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一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第5章:受粉期|2022年〜2024年(前編)

本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第五弾。今回のインタビューが最終回となります。

2013年1月に創業された株式会社BowLは、沖縄県浦添市に拠点を置く、県内初のうつ病特化型のリワーク(復職・再就職)専門機関です。これまでに500名にのぼる方々の復職・再就職を実現されてきました。

うつに陥った方のサポートだけではなく、そもそもうつにならない社会づくりをめざすBowLは、新しい働き方・組織の作り方・制度設計を自社自ら積極的に挑戦し、BowL独自の「チームシップ経営」及びチーム、組織、経営支援アプローチを開発してきました。

2020年には、うつを発症させず、健康的に働ける組織づくりをポリネーション(他花受粉)していくことをめざし、一般社団法人ポリネを設立。ポリネでは、経営者・マネジメント層を起点に、人と組織がより健やかな状態へ変容していくための独自プログラムを提供されています。

さらに、株式会社という法人形態と諸制度が、BowLが志向する経営のあり方と乖離しているという点から一般社団法人BowLへの移行を決断。
2024年10月1日を以て一般社団法人BowLとして第二創業されました。

インタビュー最終回となる今回は、荷川取佳樹さん(ニカさん)徳里政亮さん(まっきー)のお二人に、BowLらしさと専門性が統合され、心身ともに豊かな組織づくり・社会づくりに向けた発信へ向かう2022〜2024年のBowLについて伺いました。

また、これまでに公開した記事は以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。


2022〜2024年のBowL

―本日もよろしくお願いします。今回は2022〜2024年、現在までのBowLについて伺っていきたいと思います。

まっきー
この頃のBowLは「対外的に事業を発展させていこう」という外向きのエネルギーよりも、「自分たちの内部をどうしていくか」という内向きのエネルギーが強い時期だったように思います。

もちろんこの時期にも、各種サービスを対外的に提供しています。教職員を対象としたメンタルヘルス研修や自治体管理職向けのセルフケア・ラインケア研修の実施、ちょっと珍しいものだと、ニカさんが浦添市長の番組に出演Yahoo!ニュースに取り上げられるといったこともありました。

組織的にはソース原理(Source Principle)の理解がさまざまな場面で進みつつ現在につながる実践も生まれていましたし、2023年以降は教育という新たな領域に関してアンテナを張り始めて、イエナプランを推進する学校に視察に出かけ始めるなど、これまでと違う流れも生まれ始めました。

BowLらしさの明確化から実践の社会発信へ

―改めて、この頃のBowLの内向きの取り組みから伺えればと思いますが、どういったところから始まったのでしょうか?

BowLらしさの明確化

まっきー:
まず、思い浮かぶのが、BowLのコンピテンシー作りですね。

2022年にコンピテンシー作りが始まったんだな……もう2年半くらいか、と振り返りながらしみじみと感じています。

ニカさん:
コンピテンシー作りが始まったのは、以前からお世話になっているプロセスワーカーで組織支援の実践者である桑原香苗さんに相談したことがきっかけだね。

BowLは以前から支援者としての専門性を高めることを重視していましたが、ある専門家がスーパーバイザーとして加わったことで、BowLらしさが失われ、BowL本来の支援ができなくなるのではないかという懸念が生じていたね。これを香苗さんに相談しにいったんだよね。

当時の私の認識は「専門性を土台にBowLらしさを発揮できる」と考えていたのだけど……香苗さんからは「BowLらしさという土台をつくって、それを表現するために専門性を身につけていこう」という逆の発想を伝えてもらったんだよね。

当時、入ってもらっていた専門家のやり方を尊重しつつも、なんでこんな風におかしくなっていくんだろうと思っていたから、「そうか」と腑に落ちました。

まっきー:
どうしたらBowLらしさを取り戻していけるだろうって考えたとき、「BowLにおけるハイパフォーマーの行動や振る舞い、あり方を紐解いて言語化するのはどうか」という提案をいただいて、そこからコンピテンシー作りが始まりました。

ニカさん:
BowLらしさのコンピテンシーを明確にするということは、BowLが常に伝えようとしていること、体現しようとしている価値観やアイデンティティを明確にすることに繋がります。

