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これっきりですか?|ショートショート

一部、性描写を含んでおりますので、苦手な方はお控えください。



『これっきりですか?』
『ええ。もう会わない方がいいから。さようなら』


ワタシはLINEでやりとりしていた相手に対し、一方的に別れを告げた。相手の既読が付いた後、ほんの数秒の間に友だち解除をした。

スマホをテーブルに置くなり、ワタシはベッドに倒れ込んだ。

こうやって突き放した方がワタシにとっても相手にとっても変に情が湧かずに済む。

誰よりもワタシを愛してきたのかは、これまで付き合ってきた中で充分に感じている。

でも、アナタとの未来が想像できなかった。


特に受け入れられなかったことは、二つ。
「ステータス」と「身体の相性」。


顔はどちらかといえばタイプだった。性格も誠実で優しいし、いつもワタシファーストで考えてくれていた。

でも。

アナタは「無職」だった。
将来の夢も何も考えていないし、「無職」という言葉の響きだけで、ワタシと付き合っていく価値なんてないに等しいと思い始めたら、急に熱が醒めてしまった。

いや、一応倉庫のバイトはしていたから「フリーター」か。そんな定義づけなんてどうでもいいんだけど。ハイスペックを求めるつもりはないけど、最低限「正社員」でいてほしかった。普通の家庭を築いていける財力さえあれば。

そんな財力さえ持っていないアナタは、ワタシにとってはただの重荷になっていただけだった。

そして「身体の相性」が悪かった。
アナタはいつも貪り食うようにワタシの裸体を激しく弄び、粘着質のある舌を何度も絡ませたり、乳首を獣のような落ち着かない鼻息を出しながら無我夢中でしゃぶり続ける。

でも、そこまでだった。
いい歳して童貞でセックスにはあまりにも無知だった。終盤にさしかかり、ワタシのわざとらしい喘ぎ声が挿入するタイミングだと遠回しに伝えると、さっきまで硬かった男根が急激に力を無くし、こんにゃくのようにフニャリとしてしまう。

始めはワタシに魅力がないと思って落ち込んだときがあったが、いざ挿入する段階で怖じ気づいてしまうと後から言われた。

そもそも抱かれているときにワタシ自身が内心冷め切っていて、ただただ抱かれている状況に気持ちよさなんて求めようにも無理があった。



そんなアナタに引き換え、「カレ」はそのどちらも持ち合わせていた。


世界で五本の指に入るIT企業勤務で実家が資産家。

それ以上に、セックスしたときに自然と涙が溢れるほどに気持ちよくこのまま死んでもいいほどの高揚感。あれはもうやみつきになる。


そんなカレとセックスしているシーンを回想しながら温かいハチミツ紅茶を飲もうとマグカップに口をつけたところで、「ガチャッ」と玄関の鍵が開く乾いた音が聞こえた。


この部屋に鍵を開けて入ってこられる人は、あの人しかいない。


ワタシは寝巻きのまま玄関に向かうと、玄関先のライトに照らされて、思っていたとおりの「カレ」が立っていた。


「……ここで何をしているんですか!?」


カレは何のひねりもない雑な言葉をワタシに投げつけてきた。


「何って、家で待っていただけだよ」
「何言っているんですか!この前、これっきりだと言ったじゃないですか!!」
「貴方にとってこれっきりだったかもしれないけど、ワタシにとってはこれっきりじゃなかったんだもん」


両手を後ろに組みながら、相手におねだりでもしようとするように上目遣いをする。


「ここに何しに来たんですか!!」
「そんなこと、貴方に逢いに来たからに決まっているじゃん。何度もセックスしたときの蜜の味が忘れられなくて。身体が疼いちゃったから我慢できなくて、その、来ちゃった」
「セックスなんて、一度もしていませんよ!!」「ワタシの身体、あんだけ弄んだのに忘れちゃったの?ワタシは覚えているよ。ワタシたち、身体の相性とてもいいじゃん」


その時初めて、カレはワタシの寝間着に気づき、みるみる引きつった表情に変わり始めた。


「そのパジャマ……詩織の……」
「ああ、さっきちょっと服が汚れちゃったから、ベッドに置いてあったものに着替えたんだよ」


「どう?似合ってる?フフッ」と問いかけるも、カレの表情から何も返事しない、いや、できないだろうということが感じ取れた。それはそうだよね。

カレは咄嗟に右側にあった廊下の電気のスイッチを押した。
先ほどは暗くて見えなかったものが鮮明になった瞬間、カレの表情が急速に強張っていく。


ワタシの足下に液体のようなものが垂れているのを見たカレの視線を感じたとき、後手で握っていたモノをカレの前に突き出した。


それにはねっとりとした赤黒いものが付着しており、それを握っていたワタシの両手にも大量に付着して床に滴れていた。


それを見たカレは、部屋の奥が最悪の結末になっているのかを察したようで、顔からどんどんと生気が抜けていくのがはっきりと見て取れた。そして、その場にへたり込んでしまった。


その姿は、さっき別れを告げたオトコの男根そのものに見えた。


そんな妄想をして含み笑いをするワタシに、カレは力無く呟いた。



「これっ、錐ですか?」
「ええ、これっ、錐です」




■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌

■小説専門マガジンに参加中です✨️

■創作が泳ぐ水族館に入館しています🐬

■創作系メンバーシップ「書き手応援メンバーシップ」に加入しています✨️



この作品は、甘野充さん企画【アマノ文筆クラブ】参加作品です。

今回のタイトルは、【これっきりですか?】でした🙄


柄にもなく性描写を含みましたが、書いた自分自身が性描写を読むのが苦手です🥲

歴史小説が好きでしょっちゅう読んでいますが、たまに生々しい性描写があり、「歴史小説にこのくだり、いる?」と、嫌悪しながら読み進めています(一応読みます🤣)。
面白かった作品は売らずに、二、三度読み返すのですが、生々しい性描写のある作品はなかなかリピートできず本棚に閉まったままです…読み飛ばせばいいんですけどね🥹

作品名は言いませんが、序盤にいきなりあった性描写があまりに衝撃的だったため、その後の話が頭に残っていません(世間的には高評価の作品です)。

映像より文字の方が表現する上で仕方ないかもしれませんが、あまりにも生が出過ぎているものはもう少しオブラートに包んで欲しかった…朝の通勤時間帯に読むのは正直辛かった😂


ここまで読んでいただきありがとうございました🍀


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