ヒエラルキー組織の上層で決まった決定事項を現場にやらせることは、指示命令が起点となり、メンバーに受動的な姿勢を育んでしまいます。ではどうやったらメンバーが自分ごととして能動的に動き出すか?を探求した末に、ライトハウスが形作られていきました。
まっきー:
灯火の対話も、その後に始まりましたね。
―ここまでの話を伺うと、北米の先住民族が焚き火を囲んで座って対話をしていたという様子や、その様子を現代的なワークショップとして体系化したピースメイキング・サークル(peace Making Circle)がイメージとして浮かびました。
ニカさん:
灯火の対話も、私がビジョンクエストで体験した儀式のイメージが最初にあります。暗闇の中で焚き火を囲むイメージや、みんなで火に薪をくべていく、火を灯して受け渡していくようなイメージで実施していますね。
まっきー:
例えば、リワークにおいてメンバーそれぞれがニカさんから受け取っている姿勢があり、ニカさんはそれを信頼して、現場の仕事やそこで生じる意思決定をメンバーに委ねる。そんな流れが自然に生まれているなと。
これまでニカさんが僕が担っていた重要な意思決定がメンバーに継承されていくプロセスが、そこに明確にあると感じます。
―ちなみに、BowLでは合宿も行うとこれまでお話を伺ってきましたが、ライトハウスと合宿ではどういった違いがあるのでしょうか?
まっきー:
合宿の時はあるコアスタンスに近いテーマを1つに絞り対話します。2021年の合宿では、3日間ずっと「自己信頼」について探求していました。
時間かけても答えの出ないもので、よりビジョン的なものや現在の探求テーマといったトピックを扱っているように思います。
一方でライトハウスはもう少し具体的なテーマを扱っていますね。「これは、ライトハウスで話すべきもの」「これは、そうではないもの」といった区別も自然と行われるようになってきていますね。
ニカさん:
富士宮合宿ではずっと対話したけど、沖縄での星野リゾートで存分に遊ぶ合宿もやったね。
合宿はストイックなものだけではなく、BowLスタッフの福利厚生として、心身の静養と、明日の仕事の活力につながる機会としても活用することがあります。
現在に繋がるデザインへ
まっきー:
ここまでBowLの組織づくり・制度設計、ポリネ法人の立ち上げ、そしてライトハウスなどについて話してきましたが、これらの取り組みから組織内部が整ってくると、今度はそれを外へ表現していこうとさまざまなデザインの刷新プロジェクトが立ち上がりました。
2022年1月〜2月には、浦添の事業所のリノベーション、ロゴデザインの刷新、Webサイトのリニューアルなど、デザインがリニューアルされました。

企業に向けた新パンフレットも完成し、そこではメンタルへルス対策における0次予防から3次予防までのモデルで整理して紹介しています。BowLが考えるメンタルへルス対策における0次〜3次予防とは、以下のことを指します。
・0次予防=健康維持・健康増進
・1次予防=普及啓発・発症予防
・2次予防=早期発見・早期支援
・3次予防=疾病治療・再発予防

そして、BowLがサービスを提供する1次〜3次予防については以下の図のように整理しました。

2020年〜2021年を振り返って
―ありがとうございます。最後に、この2020〜2021年を振り返って、改めてどんな期間であったかを伺って、今回は場を閉じていきたいと思います。
まっきー:
蒔いていた種が芽吹き、花が咲いたなと感じます。
組織の中でカオスだったものから、どんどん形作られていってる。そんな印象がありますね。
2020年から2021年を追って見ていくと、自分の心持ちも楽になってる。これ以降、BowLの組織づくりに関しての懸念はなくなりました。
この期間に始まった報酬制度や、BowLらしいホラクラシーの運営、そしてライトハウスは、現在も継続しています。この時期に作られたシステムが更新され続けながら運用されているのです。
なお報酬制度は現在さらなるアップデートを構想しています。今回変更したい点は、RPはサークルリードとロールリード、ホラクラシキーパーの3者で対話しながら素案を作って、ライトハウスでその素案について対話する流れです。その場で特に反対意見無し(No Objection)であれば、それでまずやってみる予定です。
こんなふうに、どんどん意図してシステム化し、そして手放していってる感じ。そういう時期でしたね。
ニカさん:
ティール組織(英治出版)の中で紹介されてる絵があるじゃないですか。
ニカさん:
あの絵、好きなんですけどね。
樹が生えていて、そこに人が集っていて、空に星や太陽が輝いている……。
この時期を振り返ってみると、色々整理して、試行錯誤してきた中で、意図した3つの樹が出てきたような感じです。
ライトハウス、報酬制度、そしてBowL独自のホラクラシーという3つの樹です。
これらは今でも続いてるし、どんどん改善して良くなっていってるもんね。
そして芽生えてきた樹々にBowLメンバーがちゃんと加わってきている。
そうイメージした時、上の絵に近いなと感じました。
ライトハウスに関しては、今後、BowL独自の取り組みとして構造化した上で外へ発信していきたいですし、そもそもライトハウスではどんなことが起こっているのかをBowLメンバーと対話しながら理解を深めていきたいですね。
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次回、インタビューシリーズ第5章に続きます。
これまでに公開した一連の記事は、以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。
一般社団法人BowL、一般社団法人ポリネについての関連情報は、以下のリンクもご覧ください。
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