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一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第4章:開花期|2020年〜2021年(前編)

本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第四弾です。

2013年1月に創業された株式会社BowLは、沖縄県浦添市に拠点を置く、県内初のうつ病特化型のリワーク(復職・再就職)専門機関です。これまでに500名にのぼる方々の復職・再就職を実現されてきました。

うつに陥った方のサポートだけではなく、そもそもうつにならない社会づくりをめざすBowLは、新しい働き方・組織の作り方・制度設計を自社自ら積極的に挑戦し、BowL独自の「チームシップ経営」及びチーム、組織、経営支援アプローチを開発してきました。

2020年には、うつを発症させず、健康的に働ける組織づくりをポリネーション(他花受粉)していくことをめざし、一般社団法人ポリネを設立。ポリネでは、経営者・マネジメント層を起点に、人と組織がより健やかな状態へ変容していくための独自プログラムを提供されています。

さらに、株式会社という法人形態と諸制度が、BowLが志向する経営のあり方と乖離しているという点から一般社団法人BowLへの移行を決断。
2024年10月1日を以て一般社団法人BowLとして第二創業されました。

第4回となる今回は、荷川取佳樹さん(ニカさん)徳里政亮さん(まっきー)のお二人に、現在のBowLの「チームシップ経営」につながる哲学・制度づくり・事業づくりが花開いていく2020〜2021年あたりのBowLについて伺いました。

また、これまでに公開した記事は以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。


コロナ禍における対応

―本日もよろしくお願いします。今回は、2020〜2021年までの株式会社BowLについて伺っていきたいと思います。

まず、2020年1月には国内で初めてコロナウイルス感染者が確認され、以降、国内はコロナ禍と呼ばれる状態に突入します。コロナ禍において、BowLはどのように対応されていたのでしょうか?

まっきー:
コロナ禍については、BowLとしてはそれほど苦労することなく柔軟に対応できたように思います。

2018年12月以降、 BowLではホラクラシーを導入したことで、役職ではなく役割(ロール)ごとに権限を保有し、各ロールごとに意思決定を行う自律分散的な組織づくりを行ってきました。

ホラクラシー(Holacracy)は、HolacracyOne社のブライアン・ロバートソン氏らによって開発された組織運営法であり、組織のパーパス実現のために日々の仕事上で起こる違和感(テンション)を即座により良い組織構造や仕事の進捗へと繋げる仕組み・やり方が設計されています。

フレデリック・ラルー「ティール組織」(英治出版)の中でも事例として紹介されており、国内最大規模の事例としてGMOグローバルサイン・HD全体550名超での導入・実践などがあります。

また、コロナ禍以前から、BowLでは各自の状況を鑑みた上で互いに相談して休暇を決定する年休取得無制限制度の実施や、ニカさんや僕が葉山のセカンドハウスに滞在しつつZoomを活用したリモート会議を行うなど、コロナ禍における働き方を先取りするように実践していました。

そのため、いざ本格的にコロナ対応を迫られた時も、組織内で大きな混乱はなかったように思います。

ニカさんと共に葉山に滞在している際は、現在の一般社団法人ポリネで話されているような、いかに組織支援に入っていくか?について2人で議論していたり、この頃くらいから実際に企業の経営者との対話も始まっていますね。

コロナが本格的に広がり始めた2020年も売上を落とすことなく、黒字で終えることができました。

―それはすごいことですね!社会的な混乱も大きかったコロナ禍にあっても、BowLは本当に柔軟に環境の変化に適応しているように思います。

まっきー:
組織がそれまでの仕事のやり方に固執するのではなく、現在の状況に合わせるということを意識していました。

ニカさんのメッセージにあった「現状維持しようと固辞するのではなく、現状に合わせていこう。それが変化の本質」というのが、BowLの根底にありますね。

ある一人ひとりが、変わりつつある環境に対して現状維持をするのではなく、現状に合わせていくと、それが自然と変化するということです。

仕事を進める上で発生した歪み(テンション)を率直に表現し、それを次のアクションや施作に反映していくという、ホラクラシーの実践が活きたのかもしれませんね。

組織のOSのアップデート

2020年は守破離の破

―それでは、改めて2020〜2021年はBowLにとってどのような期間となったのでしょうか?

