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一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第5章:受粉期|2022年〜2024年(中編2)

本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第5章の中編2です。

第5章の前編・中編1の記事は以下のリンクをご覧ください。

今回は、BowLで実践を続けてきたティール組織的な組織づくりの独自化、BowLの価値観に即した就業規則変更や採用の事例、うつを生み出さないための社会づくりのための教育、といった観点について伺いました。

また、これまでに公開した記事は以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。


現在に繋がる取り組み

―ソース原理以外で、現在も継続しているBowLの取り組みにはどういったものがあるでしょうか?

ソース原理(Source Principle)は、イギリス人コーチ、コンサルタントであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)が提唱した、人の創造性の源泉と、人と人の創造的なコラボレーションに関する知見の体系です。

起業家やビジネスマンが夢やビジョンを語った後、具体的なお金の話をすると途端に創造性を失ったり、非合理な意思決定を行ってしまう様子を眺めてきたピーターは、お金に対する内面の投影を診断し、介入するマネーワーク(moneywork)を開発し、その最中でソース原理も生まれました。

思い描いたアイデアを実現するために一歩踏み出した時、その人はなんらかのリスクを負い、その活動の創造性の源の役割・ソースになるという考え方をソース原理では紹介しています。サブソースとは、ソースの創造性に対してリスペクトを持ちつつ共感し、ソースが担う役割の一部を自ら担うようになった存在です。

また、ソースはその創造性に基づいて独自のフィールドを生み出し、そこに人を引き寄せたり、ソースの始めた活動に共鳴する取り組み、そうではない取り組みを判断して、フィールドの健全性を維持しようとします。

国内における初めての体系的なソース原理に関する解説書であるトム・ニクソン「すべては1人から始まる」(英治出版)は、日本の人事部HRアワード2021で入賞するなど、ビジネスの領域において注目を集めました。

ホラクラシーの独自化を進める

まっきー:
2022年以降は、BowLが実践しているホラクラシーは、オリジナルなものからカスタマイズされたBowL独自のボウルクラシーというようなものになっています。

ホラクラシー導入を担ってきた僕自身が、実はホラクラシー実践において厳密にはこだわらなくなっていき、BowLらしい運用ができればいいんじゃないかなって思うようになっていきました。

ホラクラシー(Holacracy)は、HolacracyOne社のブライアン・ロバートソン氏らによって開発された組織運営法であり、組織のパーパス実現のために日々の仕事上で起こる違和感(テンション)を即座により良い組織構造や仕事の進捗へと繋げる仕組み・やり方が設計されています。

フレデリック・ラルー「ティール組織」(英治出版)の中でも事例として紹介されており、国内最大規模の事例としてGMOグローバルサイン・HD全体550名超での導入・実践などがあります。

まっきー:
そこでまず、BowLで行うタクティカルミーティングの名前が変わりました。

組織の状態を同期(Synchro)させるためのミーティングだから、シンク・ミーティングと呼び始めて、ミーティングの運用も独自の応用をし始めました。

ミーティングでは日々の仕事の中で生じるテンションを扱う時間が用意されているけど、その場で声を発することが難しそうな雰囲気があったから、オンライン上でブレイクアウトルームを準備して少人数でテンションを対話し、解決の道筋を考える時間を設けたりしました。

また、ホラクラシー運営には欠かせないWEBアプリのGlassFrogは用いずに、独自にシンクシートというスプレッドシートを自作して、それをもとにミーティングを運営するようになったね。

こんな風に、ホラクラシーのタクティカルミーティングはシンクミーティングに切り替えて、ガバナンスミーティングは必要に応じて開催。

それ以上にライトハウスミーティングやファミリアの対話ミーティングの実施に時間を存分に使うようにシフトしていきました。これは現在でも継続しています。

「ライトハウス」とは、一般社団法人ポリネ設立をきっかけに生まれた対話の場であり、BowL・ポリネが全体のパーパスや方向性を共有するために開催されます。

ライトハウスとは灯台。船が、安全かつ効率的に航行するためのサポートを行う拠点という意味が含まれています。

開始当初は組織のコアチームが集い、意図や起点を共有し、今後の方向性を確認しあう場でした。

ライトハウスはなんらかの決定機関というわけではなく、ソース原理における組織のソース(創造の源)の思い描くフィールドをクリアにし、わかちあう場、また、方向性を確認する場という位置付けです。

