見出し画像

一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第4章:開花期|2020年〜2021年(中編)

本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第4章の中編です。

前編の記事は以下のリンクをご覧ください。

インタビューシリーズ第4章の中編にあたる今回は、BowLが実践するホラクラシーという組織運営法に合わせた給与・賞与制度づくりにおける試行錯誤と、社内ベンチャーとして成長しつつあったポリネが一般社団法人として独立するまでの葛藤などについて伺いました。

また、公開した記事は以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。


一般社団法人ポリネが生まれるまでの事業の変遷

―2020年10月には、株式会社BowLの事業から独立する形で一般社団法人ポリネが設立されます。ポリネ設立に至るまで、BowLの事業はどのような変遷を辿ってきたのでしょうか?

ニカさん:
2015年12月にオープンした首里事業所を2017年に閉じ、浦添の事業所に支援体制を一本化した後、かつての首里の事業所はメンタルヘルス不調の予防のための事業やプロジェクトを構想する場所として活用され始めました。

復職・再就職支援よりも前の段階、つまり「組織や労働者の健康維持のための研修や組織開発事業」により力を入れていくことで、そもそもメンタルヘルス不調に陥らない企業を社会に増やしていくこと。それが、BowL設立当初より考えていた構想でした。

首里で立ち上がったこのプロジェクトが、後のbowl +(ボウルプラス:沖縄発の企業官公庁向けの従業員支援プログラム(EAP)事業)に繋がっていき、この事業がポリネに引き継がれていきます。

まっきー:
ポリネとして独立するまでは、BowLの事業は大きく2つに整理されていました。

うつ病等のメンタル不調で休職・離職された方が復帰をめざすリワーク事業と、リワークでの当事者支援の経験をベースにした企業・官公庁向けの組織支援であるプラス事業の2つです。

《活動報告書》BowLレポート2017より

ニカさん:
ただ、首里の事業所を一旦閉じて以来、そのスペースをどうにか活かせないかとずっと内省し続けていました。

このタイミングでその事業所の半分をお世話になっている精神科医のドクターにお貸しすることとなり、残り半分をBowLが活用することとなりました。

この時、BowLに足りないのは何だろう?とドクターと対話をして、集団でのサポートや集団力動は強みだが、個別支援が弱いのではないか、とフィードバックをもらいました。

大人数での場としての支援、コミュニティとしての支援はBowLの強みである一方、1人ひとりや少人数の支援者で利用者・研修生の支援に当たるのが弱いのではないか、と。

そこで支援の中心を担うメンバーとも対話を続け、首里の事業所は浦添の事業所と差別化し、個別支援と小集団支援に特化した事業、BowL beとして再スタートすることに決めました。

集団での復職・再就職支援を行うBowL JoB、少人数での復職・再就職支援を行うBowL be、そして、企業・官公庁向けの組織支援を行う予防事業bowl+の3つの事業に集約されていきました。

そうしたらBowL beがハマったんです。

当初、利用者10名程度でスタートしたのですが、次第に集団支援を展開するBowL JoBを超える利用者数になり、最盛期には20名を超えるほどになりました。逆転現象が起こったんです。

―予想を超える反響があったのですね。BowL beについては2019年4月4日付の沖縄タイムス社会面でも掲載されていたようで、注目のほどが伺えます。

ニカさん:
もちろん浦添のBowL JoBも不調というわけではなく横ばいなのですが、首里の BowL beの方がよりBowLのめざす支援のあり方を理解して体現し始めていて、BowL JoB の中心メンバーも交えてミーティングの場を行うなどもしました。

最終的にBowL全体として価値観、前提、意図が合わないと、2つの事業所で自律分散的に運営することは難しいという結論になり、二事業所の統合を決めました。

組織づくり・制度設計について

ホラクラシー実践とBowL

―組織づくりや社内制度づくりに関して、2020〜2021年の頃で印象に残っていることは何でしょうか?

