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一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ第5章:受粉期|2022年〜2024年(後編)

本記事は、一般社団法人BowLの歴史を紐解く「つまびらきプロジェクト」を立ち上げられた徳里政亮さん(まっきー)にお声がけいただいてスタートした、BowLの歴史を紐解くインタビューシリーズ第5章の後編です。

いよいよ、全5章10万字近くに及ぶこのシリーズ最終章の最終回となりました。

前編・中編1・中編2の記事は以下のリンクをご覧ください。

インタビューシリーズ最終回にあたる今回の記事では、前回の「教育」にも関わってくるBowLにおける人材育成や「バトンを渡す・受け取る」といったテーマを中心に扱った内容となりました。

また、これまでに公開した記事は以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。


社内の育成について

―子どもたちの教育という新たな視点や、BowLでもソースの継承といった人を育てる、あり方や知識・技術を伝えていくというテーマが浮かび上がってきているように思います。

改めて、2022年以降のBowLの人材育成について伺えればと思いますが、いかがでしょうか?

Buddy、Teaching、SV

まっきー:
2023年3月にニカさんから「育成ロールシステムは壮大な実験」と題して社内共有ツールにメッセージがあるんだけど、育成についてより意識し始めたのはここからですね。

ニカさん:
うん、ここはまだ課題が残ってるな。

この時、意図していたことはまず、Buddy・SV・Teachingの3つのロールが連携して育成を担っていく「育成ロールシステム」を作っていこうということ。

キーワードは「先輩」で、

Buddy→受容と伴走(ちょっと先を行った小先輩が担う)

Teaching→フィードバックとリクエスト(学習意欲があり推進力がある中先輩が担う)

SV→共感と問い(キャリアを積み重ねた大先輩が担う)

このようなイメージで伝えていたね。

一般的に育成は上下関係を活用するけど、BowLでは役職による権威性に依存せずに、”先輩”と”後輩”という人間的な関係性を活用できないかって考えたんだよね。では”先輩”とは何か?探求する過程でBuddyって言葉が生まれてきた。

―一般的な組織のヒエラルキーとは関係なく、ある仕事に対する経験差などで能力差がついたり、自然なヒエラルキー(natural hierarchy)が生まれることもありますね。それを人材育成のシステムとして言語化・制度化する試みのように聞こえます。

まっきー:
その頃って、部分的には機能し始めていると捉えているのですが、ニカさんはいかがですか?

ニカさん:
いや、まだまだシステムがやっと生まれたぐらいで機能しているとは言い難い。Buddy、Teaching、SVを担うメンバーの経験がまだまだ足りていない。

「リクエストと要求の違い」ってテーマでSlackで発信したこともあったでしょう。こういう観点をもっと身につけてほしい。

まっきー:
関係性を大切にした育成システムを意図していたんだけど、自然なヒエラルキーというよりも、単なる仕事の上下関係のような感じになってしまって。要求ではなく、対話的にリクエストしあえる関係性で仕事できたらなって話が出てきましたね。

ニカさん:
うん。これも1年間伝え続けて、今じゃだいぶリクエストも軽やかに表現できるようになってるよね。

まっきー:
そうですね、互いにうまく意図を伝えあって仕事できるになっている感じもしますね。

バトンを渡す、受け取る

―育成とも関連しそうなテーマで、ここまで「バトンを渡す」という表現がニカさんからよくお話しされていたように思います。このバトンを渡すという感覚は、この2022年頃くらいからニカさんの中で強くなってきたんでしょうか?

ニカさん:
改めて振り返ると、昔から私は「自分がいなくなっても、この組織がどうすればうまく回るんだろう」と問い続けているね。

前職の保険会社時代では、期待していた管理職が退職や転属となると、組織に文化やノウハウがまったく残らないことがよくあった。そのたびに、管理職の属人性に依存しているマネジメントの仕方に残念感を頂いていました。

だからBowLでは創業時から、たとえ自分がいなくなっても自主的に経営できるようにしたいとずっと考えてた。

でも、明確に「バトンを渡す」っていう表現をしはじめたのは、2019年のフレデリック・ラルーが来日していた、あのリトリートに参加してからです。そこでソースの考え方や、ソースを継承するっていうアイデアを初めて知りました。そこでラルーはバトンを受け渡す際に「儀式を行う」という言葉を使ってたんだよね。

ソース原理(Source Principle)は、イギリス人コーチ、コンサルタントであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)が提唱した、人の創造性の源泉と、人と人の創造的なコラボレーションに関する知見です。

起業家やビジネスマンが夢やビジョンを語った後、具体的なお金の話をすると途端に創造性を失ったり、非合理な意思決定を行ってしまう様子を眺めてきたピーターは、お金に対する内面の投影を診断し、介入するマネーワーク(moneywork)を開発し、その最中でソース原理も生まれました。

思い描いたアイデアを実現するために一歩踏み出した時、その人はなんらかのリスクを負い、その活動の創造性の源の役割・ソースになるという考え方をソース原理では紹介しています。サブソースとは、ソースの創造性に対してリスペクトを持ちつつ共感し、ソースが担う役割の一部を自ら担うようになった存在です。

