どうにもとまらない|ショートショート
こんなにキラキラとまばゆい光を全身から発した人間なんて、この世に存在するのだろうか。
僕がバイトしているカフェに、この世の者とは思えないほどの、キラキラオーラ全開の女性が入店してきたのは、ちょうど昼下がりの午後だった。
店内には客はおらず、暇つぶしにテーブルを拭いていたところ、
カランカランッ
ドアの鈴が鳴るとともに、その女性が入ってきたときは、店内が一万カンデラは軽く超えるくらいに異常に明るくなったように感じ、一瞬目眩がしたほどだ。
少し茶色を帯びたセミロングの髪型に白のシャツと薄水色のロングスカート。それに爽やかなミントの香りが、僕の鼻孔を刺激する。
「い、いらっしゃいませ。い、一名様で、い、いらっしゃられますでしょうか?」
どぎまぎしながらおかしな日本語で話しかけると、
「ええ」
と、一言答えながら店内をくまなく見渡した。
これと言って特長のない店内なのに、何かを確認するような仕草に僕は首を傾げたが、彼女と目が合うと恥ずかしさに俯いてしまう。
「お好きな、せ、席にどうじょ」
口がどもったり言葉を噛んだりする僕に、彼女は微笑むなり窓際のテーブルに向かって歩き出した。
街の中心地から少し外れた立地が悪いのか、いつもがらんとした店内に、突如天から舞い降りてきた「天女」。
その姿に、僕は完全に心を奪われた。
いや、心を食べられたという表現の方がしっくりくる。
「スミマセン」
彼女が僕を呼び、「アイスカフェオレ」を注文してきただけで、僕はもう天に召されていいとさえ思った。
僕がカフェオレを準備している間、何度も彼女をチラ見した。誰かとメッセージの交換でもしているのだろうか。スマホでしきりと文字を入力しているようだ。
今日はマスターが休みのため、店内には僕と彼女だけ。ああ、もう貸し切り状態にしたい。
僕の願いが天に届いたのか、他に客が入ってこないままだった。
その間、彼女がスマホを見たり本を読んだりして一人で時を過ごす姿に、始めはチラチラとチラ見していたが、途中から焦点が定まったまま動かなくなった。
理性が完全に破壊されたようだ。
もうどうにもとまらない。
*
「あの、スミマセン」
彼女から、ニューヨークチーズケーキとアイス抹茶ラテを追加注文を受けた時、僕の身体はフニャフニャした感覚になり、このままスライムに転生するのではないかと思い始めていた。
それにしてもこれで何度目の注文だろう。
誰かと約束でもあるのだろうか。
こんな絶世の美女なんだからカレシの百人くらいいてもおかしくない。
僕が運んできたニューヨークチーズケーキとアイス抹茶ラテを上品な手つきで口に運んでいく。
まさにクイーンオブエレガンスだ。
僕が皿やグラスを洗いながら彼女の様子を見ていたところ、彼女はすくっと立ち上がり店内を歩き始めた。歩き方までエクセレント。
そして、彼女は僕には目を合わさずそのまま店から出ていった。
彼女が「無銭飲食」だと気づいて慌てて外へ飛び出した時には、かなりの健脚なのか、はるか先を走っていた。
「あ、お客さま、お会計⋯⋯」
僕の声は彼女に届くはずもなく、姿が見えなくなるまで見送りながら、心に宿った想いをそのままぽつりと呟いた。
「これが恋なのか」
次々と想いがこみ上げてきて、もうどうにもとまらない。
■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌
■小説専門マガジンに参加中です✨️
■創作系メンバーシップ「虹色創作部」に入部しています🍀
■創作が泳ぐ水族館に入館しています🐬
この作品は、甘野充さん企画参加作品です。
今回のタイトルは、【どうにもとまらない】でした🙄
高頻度でサムネに使用しているひいろさんのイラストですが、自分のおかしな作品群にマッチしているかたまに心配になります💦
「この内容ならギリギリオッケーかな⋯」と自分基準で境界線引いています🙄
今回は「無銭飲食女」でしたが、大丈夫でしょうか😅
ここまで読んでいただきありがとうございました😌