―それが、こちらのような表ですね。かなり網羅的にさまざまなポイントについて描写されているように見えます。

2024年10月のプログラムの際に公開された「BowLらしさ」の表

まっきー:
コンピテンシー作りは、名沖さん(長谷川名沖さん)、しゅーと(山城脩人さん)の2人がBowLメンバー全員にインタビューすることから始まりました。

BowLのメンバーに仕事についてインタビューし、BowLらしい行動、姿勢、考え方と、BowLらしくない行動、姿勢、考え方を収集して分類し、2022年2月末頃にはスプレッドシートにまとめました。

大きな項目としては【①個人のあり方、②組織・チームのあり方、③リワークのあり方、④支援のあり方】という4つにまとめることから始め、それぞれに細分化されたトピックが紐づいています。

そして、言語化できたトピックになってきた項目はスプレッドシート上で赤文字にして、一旦完了と置いていますね。

ニカさん:
先週、しおか(大田真央香)から、一度赤文字になった「チーム支援」の項目をアップデートしたいって提案があったよ。

―確かに、ある程度時間が経つと一度定めた表現にも違和感が出てきたり、アップデートしたいという意見も出てくるかもしれませんね。

まっきー:
今見てみると確かに、現在のBowLでは使わないだろうなって表現もコンピテンシーの中に見られますね。「最悪の事態」という表現もわざわざ使わないし、「力のあるメンバー」という表現も今見るとかなり属人的なニュアンスを感じます。

ニカさん:
現在は「チームシップ」という言葉を掲げて活動しているし、「チーム支援」の項目に関しても、言葉と実際の内容がずれてきたら、もう一度見直して今の状況に合わせる感じは、いいと思うな。

まっきー:
このような一旦完成したトピックも見直すことが度々生じるため、コンピテンシー作りが終わらないねって話もしました。

こういう背景を伴い、2023年6月にコンピテンシー作りのプロジェクトが「ファミリア」という名前に変わりました。

スペインのガウディの作品サグラダ・ファミリアのように、常に更新され、作られ続けているという意味合いを込めて「ファミリア」と名付けました。

サグラダ・ファミリア(「ファミリア」のイメージです)

コンピテンシーを作り上げるために、そのプロジェクト内で対話の時間を設けてきた訳だけど、「早く終わらせよう」と拙速に動くんじゃなくて、現在は「終わらなくていいか」という感覚で受け止めています。

アウトカムに執着せず、この対話を通してBowLらしさを作り上げていくプロセス自体に価値があり、すごく重要だよね!という認識がチームで共有されています。

今では「コンピテンシー」という言葉はみんな使わなくなり、親しみを込めて「ファミリア」って呼ばれていますね。

BowLらしさと専門性の統合

―BowLらしさの明確化の一方で、専門性との両立、統合というテーマもあったかと思いますが、これについてはどのように進んでいったのでしょうか?

まっきー:
コンピテンシー作りの件でもお話ししたように、BowLらしさという土台の上に専門性を乗せていくということをしたいと考えていたのですが、当時入っていただいていた外部スーパーバイザーからのフィードバックを受けるたびに、BowLらしさが否定されていくような感覚も感じていました。

ニカさん:
専門家としては病理を扱う上での正しさを主張し、BowLとしては病理の背後にある可能性や関係性を大切にしようとしていたと思う。

当時、私はこの二つは対立するのではなく統合できると思っていたんだけど、現実はその逆で、どんどん分断されていくように感じていましたね。

まっきー:
僕個人的には、BowLらしさの明確化と専門性の確立の統合を難しくしていたのが、ニカさんも僕も業界の未経験の状態からBowLを始めたところにあると感じています(ニカさんは起業前にインターンとスーパーバイズ等を経験)。

BowLが体現しようとする世界観よりも、専門性としての正しさが優位になっていました。

ニカさん:
どうしても対立構造ができてしまう感じだったよな。

まっきー:
それでこれは「あ、フィールドが違うんだ」とソース原理的な理解をしたんですよね。

ニカさん:
そうだね。ある意味、BowLのフィールドとは異なる方だったんだっていうことを明確にしたよね。これが契機となって、そのスーパーバイザーへ契約解除を申し出て、BowLを離れてもらうことになったんだよね。

