一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第3章:芽吹期|2018年〜2019年(中編)
本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第3章の中編です。
前編の記事は以下のリンクをご覧ください。
インタビューシリーズ第3章の中編にあたる今回は、BowLが2018年末より実践を始めたホラクラシー(Horacracy)という組織運営法及び、実践の中での気づきや工夫について伺いました。



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「セルフリーダーシップ経営」の萌芽
ホラクラシーの導入プロセス
―ホラクラシーに関して、2018年8月あたりで実践者である桑原香苗さんとの話し合いを経て、12月にはBowLで本格的に実践を始めたとのことですが、その間はどのようなプロセスを辿ったのですか?
ホラクラシー(Holacracy)は、HolacracyOne社のブライアン・ロバートソン氏らによって開発された組織運営法であり、組織のパーパス実現のために日々の仕事上で起こる違和感(テンション)を即座により良い組織構造や仕事の進捗へと繋げる仕組み・やり方が設計されています。
フレデリック・ラルー「ティール組織」(英治出版)の中でも事例として紹介されており、国内最大規模の事例としてGMOグローバルサイン・HD全体550名超での導入・実践などがあります。
まっきー:
実際のところホラクラシーの導入に至るまでの3年ぐらいは、U理論を学んだみぃちゃん(由佐美加子さん)の助力も得ていたので、ホラクラシー導入の準備期間があったと認識しています。
U理論(Theory U)とはマサチューセッツ工科大学C・オットー・シャーマー博士(C.Otto Sharmer)によって提唱された経営理論です。
過去のベストプラクティスからではなく、今ここにあるものを観察、内省することで出現する未来から学習し、行動するという一連のプロセスをアルファベットのUの字になぞらえて説明しています。
また、過去のパターンを脱却し、新しい未来を作るために個人の内省を進め、内面の変容を遂げることで、個人が関わる組織、コミュニティ、社会にまで変化を及ぼしうるといいます。
由佐美加子さんは、中土井僚さん(オーセンティックワークス株式会社)と共にオットー・シャーマー博士の書籍を翻訳出版し、国内におけるU理論の普及啓発に尽力された人物です。
まっきー:
2018年9月にみぃちゃんが主催するJTS(Journey to the Source)という5日間のリトリートプログラムに参加する機会があり、そこでホラクラシーを導入する意味や目的をじっくり内省する時間を過ごせました。
印象的だったのは、ニカさんの内面が紐解かれていく様子を、BowLの皆が初めて見たことです。
これまではむしろ、ニカさんが自分たちに対して1on1で接してくれることが多かったですし、ニカさんがリーダーシップを発揮すると自然なヒエラルキーも生まれていました。経験差や能力差から必然的に生まれるヒエラルキーですね。
でも、あのリトリートの場ではそうしたヒエラルキーは薄くなっていって、1人の人として向かい合えているような感覚でした。
ニカさん:
あの時は、幼少期から培われてきた信念を認め、受け入れられたような体験でした。信念を形作ると同時にその背後にある劣等感も蓄積されていたのですが、それらを昇華できた感覚です。
自己犠牲をする自分、自分を大事にできない自分、相手の期待に応えすぎる自分……。
自分の深い所にある情動を無視して、理性で対処していくことで身につけた事も多かったですが、その代償として、自己分離がどんどん加速してしまいます。
どんな時でも、本来の自分自身や自分が望むものを温かく受容をし、自分らしい表現へと繋がっていく、そんな世界観を広げられたらいいなぁと。
この頃から経営について「成長」という言葉にすら違和感を感じるようになりました。
以前は経営者としても成長しなきゃとか、社員のために売上を上げなきゃとかそういった価値観が強くありましたが、あれ以来、「成長」や「社員のため」や「社員の生活を守らなきゃ」といった言葉もいちいち口になくなりましたね。
まっきー:
確かにそうでしたね。
ちなみにビジネス用語の多くは戦争に由来する言葉が多い印象です。「ターゲット」や「戦略」などはまさにそうですね。
―「VUCA」も元々はアメリカの陸軍士官学校で初めて用いられたものですね。近年ではそれらを総合して「軍事的世界観」と表した研究者もいらっしゃいます。
まっきー:
そういった言葉もビジネスと戦争を結びつける世界観の中で使われているものですが、ニカさんのあり方が変わるにつれ、そうした言葉が使われることも少なくなってきたように思います。
―JTSの後はどうされたのですか?