また、ソースはその創造性に基づいて独自のフィールドを生み出し、そこに人を引き寄せたり、ソースの始めた活動に共鳴する取り組み、そうではない取り組みを判断して、フィールドの健全性を維持しようとします。

国内における初めての体系的なソース原理に関する解説書であるトム・ニクソン「すべては1人から始まる」(英治出版)は、日本の人事部HRアワード2021で入賞するなど、ビジネスの領域において注目を集めました。

ニカさん:
私はそのリトリート以前にビジョンクエスト(ネイティブアメリカンに伝わる通過儀礼の儀式)に参加しているから、余計にその「儀式」っていうキーワードに惹かれました。

まっきー:
2022年9月、ニカさんがSlackに「自分達で終わらせない。バトンを渡せれば、それでいい」とポストされていました。この頃はBowLらしさを明確化し、組織文化を根付かせていこうと強く意識していた時期だから、ニカさんも僕も力が入ってましたね。

ニカさん:
うん、このあたりから私もまたエネルギーが高まった感じがするね。正直、私は経営上の信念として現場の仕事に手を出さないっていうスタンスはあるんだけど、最近では意図的に介入することも増えたよね。

まっきー:
多分、ニカさんがソースとしてフィールドから受け取ってるメッセージを、チームのカルチャーとして根付かせていくには相当なパワーが必要。当時は専門性とBowLらしさの統合に着手している最中だったから、ニカさがいなくなったら簡単にBowLらしさって空中分解しそうな感じもしたんだよね。

だから、ここにかなり力を入れた感じがしますね。

―これ以降、例えばBowLのソースを継承する場面で「バトンを渡す・受け取る」という表現だったり、学会発表の時に「やまさん(八巻秀先生)からのバトンをまっきーや、しおか(大田真央香さん)が受け取って……」といった言葉に繋がってくるわけですね。

特に学会発表に関しては「バトンの受け渡しが上手にできたケース」と、先ほどニカさんも振り返られていました。

個人的な感想ですが、育成の最終段階は「バトンを受け渡す」であったり「託す」というものなのかもしれないですね。

一般社団法人BowLの設立

―株式会社BowLは、2024年10月1日をもって一般社団法人BowLへと移行しました。これも大きな出来事だったのではないかと思います。

なぜ、一般社団法人化?

まっきー:
これまでBowLは管理を手放す経営を志向してきて、管理職は置かない、人事評価は行わない組織づくりに取り組んできました。

そして独自のチームシップ経営が確立されていったけど、その最中で株式会社という法人形態と諸制度が、BowLが志向する経営のあり方とのギャップが浮き彫りになってきて。

当時、ニカさんは株式会社BowLの100%株主であり、会社のオーナーでした。一方で、ニカさんは経営者に依存しない自律的なチームを作ろうとしていました。

この課題をクリアするために上がっていたアイデアが、100%株主であるニカさんが株式を手放しオーナーの立場を降りることで、名実ともに経営権をメンバーに分配しようというものでした。

一般社団法人化は、その時に出てきたアイデアですね。

障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について

まっきー:
それで、2024年に入ってから一般社団法人化を検討しはじめましたが、実現において財務面で生じる問題が気がかりだった。

特に問題だったのは、売上。これまでBowLは厚生労働省が定める福祉制度において、実績就労支援実績が高水準だったので、これに応じて福祉報酬が最高単価になっていたんだよね。

これが、株式会社から一般社団法人に変更となると、制度上では別法人扱いになってしまい、これまでの就労支援実績がリセットされる。これにより3000万の赤字に転落するだろうと見積もられました。これは経営存続の危機につながるレベル感です。

そういった背景もあって、チームシップ経営の実現という前向きな話の裏では、実は経営面の大きな葛藤を抱えてる時期でもありました。

それでもニカさんはやるって覚悟も決めて、僕らも腹を括っていました。

これを打破したのは、名沖さんの行動でした。それからこの状況が一変しましたよね。

ニカさん:
そうね、私の思いを受け取ってくれたよね。 

実は、名沖(長谷川名沖さん)と2人でソファーで対話したんだけどさ

名沖、BowLってメンバーひとりひとりがすごい頑張ってるじゃん。でも頑張ってるのになぜ、一般社団法人だと報酬単価がリセットされるんだろう。なんか適切に評価されていないようで寂しいよな。どう思う?」って。 

その時に名沖が「やりますか。話してみますか」って言って動いたんだよ。

彼の人脈をつかって厚生労働省の上席にアプローチして、実情を伝えた。つまり陳情だよね。その2週間後、厚生労働省より6月21日付けの通知が発出された。

障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について」という事務連絡の中に、「障害福祉サービス等報酬上の取扱いに関し、施設・事業所の職員に変更がない等、吸収合併等の前後で事業所が実質的に継続して運営されると認める場合は、障害福祉サービス等報酬上の実績を通算する。」という文言があった。

「すげえ!」ってみんなで叫んだよね!

