一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第5章:受粉期|2022年〜2024年(中編1)
本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第5章の中編1です。
前編の記事は以下のリンクをご覧ください。
今回は、BowLが実践するホラクラシーという組織運営法に合わせた給与・賞与制度づくり及び、社内ベンチャーとして成長しつつあったポリネが一般社団法人として独立するまでのまっきーの葛藤などについて伺いました。



また、これまでに公開した記事は以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。
BowLらしさの明確化から実践の社会発信へ
今回のお話は前回のお話からの地続きとなります。よろしければ、前回の記事の内容も踏まえてご覧ください。
BowLの実践を学会にて発表
―ここまで「BowLらしさ」の明確化と、それを体現する専門性の入口としてオープンダイアローグ等の学び、実践について伺ってきましたが、学会発表も2024年に入ってからあったのですね。
まっきー:
2024年9月に日本ブリーフセラピー学会第34回岩手大会があって、BowLからは僕としおか(大田真央香)が登壇者としてBowLの実践について発表してきました。
今年1月から学会の話をしていて、つい最近終えてきたところだね。先ほど話していた、BowLらしさと専門性の統合についてだけど、専門性の場面でも通用するよって、やまさん(八巻秀先生)が言ってくれていたんだよね。
BowLにとって信頼のおけるアドバイザーだったやまさんは「BowLの取り組みをもっともっと全国に広げていくべきだ」とエールを送ってくださって、それに後押しされての学会参加でした。
ニカさん:
うん。これも、バトンの受け渡しがスムーズにできたケースだと思うんだよね。やまさんからメッセージとバトンを受け取ったマッキーとしおかが準備して、それを実践する。
次はそれを見てたメンバーへ「次はあなたたちね」って世の中に届けていく役割のバトンを渡そうとする。そして「わかった」と受け取ってくれる関係性が、もうBowLにあるわけじゃん。これ、素晴らしいよね。
まっきー:
そうですね、これもちゃんと実現しましたね。学会で登壇してみて肌で感じたのは、BowLらしい支援は専門的な視点からしても有意義な取り組みとして通用するということ。「これまでよくやってきたな、BowL」って誇らしく思えましたね。
開かれた支援をより多くの人へ届けていくこと
―通用した、というその手応え感はどういったところから感じましたか?
まっきー:
BowLは精神保健福祉領域における理論についてもちゃんと学んでますが、学び、実践してきた専門知を統合していくというBowLの支援軸があります。
BowLの支援は面談室の中に閉じずに、その領域をもっと広く捉えて届けていこうとしているんだよね。
面談室の外に出て職場にも出向くし、家族とも関わるし。そういったBowLが普段当たり前にやっていることが社会にインパクトを与えてるんだなって発表の場で手応えを感じました。
2024年以降、オープンダイアローグの実践によって個別面談の実施数は減りました。そして、安心安全の場を丁寧に作った上で、他の研修生も参加して対話していく、開かれた支援を実践できるようになってきました。
オープンダイアローグは近年、精神医療の現場で注目されつつある新たな治療法です。
フィンランド発祥のこの手法は患者と医療者、ときには家族や職場などの関係者も加わり、対話を行います。入院や薬による治療では得られなかった変化も見られるなど、その可能性に大きな期待が寄せられており、2024年4月にはNHKで特集も組まれました。
BowLスタッフは2022年頃からやまさん(八巻秀先生)からオープンダイアローグを学び始めています。
参考文献としてヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキル著『オープンダイアローグ』(日本評論社)、斎藤環『オープンダイアローグとは何か』(医学書院)など。
まっきー:
BowLは研究の中で新しい理論を作ったという感じではなく、実践で培った経験と専門知を統合して、BowLらしい支援の表現がなされている。
このように学びも実践もあるから、学会の場ではどんな質問がきたとしてもちゃんと答えられましたね。
ちなみに、会場参加者の方から「面談室やカウンセリングルームの外にどう出て、活動を届けていくかがわからない」といった質問もありました。「どうすれば、私たちが普段やっているような研修を、職場にまで届けていけるんですか?なかなか決裁者まで届かないし、そういう意思決定がなされないからやろうと思っていても、できていない」といった具合に。
この経験を通して「自分たちはちゃんと産業領域にまで自分たちの支援を届けていくってことをやれていたんだな」と改めて実感できました。
一緒に作る。共創する
―産業領域に届けると言うと、10月に行われた一般社団法人BowLの設立記念企画もそうですね。那覇市のSAKURA innobase Okinawaで開催された「ティール組織に学ぶメンタルヘルスセミナー」には、平日昼間にも関わらず60名以上の方が参加されて大盛況でした。
