人間の成長と究極的な生き方2 ウィルバーの新刊から Growing Up
Waking Upにおける覚醒体験だけでは人格的成熟は保証されません。神秘体験をしたというWakingUpを体験した人が人格的に成熟しているとは限らないのです。
ここでウィルバーは、State(意識状態)とStage(成長段階)を区別します。成長のStageは、以下の七段階になります。それぞれの段階に、それぞれの健全な形とシャドーがあります。シャドーとは、普段は表に現れない自分自身の抑圧された部分を示します。
1. Archaic(原始段階)
Stage課題: 生き延びることが最大の課題になります。乳幼児的な段階であり、世界と自己がまだ十分に分化していません。
健全な形:世界に対し基本的に信頼感があり、行動は生存本能に従います。
シャドー:存在不安 消滅恐怖 見捨てられ不安
この段階のシャドーに影響されたありがちな思いは、例えば「ライオンに食べられてしまう!」
2. Magic(魔術的段階)
Stage課題:自分の力を認識し、世界は自分の願いで動くと感じる、幼児期的な段階。
健全な形:想像力と創造性により、さまざまな遊びを発明し没頭します。
シャドー:全能感 呪術的思考 被害妄想
この段階のシャドーに影響されたありがちな思いは、例えば「私が怒ったから地震が起きた」など。
3. Red(衝動的・権力段階)
Stage課題:自我の誕生と自己主張。
健全な形:自立し、チャレンジする勇気と行動力がある。
シャドー:支配欲 暴力 ナルシシズム
この段階のシャドーに影響されたありがちな思いは、例えば世界観が「勝者が正しい」
4. Amber(神話的段階)
Stage課題:秩序を学ぶ。共同体に所属する。
健全な形:道徳的で協調性があり責任感がある。
シャドー:原理主義 異端狩り 善悪二元論
この段階のシャドーに影響されたありがちな思いは、例えば「外国人は自分の国に帰れ」
5. Orange(近代合理主義)
Stage課題:自立した個人になる。科学的思考を身につける。
健全な形:合理的科学的思考ができ、人権を重視する。
シャドー:唯物論 消費主義 ニヒリズム
この段階のシャドーに影響されたありがちな思いは、例えば「世界は全て、科学的に記述できる」
6. Green(多元主義)
Stage課題:多様性を受容する。共感を学ぶ。
健全な形:多文化主義 共感 平等
シャドー:平均の専制 発達段階否定 被害者競争 キャンセル文化(異論排除)。・・・ウィルバーは「Green Meme Pathology」
と呼ぶ。
この段階のシャドーに影響されたありがちな思いは、例えば「徒競走で順位をつけるのは、差別的であるので、徒競走自体をやめるべきだ」
7. Teal / Turquoise(インテグラル)
Stage課題:全体を統合する。
健全な形:包摂 統合 システム思考
シャドー:自分は統合しているという優越感 成長段階マウンティング
この段階のシャドーに影響されたありがちな思いは、例えば「私は、さとりの境地に達した」
Stageが覚醒体験を解釈すると言われますが、ここで、僕は疑問に持つのです。
果たして、「私は、さとりの境地に達した」という発言が、「ライオンに食べられてしまう!」より高度と言えるのかという疑問です。
それぞれのStageにおける「シャドーに影響されたありがちな思い」は、使っている用語が変化しているだけで、やっていることは、どのStageにおいても、投影、合理化、否認などの基本的な自我防衛規制を駆使して、確証バイアスによって自分に都合よく解釈しているだけとも言えます。
Stageというものがあるにせよ、シャドーに影響されそれに気づかないと退行を起こすのではないかと考えます。高次のStageにおける退行は、ウォッシュバーンが「超越に奉仕する退行」として指摘していますし、グロフらによる「スピリチュアルエマージェンシー」も、そして禅仏教における「魔境」も退行を記述したものです。
この辺りのことは、Cleaning Upのところで考察したいと思います。
次回は、Opening Upです。IQだけでは捉えられない複数のLineについてです。
参考:
Wilber, K. 2024, "Finding Radical Wholeness: The Integral Path to Unity, Growth, and Delight" Shambhala
ウォッシュバーン,M. 1997, 「自我と力動的基盤: 人間発達のトランスパーソナル理論」 雲母書房
グロフ, S. グロフ, C. 1999, 「スピリチュアル・エマージェンシー: 心の病と魂の成長について」 春秋社
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