まっきー:
10月の半ば、10日間程度オーストラリアのタスマニア島に合宿に行きました。
ホラクラシー導入のコアチーム4人……ニカさんと僕と創業時からのメンバー2名、BowLにおける全業務の区分などを整理していました。
ホラクラシーでは社長やマネージャーのような役職に付随していた権限を、具体的に業務を担う役割に分配される形で組織が再編されます。
全業務を洗い出してみると、財務経理的なものやリワークに関わるもの、その業務の粒感も様々でしたので、事前に社員に自分の担っている仕事について全業務を洗い出す作業を進めておき、重複しているものは統合したり、レイヤーを揃える整理作業をしました。
しかし、この4名だけで最後まで進めてしまうと、社員みんなで作り上げた体感や達成感を得られないため、役割に再編しやすいような状態に整理するまでを行いました。
その後、11月末ごろに桑原香苗さんに3日間の導入研修をお願いしました。
そこではティール組織やホラクラシーの概念理解に始まり、タクティカル・ミーティング、ガバナンス・ミーティングというホラクラシー特有のミーティングを学びました。また皆でパーパスを策定した上で、整理しておいた業務内容を再編してロール(役割)の初期案をつくりました。そして、2018年12月3日、本格的にホラクラシーをスタートさせました。
僕にとっては娘が生まれるライフイベントとも重なり「BowLも新しく生まれ変わるんだな」と実感できた、感慨深い体験でした。
―当時の様子は「沖縄発の本格的なティール組織づくりへ」と題して、facebookページでも公開されていますね。
まっきー:
こうしてみると、2018年もとても濃いですね。ようやくBowLらしい組織が孵化し始めたように思います。
この当時のBowLのパーパスは、「働く人が自然に自分らしく輝き、愛やエネルギーを循環させる社会を共創する」としていました。
ホラクラシーの実践で心がけていたこと
―いざ、実践を始めた際にお二人として心がけていたことや、実際にホラクラシーに則って組織運営を行い始めた時にどのようなことが起こったのかなど、お聞かせいただけると嬉しいです。
まっきー:
僕はホラクラシーの枠組みを守るホラクラシー・キーパーというロールを担っていました。
ホラクラシーの設計思想や仕組みに関して、僕自身はとてもしっくりきていたし、導入担当者として、ホラクラシーのルールとそれがもたらす規律が守られ、それによって組織が動いていく状態を維持することに熱量がありました。
当時、ホラクラシー実践の中で見えてきたものは2つあって、1つはテンションの扱いが鍵だということ、もう1つは全体ミーティングが減り、各ロール内で自発的なミーティングが増えたということがありました。
まっきー:
テンションの扱いについて、もう少し詳しくお話ししますね。
ホラクラシーの体制の中で仕事を行う時、人は自分のアサインされた役割を果たすべく活動し、その中で行き詰まりや違和感を感じると、それをテンションとして扱います。
テンションは文字通り、パーパスやより望ましい状態と現状との間の創造的な緊張状態を指し、それを扱って解決していくことで、組織はパーパスの実現に近づきます。
ただ、この各々が仕事の中で感じるテンションを解消することがエゴの実現のためか、チームや組織への貢献のためかの見定めが重要だと感じました。
桑原香苗さんが日本に招聘した欧州におけるホラクラシー実践者であるクリスティアーネ・ソイス=シェッラー氏と、彼女の開発したLanguage of Spaces(ランゲージ・オブ・スペーシズ)というワークを学ぶ研修に参加したことをきっかけに、このテンションの見定めについてとても参考になりました。
Language of Spaces(LoS:ランゲージ・オブ・スペーシズ)は、クリスティアーネ・ソイス=シェッラー氏が自身の欧州におけるホラクラシー(Holacracy)実践の経験から編み出した、テンションの扱いに関する内省のフレームワークです。
クリスティアーネは桑原香苗さんらが立ち上げたNexTreams合同会社とパートナーシップを結び、継続的に来日して日本人に自身の開発したフレームワークを紹介しています。
余談ですが、同時期に英治出版の編集者で「ティール組織」を担当された下田理さんや、「ティール組織」解説者の嘉村賢州さんと繋がりをつくることができました。
さて、ホラクラシーやランゲージ・オブ・スペーシズには、アメリカの思想家ケン・ウィルバーが開発したものと通じる、現実認識のための四象限が採用されています。

まっきー:
そして、ランゲージ・オブ・スペーシズでは生じたテンションを、個と集団、内面と外面で区切られた四象限で整理し、そのテンションはどの象限で扱うべきかなどを問いかけやコミュニケーションを通じて扱っていきます。
このランゲージ・オブ・スペーシズの智慧は、他の社員にとってもテンションを出すことの助けになったように思いますし、僕自身も他社の組織支援に関わる際、先方の課題について四象限で切り分けながら整理していけるようになりました。
まっきー:
ホラクラシーを実践する組織の中では、そもそもテンションが出ないという組織もあると言います。BowLにおいては、NVC(非暴力コミュニケーション)やU理論などさまざまな内面を扱う学びを継続しており、コミュニケーションを促進する対話の試みを皆で実践していたので、この点についてはホラクラシー導入以前から準備を進められていたように思います。
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次回、インタビューシリーズ第3章(後編)に続きます。
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一般社団法人BowL、一般社団法人ポリネについての関連情報は、以下のリンクもご覧ください。
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