まっきー:
2020〜2021年は、BowLがめざす「人を人として大切に扱う会社を増やしていくこと」について、組織内部ではホラクラシーや社内制度の実験と改善、組織の外に向けては事業再編と一般社団法人設立という大きな出来事のあった時期でした。

また、リワーク支援においてはこれまで経験を積み重ねてきた集団支援だけでなく、個別支援の専門性を深めようという時期でもありました。

2018年12月のホラクラシー導入以降のBowLは、守破離の守としてひたすら型をやりまくる時期でした。そして2020年は守破離の破です。BowLという組織の根底、OS(オペレーションシステム)のアップデートが顕著になった時期だと思います。

ホラクラシーという型だけをやっていても、仲間たち一人ひとりに実践の中での実感や納得がなければ、自らBowLのパーパスに共鳴し、そこに向かって自律的に仕事に取り組んでいくことはできません。

「ティール組織」の文脈だと、自主経営(Self-Management)と全体性(Wholeness)、存在目的(Evolutionary Purpose)という3つのポイントがありますが、これらと照らし合わせてもさまざまな葛藤が組織内のあちこちで起こっていました。

コミュニケーションにおける葛藤

BowLのパーパスが明確でも、BowLに参画している個人のパーパスとの共鳴部分がわからなければ、日々の現場や仕事の具体に落として考えることができなかったりしますよね。

コミュニケーション一つ取っても、自主経営(Self-Management)と全体性(Wholeness)がなければ、一人ひとりがパーパスに向けて考え行動したり、相手の背景や事情を思いやりもって接することができません。

ですが、2020年以降は型を続けた中でBowL一人ひとりの仕事に対する視座が上がり、組織のOSのあちこちで違和感を感じて、それが顕在化するタイミングでした。

一個一個、仕事や組織の中で感じる違和感を抜き取って「ありたい姿って何だろう?」と考えたり、一個一個の事象を取りあげてありたい状態へチューニングするようなことを繰り返していて。

経営者側からは「何かアイデアや意見があれば声を出してほしい」と願っている一方で、現場では陰口を言ったり、言うべきタイミングで何も意見が出なかったり……といったように、現実は願ったものとは逆のものが現れる。

こういった課題を超えて、めざす組織のあり方を体現する必要がありました。

ニカさん:
私は2019年のビジョンクエストに参加して以来、BowLとしてやりたいことが明確になり、あり方が決まったので、迷いがないんですね。

そして、方向性を示す、メッセージを発信する、具体的に仕組みを変えていくなど、やればやるほどその意図が理解できずに、不安や不満の声を出す社員も現れてきました。

その声をそのままにしておくのではなく受け止め、含みながら理解を拡げていこうとすると、どうしても伝える情報量が増えていってしまった気がしますね。

まっきー:
当時はリードリンクメッセージという社内共有チャンネルがあったのですが、そこでニカさんはBowLのこれからの方向性や実施していきたい事業アイデア、支援の現場で発生した課題の捉え方、課題対処の方針に至るまで、さまざまなメッセージを発信していました。こちらは現在、ソースメッセージと名前を変えて続いていますね。

これらの発信は具体的な指示という訳ではなく提案であり、あるテーマに関して皆に考える機会を設ける問いかけでした。

例えば、僕が関わっていた給与テーブルの改訂に関して、質問に似た不満や非難のような、揚げ足取りのようなチャットがあがってきて、さらに僕もそれに呼応するように反応して……というようなやりとりがあった時、そのやりとりを見てニカさんが「このやりとりを見てどう感じる?」とヒートアップを中断するように取り上げたり。

ニカさん:
今、「揚げ足を取られてる」と話すあたり、まっきー自身も当時はうまく相手から受け取れてなかったね。

まっきー:
ホラクラシー実践のような型、フレームだけでは学べないところですね。

新しい組織文化やOSを実験していく上で対話は重要で、相互理解のためにあるはずだけど……当時のBowLは、うまく対話ができていなかったですね。

チャットでのやりとりもそうだし、相手の意見をまず受け取るという前提が成立していなかった。

こういう状況で、対話的に関わるにはどうあるべきか?を皆が冷静に考える必要がありました。

ニカさん:
感情的に反応してる人が多かったね。

まっきー:
「これまでずっと、ニカさんとまっきーで決めてきたでしょ?」と言う認識がチーム内で引きずられていたり……。

ニカさん:
「いや、自分たちで決めていいんだよ?」とこちらから投げかけてみても、決められなかったり。

まっきー:
「自分たちは意思決定の蚊帳の外で、含まれていない」、という認識がチームに漂っていましたね。

ニカさん:
「いや、みんなのことを含んで考えているんだよ?」とこちらも伝えるけど。

まっきー:
でも結局「自分たちのことを理解してくれない」という雰囲気というか、そういった膠着状態がありましたね。

賞与の制度設計における試行錯誤

―何か、皆さんそれぞれ感じた意見を述べることはできるし、意見は尊重される。そして、その後の意思決定も委ねられているのだけれど、いざリスクを取って意思決定するには尻込みが起きるような、そんな過渡期のジレンマが漂っている感じですね。

実際、その当時は何がそんなにフラストレーションを感じることがあったのでしょうか?