まっきー:
そうそう、あの会場も沖縄SDGsプロジェクトの運営母体だった株式会社うむさんラボの協力があって借りることができたんだよね。ここ最近は、彼らとの共創プロジェクトがどんどん増えてきているね。
この共創関係は、BowL10周年記念事業として2023年に企画したメンタルヘルスセミナーの頃から始まっているね。ボーボットメディカルクリニックの亀廣聡先生をお招きして講演会を開催したんだ。

実は僕らは、このクリックが漢方処方をベースに多職種で構成されたチーム医療を基軸としたリワークプログラムを提供されていることを知っていて、BowLとの親和性も高いと考えていたので、どうにか繋がりをつくれないかと考えていた。
こういう時って、まずは僕がBowLの外に飛んでいき繋がり方を探ることが多いんだよね。つまりBowLが外に開いていく意識を持てるような役割を、サブソースとして担っていたんだよね。
これは僕の個人的な考えなんだけど、これまではずっとBowLを起点に考えて、BowLをどう広げるかっていう視点だったんだけど、BowL一社のみで広げていくって絶対限界があるなと思って。
これからはコラボレーションだよな、協働が重要だっていう感覚。これをもっと体現したくて、亀廣さんの講演会企画で取り組み始めたんだよ。
コロナ禍が空けてすぐのリアルイベントとして企画した。しかもオンライン配信は無しで企画したんだけど、結果150名余りの申し込みがあった。
こんな風に、パーパスに共感してくれる仲間やフォロワーを増やして、チームでことを動かすというのがどんどん進んで、だいぶBowLが社会に開かれていってる感じがしますね。
ニカさん:
うん、そうね。だいぶ変わったね、この1年で。
ソース原理を活かすBowLの経営
―ここまでのお話の中で、「ソース原理」の実践がだいぶBowLの中に息づいているな、と感じました。
このソース原理の実践について、2022〜2024年までの出来事で印象的だったことはどんなことでしょうか?
ソース原理(Source Principle)は、イギリス人コーチ、コンサルタントであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)が提唱した、人の創造性の源泉と、人と人の創造的なコラボレーションに関する知見の体系です。
起業家やビジネスマンが夢やビジョンを語った後、具体的なお金の話をすると途端に創造性を失ったり、非合理な意思決定を行ってしまう様子を眺めてきたピーターは、お金に対する内面の投影を診断し、介入するマネーワーク(moneywork)を開発し、その最中でソース原理も生まれました。
思い描いたアイデアを実現するために一歩踏み出した時、その人はなんらかのリスクを負い、その活動の創造性の源の役割・ソースになるという考え方をソース原理では紹介しています。サブソースとは、ソースの創造性に対してリスペクトを持ちつつ共感し、ソースが担う役割の一部を自ら担うようになった存在です。
また、ソースはその創造性に基づいて独自のフィールドを生み出し、そこに人を引き寄せたり、ソースの始めた活動に共鳴する取り組み、そうではない取り組みを判断して、フィールドの健全性を維持しようとします。
国内における初めての体系的なソース原理に関する解説書であるトム・ニクソン「すべては1人から始まる」(英治出版)は、日本の人事部HRアワード2021で入賞するなど、ビジネスの領域において注目を集めました。
フィールドの違い
まっきー:
ここまでで出ていたのはフィールドの違いかな。
1つは、病理を治療するための正しさを追求する専門家の方々と、専門性とBowLらしさを両立、統合しようとするBowLとのフィールドの違い。言い換えると価値観の違いでもあるね。
ニカさん:
これまで関わったスーパーバイザーでBowLにフィットしないなと感じる方に共通していたのは「関係性を排除する」という姿勢。
専門家からのアドバイスは、専門知識に基づいた個人的なアプローチであり、BowLが重視する「様々な要素が病理に関係している」という視点や、「人の可能性や人間関係を重視する」という考え方とは全く異なっていた。
また専門性による権威付けで上下関係を作ろうとしたり、トップダウン的なメッセージを発してチームに影響を及ぼしたり、ということもあった。
私たちとしては関係性を大事にしたくても、相手がそうでなければ、一緒にやっていくのは難しい。この辺りの価値観のズレがあったなって感じるね。
まっきー:
フィールドの違いという観点でいうともう1つ思い当たる事象が、医療法人を立ち上げようという話。創業時から応援してくれている精神科医がクリニックを立ち上げられたのだけど、その方が医者と経営者両立が難しいという話があって。
それならば、経営者の部分を役割を担って一緒にできないかという背景から始まった話でした。結果的にこの計画は無くなったんだけどね。
この医者も薬に頼らず患者の可能性や関係性を見る先生だったから「一緒に経営できたらいいよね、それじゃあBowLが医療法人を一緒に立ち上げるのもいいね」とか、そういう話をしていました。
ニカさん:
「彼のようなドクターの灯りを消したくない。」