まっきー:
まず、ホラクラシーに関してはリードリンク・ニカさんの方針もあって、ファシリテーターとセクレタリーは半年一回の交代制を敷き、実際にやってもらうことで自分事化してもらっていました。

ホラクラシー(Holacracy)は、HolacracyOne社のブライアン・ロバートソン氏らによって開発された組織運営法であり、組織のパーパス実現のために日々の仕事上で起こる違和感(テンション)を即座により良い組織構造や仕事の進捗へと繋げる仕組み・やり方が設計されています。

フレデリック・ラルー「ティール組織」(英治出版)の中でも事例として紹介されており、国内最大規模の事例としてGMOグローバルサイン・HD全体550名超での導入・実践などがあります。

参加者でいるのと、実際に会議を運営していくファシリテーターやセクレタリーをやるのとでは、体験の質が全く違います。

実際にファシリテーターやセクレタリーを担ったメンバーは、ミーティング中のメンバーが居心地良く参加するために、気を配らなきゃいけない部分や言葉遣い、ファシリテーターとしての介入やミーティング準備など、体験から得られる学びは多かったと思います。

―BowLさんの「ホラクラシーチャット」を拝見すると、ホラクラシー定着ロールからホラクラシーキーパーロールに変わったマッキーだけではなく、会議に責任を担う他のメンバーからも参加者への促しなどが伺えますね。

まっきー:
おそらく、これは僕の次にファシリテーターに就任した二代目の方じゃないかな?

この頃には、ミーティングが終わるたびにその振り返りをするようになっていて、丁寧に学びを進めていく体制になっていました。

ホラクラシーの本を読めばやり方はわかるけど、具体的なテンションの扱い方やプロジェクトの書き方がズレてたらどうしよう?などの実践の疑問が残ります。そういう時に、「こうしてみたらどうだろう」と声かけをしたり。あとは、発言する際はロールの帽子を被って「ファシリテーター」として言ってみて、とか、フィードバックも行っていました。

先ほど、僕はLoveに振ってると話したけど、こんな風に影でみんなをサポートする役割を担っていましたね。

ファシリテーターロール三代目以降は、みんなそれぞれ慣れてやり方も覚えつつあって、自然とミーティング運営もできるようになっていったような気がします。

―チャットの中には、ミーティングの頻度をどうするかの試行錯誤の後や、マッキー以外のメンバーからの参加に対しての促し、参加しない場合の対応はこうしましょうなどのメッセージも見られますね。

ニカさん:
今は、そういう場が大事という認識がみんなにありますね。みんな、簡単に欠席しなくなった。仕事上の優先順位を自覚しています。

利用者の方の対応があって……という理由での欠席だったらみんながそうなり得るし、キリがなくなってしまう。

仕事上欠かせないタイミングはしっかり見極めた上で、プライベートを充実させるための休みのタイミングを選択できるようになった感じがある。

まっきー:
「私が休みの間、何かあったら構わず言ってくださいね」と声かけできるようになってきたことは、チームの文化としていいなと感じます。

―それは素敵ですね。自分が休むことで現場の仕事にどんな影響が出るかと、自分のプライベートの充実が損なわれない範囲のバランスを皆さんが考えて、判断されているのがわかります。

まっきー:
年休取得無制限の制度もありますが、それぞれがロール毎の調整や相談が行われており、仕事とプライベートのバランスを上手に取って休暇が取られていますね。

ニカさん:
休む時には「嘘をつかないで」というのを大事にしてる。自分の休みなんだから。

時間休を活用して髪を切るために午前だけ休むのも良いし、子どもの迎えに早めに切り上げるのも良い。

コンサートのチケットが取れたので行ってきます!でも良い。そういえば、最近、大田がチケット取れた!って喜んでたな。

まっきー:
あぁ!取れたんですね。今、なかなか取れないのに。

―そこ、そんなに驚くんですね(笑)仕事以外のそれぞれのあり方も尊重されている雰囲気が伝わってきました。

まっきー:
もう1つ、ホラクラシーについては2021年7月から、ロールリードと呼んでいるBowL独自のやり方を始めました。

BowL内の職務上の役割(ロール)が初期には40個ぐらい設定されたけど、なんだか細分化されすぎている感じがあって。そこで、ある程度大枠として統合されたロールの中により細分化された業務分担に当たるフォーカスを一人ひとりに充てていく方針としました。

そして、BowL全体のパーパス実現に向けて、ロールの方向性を見定めながらチームをまとめるロールリードという役割を独自に設けて、ロールリードが各フォーカスに対してメッセージを発信するようにしました。

ロールリードも別にリーダーというわけではありません。リードリンクのように向かうべき方向性をキャッチし、ロールメンバーに伝える役割というイメージです。

ホラクラシーのセオリー通りだと、上記のような状態になったロールはサブサークルとして独立して、そこでは全体のミーティングとはまた別でミーティングを設けるものだけど、この少人数でそれは非効率だなと考えました。