「ファミリア」とは、「BowLらしさ」を体現するスタッフとしての振る舞い、行動、あり方を明確化するためのコンピテンシーづくりのために始まった対話の場です。

コンピテンシーづくりは【①個人のあり方、②組織・チームのあり方、③リワークのあり方、④支援のあり方】という4つにまとめることからスタートし、スプレッドシート形式でメンバー間に共有されています。

また、スタッフ一人ひとりの意識やあり方の変化、現場での対応などをきっかけにコンピテンシーで表現されている言葉も更新する必要が現れてくるため、「BowLらしさ」の探求に完成はないという考えから、この対話の場をサグラダ・ファミリアになぞらえて「ファミリア」と呼ぶようになりました。

灯火の対話、ライトハウスの全員参加へ

まっきー:
そして、2022年以降。ライトハウスミーティングと灯火の対話は、全員参加となりました。

灯火の対話は2021年から、みぃちゃんこと由佐美加子さんの力を借りてはじまった対話の場のことで、チームメンバーの一人ひとりの人生の目的をシェアしあう時間です。

ライトハウスミーティングで組織の方向性を確認しあい、灯火の対話で互いの人生の目的に耳を澄ませる。

そしてファミリアでの対話は、コンピテンシーづくりを意識しつつも、メンバー同士で継続的にチームの文化や目指す方向を話し合う対話を続けることが目的となっていきました。現在は、灯火の対話もこれに統合され、現在も継続的に実施しています。

ニカさん:
そっか、ライトハウス全員参加も、まだ1年ぐらいなんだね。2018年から始めて、5年かけて全員参加か。ポリネのクライアントにも提案して実践してもらうようになったしね。

BowLらしさの浸透による言葉の変化

まっきー:
ライトハウス、灯火の対話、コンピテンシーはファミリアと呼ぶようになったり、この頃から愛着のある言葉を意識して使ったりするようになりましたね。

多分、こういう取り組みって愛着のある名前をつけて、それを使い続けるってことに意味があるんだろうなと思います。名前にその取り組みへの意志や願いが宿るというか。

―この、BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」も、名付けられる時はそんな感じでしたね。「良い呼び名がないかな、このプロジェクト」とニカさんが話して、そしてこのプロジェクトのソースのまっきーが降ろしてきたのが「つまびらきプロジェクト」でした。

まっきー:
後は、この頃は「定着」も「はたさぽ」と呼び方が変わったね。

BowLの仕事定着サポート「はたさぽ」

「就労定着支援事業」を「定着」と読んでいたんだけど、今はみんな「はたサポ」って呼ぶようになりました。「はたらくをサポート」で「はたサポ」です。

定着って何か味気ない無機質な感じがしたので、BowLらしい名前に変えようとなったんです。私たちは職場復帰をゴールとせずに、復帰した後の伴走まで含めて大事にしています。そんな思いも詰まった名前になりました。

社内制度の変更事例

―ライトハウスミーティングがきっかけでBowLの就業時間が変わったと伺いましたが、それはどういった経緯だったのでしょうか?

就業時間の変更

まっきー:
2023年9月のライトハウスでの対話をきっかけに、8:30-17:30の就業時間を9:00-17:00へ変更しました。

遠方に住みながら子育てをしながら働いているメンバーから、現在の就業時間だと娘の学校の送り迎えに間に合わない状況があり葛藤しているとの声があがりました。

でも、BowLで働きたい意志がある。

振り返ってみると、沖縄の慢性的な交通渋滞は、突発的な天候不良や交通事故などが原因で、就業時間に間に合わないケースはこれまでもあったので、全メンバーにとって自分ごとで考えるアジェンダだったとおもいます。