当時の心境を社内共有ツールに綴った表現だけど、私はいつもそういう感情から協働を持ちかけたり、支援に入ったりしてると思うんだよね。
「彼の灯を消したくない」「応援したい」「一緒にやりたい」「支えたい」という想いからスタートして、医療法人立ち上げの話し合いを続けていたけど、ドクターと私とで、互いのエゴがぶつかる瞬間が多々あった。
そういう時って、私はすぐ引くんだよね。対立を悪化させようとせずに。この話の時もすぐ引くことになって、それで一旦この話は無くなったね。
まっきー:
後から話せればと思うんだけど、2023年7月にニカさんは「学校を作りたい」という話を初めてBowLでしてるんだよね。
そして、それに向けて視察などもBowLメンバーたちとも精力的に行ったりするのだけど、この話とさっきの話の違いは、「ニカさんがそれを心からやりたいかどうか」なんですよ。
学校の話はニカさんの心からほとばしるぐらいのエネルギーを感じてて「誰かの手伝いをしたい」というレベルじゃない。「初めて学校を作りたい」と話してから1年以上経っても火が消えてない。ずっとエネルギーが高い状態なんだ。
ニカさんは誰かのサブソースになるタイプじゃなくて、根っからのソースとして生きていくタイプなんだと思う。
ニカさん:
うん、やっぱ私って人の手伝いをするタイプじゃないんだろうな。確かに、会社員時代を振り返っても立場的に必要な役割は演じられるけど、やっぱどっかで我慢してるよね。そういうときは。
ソースの継承の難しさ
まっきー:
2022年10月には、ニカさんと名沖さんの2代表制となっていた役員体制でしたが、名沖さんが代表を降りて取締役になるということもありましたね。
ソースの継承についてはその後も色々考えさせられる出来事はありましたが、この時の出来事は印象に残っています。
ニカさんは、そもそも名沖さんを代表にすえたとき実際に「ソースを渡そう」という意図はあったんですか?
ニカさん:
最初はそこまで強く考えていなかったな。
福祉領域に強い名沖が経営に加われば、BowLの福祉経営を任せられるし、私は別の領域について考えたり力をかけられる、そんな役割分担的なイメージだったね。
だけど、いざBowLが大切にしてきた価値観や文化も含めて、ソースを引き渡すとなっても簡単じゃないなと次第に感じたよ。名沖にとってもソースを受け取る準備ができていないし、私もソースの渡し方がちょっと雑だった。
だからまず、名沖がそれを受け取れるような状態にすることに注力することにした。意識が変わると対応も変わっていったね。
その後、代表取締役を解いた時に名沖から「自分がニカさんからのバトンを受け取れるような状態を作っていきます」というメッセージが届いたときは嬉しかったね。
そういう経緯があったからこそ、彼がつまづいた時、強いフィードバックをする必要があるときには彼によく言うよね。
「本当の私からバトンを 引き受けようとしてる?受ける準備してる?」って。
ソースとサブソースの関係
―そういえば、当時はホームページにソース、サブソースという取締役等に代わる表記などもされていましたが、あれはどういった意図だったんでしょうか?
ニカさん:
今、改めて思うのは、ソースであるということ、サブソースであるということは、自分の中にあればいいって感じかな。
組織のソースやサブソースであることを対外的に表明する視点はいいと思うけど、それが肩書きのように受け取るメンバーもいて、その人の内面と外側の表現が一致していなのに、サブソースだと語ってしまうことも起こったんだよね。
先のソースの継承の話のように、その人が自分の内面の整理が進んでいないならば、もっと先に向き合うべき大事なことがあるんじゃないか?ということをチームで探求し始めたよね。
まっきー:
この頃のニカさんの思いとしては、取締役っていう社会的なランク、その質感を外したかったっていうことだと思う。
そして、僕はというとBowLのサブソースという自覚を持っているんだけど、それは誰よりもニカさんというソースと接してきて培ったものだと思う。
向き合い、対話して、時にニカさんに「それは違う」とフィードバックを受けたり、時に僕の主体的なアクションで事業や組織構造といったフィールド全体に影響を与えたり。
そんな経験の積み重ねの上に育まれる感覚によるものが多分にあると思う。
その感覚を持つ僕と、ソースと過ごす時間や頻度などが圧倒的に少ない他のメンバーが「サブソースです」という感覚って、やっぱりちょっと違う気がしてきて。感覚的なもので、言語化するのが難しいんだけど。
僕はソース原理を体験的に解釈すると、ソースがその場にいなくても、ソースの意図やエネルギーを伝えることができる人がサブソースなんじゃないかなって感じていて。
現在も探求中ではあるんだけど、ホームページでの肩書きのような表記はその時に無くしたって感じだね。
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次回、インタビューシリーズ第5章(後編)に続きます。
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一般社団法人BowL、一般社団法人ポリネについての関連情報は、以下のリンクもご覧ください。
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