このように、リードリンクとロールリードが集うモデルができたことで、組織としての方向性をじっくり探求し、そこから全メンバーへ共有していくプロセスにアップデートされました。

この辺りからホラクラシーというより、それをよりBowL独自にアレンジしたボウルクラシーのような形式になってきていますね。

タクティカル・ミーティングも、シンク(sync)・ミーティングと呼び名を変え、チームが同期する重要性を大事にするなど、独自色がしだいに強くなってきました。

給与・賞与制度の改訂

―組織のOSをアップデートする、となったときに賞与の件で不公平感が出たという話がありましたが、報酬制度についてはいかがですか?

まっきー:
2020〜2021年の間で、僕にとって一番大きかったのが報酬制度の改訂ですね。これをやり終えたことで報酬決定がやっと属人的な個別対応から手離れして、仕組みとプロセスに移管できた気がします。

当時のBowLが考えていたのは、一般的に【成果・パフォーマンス・管理】による人事評価や報酬決定されるシステムから、【存在・エネルギー・役割】で決定するシステムへの移行・実装を実現したいと考えていました。

ニカさんとしても「絶対に人事評価はしない。そこは完全に手放していく」と決めていました。

僕は当時、報酬制度の設計を担うロールを担当していて、【①特定の人が評価しない、②感情に左右されない、③惰性の運用をしない】を意識し、必要に応じて自動調整されるシステム構築をめざしました。

制度設計の話で【感情に左右されない】って、よくよく考えると面白いよね。

ただ、ここで言われていることは感情を出すことで傷ついたり、傷つけあったりするのではなく、お金という最も人の感情を掻き立てるものに対する不安や不満をそもそも気にせずにすむ世界や、それを支える仕組みをめざそうということです。

そして、需要と供給のバランスによって価格が自動調整される「神の見えざる手」なんて表現があるけど、そんなシステムにしたかった。

誰かが触らなくても、人事評価を行わなくとも、システム的にプロセスの力が働いて、適切な落とし所に落ち着いていくような、そんなシステムの構築です。

ニカさん:
俺は今のBowLのシステム、本当に良いと思うけどね。以前の会社とかだと、誰が誰の給料より高い低いとかそういう話、よくあったもの。お金が不要な他者との比較や、不満を生み出す様子をよく見てきた。

そういった状態に陥らないように、システムを構築するロールを担っていたまっきーも意図を汲み取って仕組みづくりに向き合ってくれた。

まっきー:
この新しい報酬制度において、月例の給与は存在給という考え方を導入しました。安心して働ける固定給与であり、BowLの一員として存在し、働いてくれていることについての感謝の現れでもあります。

そして、賞与はエネルギー給だと位置づけました。仕事をする上で、ロールに投じたエネルギーがお金として還ってくる賞与の形、つまり循環がテーマです。

ホラクラシー体制下において、BowLに存在するすべての業務はロール(役割とそれに紐づいた具体的な活動)に整理されますが、ロールによって専門性の高低や責任の大きさなども異なります。この差を、ロールを稼働させるエネルギーの差と捉え直し、各ロールごとロールポイント(RP)を算出し、RPに応じて賞与を決定するという考え方です。

参考画像:2025年1月時点のHolacracyOne社の組織図
入れ子構造のサークル1つひとつが組織内における役割(ロール)を表す

ここで大事なのはRPが高いから偉いというヒエラルキー的な世界観では全くなく、RPそのものを乗り物を動かす燃費のようなものとして捉えることです。大きな乗り物を動かすにはそれなりのエネルギーが必要ですが、小さな乗り物よりも優れているわけではありません。目的や収容能力の違いがただあるだけです。

RPは【①業務性、②思考性、③マネジメント性】という3つの観点からポイントが割り振られ、各ロールの稼働率を3(とても稼働していた)、 2(稼働していた:標準点)、1(稼働する機会が少なかった)のいずれかを掛けることで賞与決定の基準となる点数が算出されます。

しかもそのRPは、全メンバーが全ロールを算定する仕組みとしました。全員の算定の平均値がそのロールのRPとなるのです。実際にそれは、僕やニカさんが想定していたRPとほぼ一致しており、チームの持つ底力を感じさせてくれるシステムが生まれたのです。

これをやり切ったのは大きかったですね。やり残していた宿題が全部終わったような、そんな感覚がありました。

この新しい報酬制度の実装以降、さまざまな事情があって多くのロールを担えず、報酬額が少なくなってしまったメンバーが、多く報酬をもらったメンバーに「ありがとう」と話している場面も見られるようになりました。お金だけでなく、感謝の循環が生まれた瞬間はとても感慨深いものです。

―賞与の決定にRPというホラクラシーのシステムを前提とした仕組みを敷くとなると、ホラクラシーでは度々ロールが統合されたり、新しく増えたりしますが、この辺りはどう対応されていたのでしょうか?