そうなったときに、時短勤務にするのか?いや、それとも……とライトハウスミーティングで話していたんだけど、みんなで「もう思い切って9時〜17時にしよう」って決まったんだよね。それも、アジェンダについて話し合い始めてから30分くらいで、合意形成を図ろうとせずに自然に決まっていきました。

勤務時間を1時間減らすって財務的にも労務的にも大きなインパクトのある出来事です。そんな大きなインパクトのあるテーマこそオープンな場で適切に対話される必要があります。ですので、以下のようなホラクラシーのガバナンスミーティングの意思決定プロセスを活用して対話を進めました。

まず、就業時間変更に関して率直な感想・意見を共有するリアクションラウンドを一旦挟んで、そして反対意見を述べるオブジェクションラウンドをして、その結果、全員ノーオブジェクション(反対意見なし)でした。そして、「じゃあ、やってみよう」と就業時間の短縮が決まりました。

このライトハウスの次月には就業規則を変更しちゃうスピード感でした。「では、来年から始めましょう」というような進め方じゃなく、すぐに社労士さんにも話を通して、10月から就業時間の変更が実現されました。

月例給与は変えずに、就業時間が1時間短縮されたので、実質的に全員昇給したようなものだと言えますね。

ニカさん:
理想と現実に差があるとき、人を変えさせるより制度を変えればいい。テンションを創造的に解決するためには、まず前提を変えることを意識して、よりよいアイディアを出し合う。

この私が拠り所にしているあり方は、採用決定プロセスでも活用されたよね。

変則的な勤務時間での採用決定

まっきー:
そうですね。昨日の採用決定プロセスを経て、入社が決まった方がいるんだけど、かなりイレギュラーな勤務形態での採用になりました。

週5日勤務の内、7時間労働と6時間労働が混在するような働き方を希望されていたのですが、採用決定プロセスを経て、それでも正社員として採用することが決まりました。

採用が決まった本人も「こんな働き方できるんですか?自分でも難しいと思っていました。」と驚くぐらいでした。

でも、双方のニーズが合致する点を見い出せたから決まったのです。

就業規則をそのまま適用するのではなく、BowLが実現したい組織のイメージに合わせて、就業規則を柔軟に変更していくという考え方で、それを専門家である社労士に依頼しています。

面接の場でその方へ「だから、できると思うよ。まずは、どうしたいか?という想いからスタートしよう」と伝えました。これこそBowLの文化が詰まっているフレーズです。

実際、就業規則の改訂に取り組んでもらう社労士さんや名沖さん、頭を抱えるんだろうなとは思いつつ。

ニカさん:
いや、知恵を振り絞ってもらうんだよ。

まっきー:
この採用決定プロセスでもう1つ面白いと思ったシーンがあって。

「じゃあいつから来る?」とその方に尋ねたら「11月からでも!」と返ってきて、「じゃあ11月に正式入社してもらうことにするから遊びにおいで」ってトントン拍子に話が進んだ。

また、「パソコンはどんなものを買えばいいですか?」とその方に尋ねられたから、僕が「これが良いよ」とおすすめの機種を教えると、すぐに「買います!」と返事が返ってきて。

ニカさん:
おお!こういうことだよな、本当に良い流れで出会う人って。

まっきー:
こんな柔軟な対応は、特定の人だけに向けて行うわけじゃないんだよね。

ある1人のテンションから始まるけど、「みんなにもそういう困り感ってあるよね」と認識合わせができたときに、はじめて制度変更に着手します。

ニカさん:
うん、組織の制度設計は個に合わせないって言い続けてきてるからね。でも個のテンションから始まることは大事にしたいし、必要性に応じてそれを全体最適につなげていく。

教育について

―2023年7月以降、ニカさんは社内コミュニケーションツールの中で子どもたちや教育に関する思いをオープンにされていますね。最近では一般社団法人BowLの記念企画でもお話しされていました。

教育に対する思い

まっきー:
これまでBowLは、うつの方への仕事復帰支援事業からスタートし、そもそもうつにならない環境づくりを支援する予防事業、そしてチーム支援へと視野を拡げてきました。

