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無茶ぶりはやめて|ショートショート #アマノ文筆クラブ

「これからどの店で召し上がります?」


彼女がいる。

清楚なルックスに誰もが魅了するその澄んだライトブルーの瞳。
オシャレや行動、言動に気を遣い、いつも彼氏の俺好みを装うとする謙虚さ。俺に対する会話はいつも敬語だ。


彼女との付き合いは、あまりに平和だ。
そのうち俺の脳みそが完全に溶けきるくらいの無風状態。

彼女に対する不満はゼロだが、世の中には俺のような不届き者がごろごろ生きているのだろう。


ーーストロングゼロのような刺激が欲しい!


きっとこのまま何も起きずに結婚まで行き着くだろうと思い始めたら、だんだんと焦ってきた。


ーー刺激を受けるなら若い時じゃないと、後から求めたらリスクが高すぎる


愚かなオトコの典型のような俺だが、この気持ちに嘘はつけない。
とことん愚かなオトコになりたくて仕方がない。


すると通りかかったカフェの看板に目が釘付けになった。


「ジャンボスイカパフェ、三十分以内に完食したらタダ!!」


その看板を見て、ふと意地悪な心がじわじわと体内に充満してきた。


「ねえ、美月」
「はい」
「確かお前、パフェ、大好物だったよな?」
「はい、大好きです!」
「じゃあ、これ、やってみてよ」


俺は無表情で看板に載っているジャンボスイカパフェの写真を指さしたが、内心はニタニタとしていた。本当に嫌なオトコだ。


「これ、ですか?」
「どう?チャレンジしてみない?」
「ワタシ、一人でですか?」
「そう」


そう言っている俺自身が底意地の悪さに罪悪感に苛まれるが、もう提案してしまった以上このまま言葉を突き進めた。


「美月がこれをクリアしたら、俺、美月と結婚するよ」
「えっ」
「逆にクリアできなかったら、これまでどおりの関係ということで」


無茶ぶりにも程がある。完全にイかれたドSな彼氏だ。
きっと「無茶ぶりはやめてください!」と泣きつくだろう。

しかし、美月は空に目線を向けながら思案した顔をすること数十秒。
そして、俺が予想していた答えからかけ離れた返しがきた。


「お時間ちょうだいしてもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ」
「三十分待っていただけますか?先にカフェに入ってお茶でもしていてください」


そう言うなり、美月はどこかに向かって走り去ってしまった。


ーー助っ人として大食いの奴でも連れてこようとしているのか?


先にカフェに入るなり、アイスコーヒーを注文してからあれこれ考えてみたが、何しに行ったのか見当がつかなかった。


そのうち飽きてきて、スマホゲームに夢中になりだした頃に、美月が俺の席まで走ってやってきた。


「お待たせしてごめんなさい」
「スマホゲームしていたから大丈夫」
「それなら良かったです!」


美月一人だけだったので、助っ人を呼びに行ったわけではないようだ。


「では、ジャンボスイカパフェ注文しますね」
「へ?」
「え?注文しちゃダメですか?」


ーーこの子は天然なのか?こんな華奢な女の子があんなデカいパフェ食べられるわけないだろ


俺の訝しげな表情を察していないかのように「注文しますね」と言うと、店員さんを呼んで本気で注文してしまった。出来上がるまで三十分かかるらしい。


「おい、マジで食べる気か?」
「はい!」


美月は常人では到底食べきれないであろうジャンボスイカパフェの写真が貼ってあるメニュー表を、穴が開きそうなくらい凝視していた。


待つこと三十分。

注文の品がやってきたが、想像以上にデカく幼稚園児の年長くらいの背丈はあるのではないか。周りのお客さんも好奇心丸出しで遠目で写メする。

すると、美月が立ち上がり、パフェに刺さっていたこれまたおたまくらい大きなスプーンを抜き取ると、天高く突き上げた。


「では、参ります!!」
「お、おい、マジ!?」





「毎度ありがとうございました!」


店員さんだけでなく、他のお客さんたちも好奇な眼差しで俺たちカップルの後ろ姿を見届けているのが背中越しに感じる。


「お前、一体何者だよ?」
「美月ですが」
「そうじゃなくて、何であんな化け物パフェ、一人で食べられるんだよ!」
「ああ、隠していてごめんなさい。ワタシ、いわゆるフードファイターなんです。実名でWikipediaにも載っていますよ!」


一瞬、俺の聞き違いかと思ったが、さっきのパフェの食べっぷりを見たらやはり本当なのだろう。


「あ、あはは…で、さっきカフェの前でどこか行っていたけど何しに行っていたの?」


ーーまさか


脳裏に浮かんだのが、このパフェのために、人気の無い場所で身体の隅々まで空っぽにしてきたのかと想像すると非常に勝手ながらその姿に幻滅した。


「急に外してしまってごめんなさい。準備運動しに行ったんです」
「じゅんびうんどう?」
「はい。胃腸のウォーミングアップのために、走ってすぐのところにあるラーメン屋で大盛り十杯ほど食べてきました!」


真夏のジリジリとした日光に照らされながらも涼やか表情の美月が、逆に怪異に見えた。



「フフ…結婚したら食費が高くつきそうですね。一緒に節約しましょうね、アナタ」



(2,000文字)



■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌

■小説専門マガジンに参加中です✨️

■創作系メンバーシップ「虹色創作部」に入部しています🍀



この作品は、甘野充さん企画参加作品です。
今回のタイトルは、【無茶ぶりはやめて】でした🎵


最近テレビを見なくなったので分からないのですが、フードファイターってまだいるんでしょうか🙄

だいぶ前ですが、職場の知り合いがWikipediaで地域のフードファイター達の一人として紹介されていた時の「笑撃」を思い出しながら書いた作品でしたが、その知り合いもこの物語同様に女性です🤗

「今もフードファイターなの?」と、職場で会う機会があれば聞こうと思います(笑)


ここまで読んでいただきありがとうございました🍀


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