「僕たちいつか狂おしいほどたった今を切なくなつかしく思う日がくる」
「たった今を 狂おしいほど 切なくなつかしく 思う日がくる 僕たち」
なぜ そんなこと言ったのだろう
若いかれが 若かったわたしに向かって
何が見えて こんな言葉をはいたのだろう
二人はしっくりいってた これまでになく
二人の仲のこともましてや健康なんて 頭に浮かぶことも
話題になることも まったくなかった
なんでもないあの晩 あたり前な日の あたり前なおわり
どこからかの帰りで 何度も通った駅前の商店街
たまに寄った地下の喫茶店の看板の前を通りすぎ
その二軒向こうの果物屋
店先のケースに入ったコーヒー牛乳を買って 立ち飲みしたかれ
そのあいだ そんなかれを 見ていたわたし
商店街の明かりと
その下で 降りやんだばかりの雨で濡れていた歩道
ちょっとしたいさかいも 二人だけにわかるじょうだんも
なんでもないことばかり言い合ってた
これ覚えておこうなどと思うことなんて なにもなかった
いつも通る駅前の商店街
ふつうの二人
そのとき かれは何を見たというのだろう
わたしには見えなかった 二人の将来
言葉
それが
言葉だけだったのが ある日 ほんとうになった
もう
地球のどこを探したって
見つからないかれ
まだ歩いてる わたし
あの晩と同じ 雨上がり 濡れてる歩道
ハッと浮かぶ
コーヒー牛乳
くるおしいほど
切なく
なつかしい
なんでもない あたり前なあのとき
もういない
どこまでも ふつうの あの二人
_ _ _
恋心は、女性も男性も地上の命尽きるまで静かにあるいは激しく燃えつづけ命そのものを支えてくれる原動力の一つに思えてなりません。
恋愛エッセイ:
『一度 愛した 人』
『抱きしめたい 大失恋、終わりはいつ』
『サンタフェへの道 涙なしに泣く人』
家族エッセイ:
『三人の母たち 命をあたえた母 173日愛しつくした母 そしてわたし』
『「 僕…… 」 「 …… ママも」おなか痛めなかった息子たち』
平和エッセイ:
『スイカと鳩 一人の小さな平和活動』
『そこしれなくかなしい中に 心に沁みる 一枚の写真』