そして創業以来10年の活動を経て、その眼差しが子どもたちへと向けられていきました。

ニカさん:
BowLの組織づくりについて試行錯誤していた時、『ティール組織』(英治出版)に出会って感動したんです。私が組織づくりで表現したかったことが明確に言語化されていたし、光だった。

ティール組織解説者・嘉村賢州さんは、「現在は人類史上初めて、軍隊式や絶対王政式ではない、さまざまな組織の作り方、働き方の選択肢がある社会」だとお話ししていた。

人間らしい健康なチーム”で働く選択肢や、”こころが健康で在り続けられる世界”で生きる選択肢だってあることって本当に良いことだと感じます。また、この選択肢が大人だけでなく、子どもにも広がってほしいと考えるようになりました。

私がやりたいと思ったことは、既存の構造(学校・仕事・社会)の前提を疑い、子どもが持つ力を存分に引き出す場と、機会を与えること。

子どもたちが過ごす学校の構造は、大人の組織構造と似てると考えています。だからこそ、学校法人を作って新しい組織構造をつくりたいと考えるようになりました。それも10年以内にです。社会においてメンタルヘルス不調にならない仕組みづくりは、学校から始められないかと考えるようになったんです。

私が特に注目しているのは「イエナプラン」というドイツ発祥でオランダで広がったコンセプトです。

イエナプランは、一人ひとりの個と協調性を大事にしていて、自分との対話、他者との対話、社会との対話と関係性を扱う。そして、共に学び、共に働き、共に生きることをめざします。特徴的な教育方法として、異年齢学級で編成され、子どもたち自身で授業計画を策定する。

これはBowLでめざしている世界観に近いんだよね。

ぜひ現場で肌で触れてみないと思い、イエナプランを実践している学校法人茂来学園大日向小学校・中学校と、広島県福山市立常石ともに学園を視察しました。イエナプランを知れば知るほど、イエナプランをベースにした学校を作りたいって強く思うようになりました。

まっきー:
だいたい2023年7月頃からかな、BowLの関心が教育へ向いて行ったのが。

大日向小学校、森のようちえん ぴっぴへの視察

まっきー:
そして、2024年3月に大日向の視察が実現できました。
いつもこういう視察は、僕とかニカさんのみで出張するケースが多かったけど、今回は僕もニカさんは行かずに、支援メンバーだけで行ってもらったんだよね。

ニカさん:
そして2024年5月には森のようちえん ぴっぴに視察に行ったね。この時は私とまっきーの2人で参加した。

まっきー:
ぴっぴで僕が印象に残っているのはやっぱり先生方がつくるフィールドと、ソースとサブソースが明確なチームワークでした。ソースのビジョンがスタッフや場に息づいているって、こういう感じだよなって。

これは僕の主観だと思うけど、そこにいた先生はみんなソースである園長の意図を受け取って、ソースがその場にいなくてもその世界観を表現しているような雰囲気がありました。子どもたちへの接し方を見ていて、そう感じたんだよね。

僕はチームづくりという観点での気づきが多くて、ニカさんともこの話で盛り上がったよ。

ニカさん:
園長の中澤眞弓さんとスタッフの関係性を観察してみて、これがソースとサブソースのあり方だよな……というのを見た気がしたよね。スタッフとの連携に一切葛藤もないってお話しされていて、ちゃんとコミュニケーション取られているんだな、と。

BowLチームも同じようなレベルになりたいな、と思ったな。

まっきー:
こういう視察の場で「よかったです!」ってお伝えしたとき「でも、課題はたくさんあるんですよ」と理想と現実のギャップがあるケースはよくあるけど。でも中澤さんからはそういった話も一切なかった。

あと、ぴっぴでもBowLのように「ぴっぴとして大事にしてること」を話す時間を丁寧に作ってるって言っていたな。

ニカさん:
このぴっぴ視察も刺激になったね。

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次回、インタビューシリーズ第5章(後編)に続きます。


これまでに公開した一連の記事は、以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。

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