まっきー:
2019年度に実施していた賞与の仕組みが主なテーマでしたね。

当時、実施していたシェア給とコミット給という仕組みがあったのですが、この仕組みが不公平だという話が上がりました。

2019年度以前からも、BowLらしい報酬のあり方について試行錯誤してきました。年功序列制から経験年数制、投票制、平等制といった具合に、様々な制度を試してきましたが、それぞれに課題があり、全てのメンバーを満足させることは不可能に感じました。

ニカさん:
お金に関して、経営者が見るべき二つの視点のバランスがあります。

一つ目は、利益の分配を、いかにみんながストレスなく安心して働き続けられる状態に繋げていくか?

二つ目は、会社がきちんと回るための血液としてのお金をきっちり循環させていけるか?

利益創出は、事業を通して実現したいことを実現するために必須だと考えています。

そしてメンバーへの報酬は、人の貢献や喜び、感謝、豊かさが循環するような思想を大事にしたかったのです。

そういう背景の想いと意図があって、2019年度の賞与制度はシェア給とコミット給の2つの選択肢からなるチームワーク給制度という仕組みを実験的に始めた訳です。

まっきー:
シェア給はいわゆるベーシックインカム的な、安心と豊かな生活を得るための対価をシェアし合おうという方針から生まれた仕組みです。

コミット給は、事業の発展や、未来の投資へコミットする対価として設計された賞与制で、年度末の利益に応じて大きく変動する仕組みでした。

ニカさん:
福祉という利益が出にくい事業の性質ですので、コミット給はリスクがあり、より幅広さを求められるので、私からマッキーを含む3人をあえてアサインして、トライアルケースとしてチャレンジしてもらいました。3人もその覚悟で了承した上での決定です。

結果的にその給与制にした年度は黒字になり、コミット給の人はボーナスも上がったんだよね。

まっきー:
業績が上がったことでコミット給の3名は賞与もグンと上がってたのですが、賞与額だけ表面的に捉えると「ホラクラシー体制下になっても、権力構造のヒエラルキーや、特定の人たちへの特別扱いが残ってない?」と感じる人が出てきました。過去のトップダウン的な匂いが残っていると感じたのかもしれません。

結局、このチームワーク給制度も一年で見直すことになりました。

ニカさん:
現在に至るまでBowLはずっと実験をし続けてきている。そうすると、実験ばかりで嫌だという人も出てくるし、その人に強いることはできない。とはいっても、実験に対してイエスと言ってくれる人にはリスクが伴ってしまう。

まっきー:
こういう事象が他に行ったので、ランクの高い僕は次第に何も言えなくなっていって。物事の達成や推進に必要になるPower、互いの意見や姿勢、価値観の尊重や包摂に必要になるLoveだと捉えると、Powerが使えなくなっていきました。

こういった課題に向き合うために2020年2月Language of Spaces(ランゲージ・オブ・スペーシズ)シンビオティック・エンタープライズ™(共生型企業:Symbiotic Enterprise SE)というフレームワークを学び、テンションの取り扱い方やLoveとPowerについて向き合いました。

Language of Spaces(LoS:ランゲージ・オブ・スペーシズ)は、クリスティアーネ・ソイス=シェッラー氏が自身の欧州におけるホラクラシー(Holacracy)実践の経験から編み出した、テンションの扱いに関する内省のフレームワークです。

クリスティアーネは桑原香苗さんらが立ち上げたNexTreams合同会社とパートナーシップを結び、継続的に来日して日本人に自身の開発したフレームワークを紹介しています。

少し話が変わりますが、ナチュラル・ヒエラルキー(Natural Hierarchy)という表現がありますよね。

人間の作った役職や権力に紐づくヒエラルキーではなく、自然界に存在する食物連鎖のヒエラルキーや、森の樹々や植物の大きさ、それによって果たす役割の違いのようなヒエラルキーです。

そして、ナチュラル・ヒエラルキーは人の組織にも見ることができます。

人が作る組織でも、役職や権力とは別で、専門性の高さや経験差からくる自然な能力差や果たす役割の違いといった意味で、ナチュラル・ヒエラルキーは生まれうる。

2020年中くらいでこういった認識がチーム内で浸透し、少しずつ落ち着いていったんじゃないかなと思います。

人事やお金に関する権限は、システムに委ねていく。人と人が感情的な対立に巻き込まれるのではなく、みんなが納得できるシステムを作り上げ、それに則って対処していく。このプロセスが進んでいくことで、先のようなフラストレーションは減っていったんじゃないかと思います。

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次回、インタビューシリーズ第4章(中編)に続きます。


これまでに公開した一連の記事は、以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。

一般社団法人BowL一般社団法人ポリネについての関連情報は、以下のリンクもご覧ください。

県内初!民間のうつ病特化型リワーク施設「株式会社BowL」とは?|RYUKYU JOURNAL

ラジオ番組「BowLのチームシップ経営」がはじまりました。

BowLのリワーク説明動画|一般社団法人BowL


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