まっきー:
この点については、毎月あなたはどのロールにアサインされていますか?とアンケートを取って、みんなで管理する仕組みを作りました。

毎月、誰がどのロールにアサインされているかを皆が確認できる状態で、新しくできたロールにはRPを算出します。

それぞれがお互いの仕事に無関心だったらこの仕組みは機能しないけど、みんながお互いの仕事に関心を持っている状態を作れた気がします。

この報酬制度の改訂とポリネの法人化は同時並行で進んでいて、渦中の僕はこの時期、一番葛藤していた気がするな。

給与・賞与制度と新法人立ち上げの狭間で

まっきー:
報酬与制度の改訂の際、創業メンバーであった僕は社歴も長く、賞与は一番高い状態に設定されていたのだけど、上述の仕組みに変えていこうとすると、どうやっても整合性が取れなくなってきました。

最終的に、僕の賞与を下げることで解決を図りました。そうすると他のメンバーは前体制の報酬水準より少し上がるので、全体として最も納得感のある結論でした。

その制度設計をロールとして行っていた僕は、自ら自分の賞与を下げるという意思決定をすることになりました。

当時の僕はうつ病の方の復職・再就職を応援するリワーク事業についてはほとんどタッチしなくなっていて、2020年以降はポリネ事業に軸足が移っている状態でした。

実は、社内ベンチャーとも言えるポリネ事業については研究開発的な要素も強くて、当時のBowLで進められていた既存のホラクラシーの構造とも整合性の取れない状態になりつつあって、報酬制度を設計する中でとても葛藤がありました。

ニカさん:
当時のまっきーは「整合性」とよく口にしていたよね。

一時、まっきーは「BowLを辞めた方が楽かも」くらいまで、話してたんじゃないかな。

その時は結構、俺もまっきーと対話して「ポリネ事業を別法人で立ち上げて、そちらにコミットしていったら解決するんじゃない?」と話をしたかな。

ポリネの前身であるプラス事業も年間1000万近くの売上を立てるまでに成長していたので、新法人立ち上げの話は顧問税理士からも提案があったからね。

俺もポリネの立ち上げメンバーではあるけど「一年目の給与に関してはマッキーだけのもので良いよ」という提案もしていました。

まっきー:
ニカさんはその時も、「辞めたら?」とも「残ったら?」とも言わなかったですよね。

結果的に、あの時の決断はよかった。

僕は一度、2020年10月のポリネ立ち上げのタイミングで一度BowLを退職して、新法人のポリネにフルコミットすることに決めました。

やりたいことにしっかりコミットしようと決めて、ポリネでは経営的な役割からプレーヤー的な役割まですべての仕事に取り組みました。

そうしたら、やりたいこともやれるようになり、仲間も増えました。

その後、BowLにも役員として戻ることとなり、CHROとCOOを合わせたような役割を担うことになりましたね。

この変遷を経て、僕の課題だったLoveだけでなく、Powerも適切に使えるようになったように思います。

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

次回、インタビューシリーズ第4章(後編)に続きます。


これまでに公開した一連の記事は、以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。

一般社団法人BowL一般社団法人ポリネについての関連情報は、以下のリンクもご覧ください。

皆が代表取締役「超企業」上下の無い“幸せな働き方ラボ”誕生

空き家買取専科 組織作りを考える1年の取り組み(第六話 ポリネによる研修)

レポート:共鳴ダイアログin奈良―自ら考え動く従業員が育つ組織づくりを考えるトークイベント〜チームに"対話"と"内省"を生む経営者のあり方〜


いいなと思ったら応援しよう!

大森 雄貴 / Yuki Omori サポート、コメント、リアクションその他様々な形の応援は、次の世代に豊かな生態系とコミュニティを遺す種々の活動に役立てていきたいと思います🌱