ソース原理(Source Principle)は、イギリス人コーチ、コンサルタントであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)が提唱した、人の創造性の源泉と、人と人の創造的なコラボレーションに関する知見です。

起業家やビジネスマンが夢やビジョンを語った後、具体的なお金の話をすると途端に創造性を失ったり、非合理な意思決定を行ってしまう様子を眺めてきたピーターは、お金に対する内面の投影を診断し、介入するマネーワーク(moneywork)を開発し、その最中でソース原理も生まれました。

思い描いたアイデアを実現するために一歩踏み出した時、その人はなんらかのリスクを負い、その活動の創造性の源の役割・ソースになるという考え方をソース原理では紹介しています。サブソースとは、ソースの創造性に対してリスペクトを持ちつつ共感し、ソースが担う役割の一部を自ら担うようになった存在です。

また、ソースはその創造性に基づいて独自のフィールドを生み出し、そこに人を引き寄せたり、ソースの始めた活動に共鳴する取り組み、そうではない取り組みを判断して、フィールドの健全性を維持しようとします。

国内における初めての体系的なソース原理に関する解説書であるトム・ニクソン「すべては1人から始まる」(英治出版)は、日本の人事部HRアワード2021で入賞するなど、ビジネスの領域において注目を集めました。

まっきー:
その後、2023年3月には八巻秀先生(やまさん)がBowLにスーパーバイザーとして入ってくれていましたね。

BowL創業時にサービス管理責任者候補を紹介してくれたり、随所で相談に乗ってくれていた先生がやまさんと繋いでくださって、2022年頃からやまさんからオープンダイアローグを学び始めていました

オープンダイアローグは近年、精神医療の現場で注目されつつある新たな治療法です。

フィンランド発祥のこの手法は患者と医療者、ときには家族や職場などの関係者も加わり、対話を行います。入院や薬による治療では得られなかった変化も見られるなど、その可能性に大きな期待が寄せられており、2024年4月にはNHKで特集も組まれました。

参考文献としてヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキル著『オープンダイアローグ』(日本評論社)、斎藤環『オープンダイアローグとは何か』(医学書院)など。

まっきー:
やまさんの研究領域の1つだったアドラー心理学は、創業当初からBowLで探求していたエッセンシャルなテーマでした。

また、やまさんが実践されていたオープンダイアローグもBowLが目指す支援の形でした。面談室の中、閉じた空間でその人の問題を扱うよりもチームで関わっていく、家族や職場と一緒に関係を作っていくという考え方や仕組みがあり、とても親和性を感じていました。

―「オープンダイアローグ」といえば、ニカさんも感銘をうけたという「社会的うつ病」の治し方―人間関係をどう見直すか―」の著者の斎藤環さんも、国内における主要な紹介者ですね。

まっきー:
うん。それで、このオープンダイアローグというアプローチで、BowLらしく専門性を深めていくのがいいんじゃないかって確信しましたね。

ニカさん:
なにより、やまさんはBowLが大切にしている研修生との関係性を尊重して、後押ししてくれたから、これまでのスーパーバイザーとは全然違うアプローチだったね。BowLのこの価値観に合う専門家はなかなかいないからね。

まっきー:
でも、本当に悲しいことに、やまさんは昨年亡くなられたんだけどね。

ニカさん:
うん。やまさんが亡くなって、すごく残念で悲しくてしょうがない。でもね、改めて振り返ると、やまさんとは現在のBowLに繋がる対話がしっかりできていた気がするよ。

まっきー:
共鳴ダイアログと銘打って、やまさんとニカさんの対話の様子を収めた動画もあるんだけど、これも是非見てほしいな。やまさんのあり方に触れてみてほしい。

―2024年5月に共鳴ダイアログin奈良という企画にBowL、ポリネの皆さんが参画されていて、私もそこに参加していましたが……それもやまさんとの取り組みが起点になっていたんだな、と感じます。

BowLのパーパスの更新

―さて。2023年に入ると、BowLのパーパスの更新や「大切にしていること」がまとまるなど、BowLらしさが形になって、外部への発信も少しずつ増えてきていますね。