まっきー:
この問題は最悪の事態も覚悟してただけに、この一件で本当に心が軽くなりました。

後世にBowLの取り組みを伝えるために

まっきー:
そういえばこの一般社団法人化プロジェクトと同時期に、BowLのアドバイザーをしてくださっていたやまさん(八巻秀先生)から「BowLは、これまでの取り組みを本にまとめたら良いよ」と進言してくれて。

それは会社の営業戦略の意図ではなく「本を書くことで、何百年先の後世の人にも伝えることができるよ」というものだった。

ニカさんが「バトンを渡す」ことを意識していたこともあったし、BowLの取り組みが広く世の中に発信されることは、共感してくれる新しい仲間を増やすことに繋がるんじゃないかとも思いました。

一方で、僕たちはこれまで話したようなアップデートを頻繁に重ねてきたから、正直なところ細部は忘れてる部分も多い。それにニカさんのメッセージも体系的にまとめてはいなかった。

そんな背景もあって、今年の春ぐらいに大森ちゃんにこの件を相談して、つまびらきプロジェクトが始まったわけです。

一般社団法人化を機にオープンイベントの実施

まっきー:
それで、一般社団法人化のタイミングに合わせて、BowLを外に開いて発信していくために、大々的にイベントをやろうかと企画持ち上がりました。

それが、2024年10月4日と5日に開催された「ティール組織に学ぶメンタルヘルスセミナー〜ウェルビーイングが向上する次世代の組織を考える〜」です。

ゲストは「ティール組織」解説者・嘉村賢州さん、そして、賢州さんに僕らを引き合わせてくれたじょりぃさん(一般社団法人プロモーションうるま理事・田中啓介さんにファシリテーターをお願いすることになった。そしてこの場に大森ちゃんにも来てもらったね。

この場で初めてBowLの掲げる「チームシップ経営」について社外に伝えることができたと思う。

チームシップ経営とは、セルフリーダーシップとリレーションシップの2本柱でチーム経営していくこと。

セルフリーダーシップは、個人が自身の人生においてリーダーシップを持って自己課題に向き合い成長発達していくこと。

リレーションシップは、メンバー同士が有機的に繋がり、互いの成長を願ってフィードバックしあい、助けが必要な時にサポートしあい、チームのパーパスに向けてチャレンジする関係性のこと。

これを私たちの11年の経営実践を、ティール組織とソース原理のレンズで紐解いて考えていく場だった。この企画にはBowLメンバーも加わって、みんなでつくった感覚があって。チームが次のフェーズに移行したなって感じた時間だったね。

終わりに

―ありがとうございました。創業前夜から現在に至るまで、無事に旅路を追いながら現代に辿り着けて良かったなと感じています。最後、一言ずついただいて終えていければと思います。

まっきー:
ちゃんと2024年まで語れて、僕はほっとしたな。

そして、意図して方向性を示したら、人も組織もちょっとずつその方向に向けて変化していくんだって、改めて思えた時間だったな。

年初にBowLを外に開いていこうよって意識したら、その後、学会発表や一般社団法人化の記念イベントといった形になって実現された。

ソース、サブソースっていう言葉もまず打ち出してみる。すると仕事の実践経験を経て、それがどういったものかが一人ひとりの内面での理解が深まったり、少しずつ顕在化できるようになってきました。

これを、改めて振り返ることができてよかったです。

ニカさん:
今の気持ちをシェアすると、ちゃんと積み重ねてやってきていたんだなって、すごく感じる。

そして、これから10年ってどうなるんだろう?って想像したり、もっと新しいストーリーが創造されていくんだろうなって予感もするし。このチームがどうなっていくのかすごく楽しみです。

まっきーが以前、奈良県で開催された対話イベントの場で「起点を共にする」って表現をしてくれたけど、BowLやポリネの取り組みを広げていく中で大事なことは、これからどういうふうに起点をあっちこっちで仲間たちと時間を共にしながら作っていくのかだと思ってる。今の私の中で注力したい、エネルギーを注ぎたいことは、まさにこれだね。

もう1つ、未完成の育成システムについても、プロセスを振り返ることで、じっくり内省しながら考えることができた。BowLらしい採用決定プロセスがある程度できたなって実感があるから、次に形にしていくのは、採用後の育成システムだね。

これからもまだまだ旅路は続くけど、ひとまず、今回のつまびらきの対話を経て、BowLが創業から現在まで繋がっていることをすごく感慨深く思います。


以上、「一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ」をここまでご覧いただきありがとうございました。

これまでに公開した一連の記事は、以下のマガジンにも掲載しています。記事の一覧をご覧いただきたい場合はこちらをチェックいただけると幸いです。

一般社団法人BowL一般社団法人ポリネについての関連情報は、以下のリンクもご覧ください。

BowLの挑戦|沖縄タイムス

自問自答・試行錯誤を続けた先に辿り着いた「チームシップ経営」(前編)|静岡新聞SBS

ラジオ番組「BowLのチームシップ経営」がはじまりました。


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