まっきー:
2023年1月23日、BowLは設立10周年を迎えて、これを機にパーパスが更新されました。

2019年にニカさんが参加したビジョンクエスト(ネイティブアメリカンに伝わる通過儀礼の儀式)で降りてきた元のパーパスは「うつになってもいい、うつがあってもいい社会の器になる」でしたが、これを刷新し「こころが健康で在りつづける世界を」になりました。

ちなみに、新パーパスは最初「こころが健康で在りつづける世界を諦めない」と入っていたんだけど、みんなの意見を取り入れて「諦めない」を省略してシンプルにしました。

「〜世界を」で止めることで、その後ろに続く言葉はメンバーひとりひとりが思いのまま解釈し、表現することに繋がると考えました。

ニカさん:
うん、みんなの意見をホラクラシーのガバナンスミーティングのように、リアクションラウンドとオブジェクションラウンドを回して、その結果、このパーパスに落ち着いたね。

まっきー:
そう、このパーパスを更新するプロセスの時、みんなの意見は集めるんだけど、合意形成は図ってない。

BowLとして一番初めにパーパスを言語化したときは、みんなの意見を取り入れる集合的プロセスで文章を作ったんだけど、つぎはぎ感があったし、エネルギーも薄まってみんなに浸透しなかったんだよね。

それ以降、「組織に命を吹き込んだニカさんの言葉が良いのではないか」ということで、ニカさんの直観に降りてきたものをメンバーとわかちあって、その上でつくるようにしています。

ホラクラシーのガバナンスミーティングである提案に対して行われるように、みんなが率直な感想を述べるリアクションラウンド、反対意見を述べるオブジェクションラウンドを回して、それらの意見をニカさんが統合して、今回のパーパスが決まりました。

「BowLが大切にしていること」の明文化

まっきー:
2023年7月には、「BowLが大切にしていること」が出来上がってきました。

ここまで、BowLのみんなとカルチャーについて意識を向けたり、日々の実践との共鳴を確認する「ファミリア」も継続してきていたから、まず大きな概念・哲学として明文化する動きが生まれました。

ここも、BowLのソースであるニカさんの価値観がベースになっていったね。
当時、ChatGPT3.5が出てきた時だったから、そこにこれまでのニカさんの言葉やメッセージ、さまざまな情報を注ぎ込んで、「この経営者が大事にしていることはなんですか?」と尋ねたら、この資料にも現れている「自立・共感・連携」という3つのコアコンセプトも出てきたね。ニカさんに尋ねても「うん、その通りだ」と返ってきたのが印象的でした。

11の哲学はというと、元々創業期にニカさんが作成した「BowLスタンス10」という哲学の原型を参考に、現在のBowLの感覚でブラッシュアップして、さらにかつて企業ミッションだったAll for empowermentを加えて11の哲学としました。

ちなみにBowLが大切にしていることは指針であり抽象度の高いものです。具体的にどうこれらを現場での実践や行動にどう繋げるかは「ファミリア」で扱っている感じだね。

ニカさん:
これさ、まっきー。明日からの山梨県白州合宿でみんなで共有する機会を作れないかな?

日々、メッセージを発信し、口でも言い続けていることも「ここに書かれていることを体現しようとしているんだ」と理解できれば、チームにインパクトがあるんじゃないかと思うんだ。

まっきー:
確かにインパクトがあると思います。

―名分化されてから約1年経って改めてこれを見返すと、日々の「あれ」や「これ」もここに書かれていることの〇〇の実践だったんだ、となりそうですね。

ニカさん:
そう、だからこれらの言葉を一言一句覚える必要はなくて、日常の仕事で大切なことは実はここにちゃんと書いてあり、いつでも立ち返れるツールにできたらと思う。

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次回、インタビューシリーズ第5章(中編1)に続きます。


これまでに公開した一連の記事は、以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。

一般社団法人BowL一般社団法人ポリネについての関連情報は、以下のリンクもご覧ください。

【BowL 11の哲学】プロローグ:11の哲学にまとめた理由

ラジオ番組「BowLのチームシップ経営」がはじまりました。

レポート:ティール組織に学ぶメンタルヘルスセミナー〜ウェルビーイングが向上する次世代の組織を考える〜


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