Open USD・USDG・SoFiUSD徹底比較 ─ 最後に金融インフラを制するのは誰か
このシリーズは、一つの疑問から始まった。
SoFiは、自らSoFiUSDというステーブルコインを発行している。それにもかかわらず、別のステーブルコイン構想を持つOpen Standardへの参加を表明した。
自前の通貨を持つ企業が、なぜ競合になり得る共同体へ加わるのか。
第1回では、140社を超える有力企業が集まったOpen USDを見た。第3回では、130社を超える企業が参加し、サービスが広がり始めているUSDGを取り上げた。
これを見ると、Open USDとUSDGという二つの巨大な共同体に対し、SoFiUSDは一社で挑む小さな存在にも見える。
だから、SoFiUSDが普及しなかった場合の保険として参加したのか。
あるいは、単なる情報収集か。それとも大きな戦略があるのか。
<Open USDの戦い方>
Open USDには、各分野を代表する企業がOpen Standardへ集まっている。一社では作れない巨大な経済圏を、最初から業界全体で作ろうとしている。
中心となるStripeは、オンライン決済の入口を握っている。Bridgeを傘下に収めたことで、ステーブルコインの発行基盤も手に入れた。足元ではPayPalの買収を仕掛け、巨大な流通基盤まで傘下に置こうとしている。
一方で、共同体ならではの難しさもある。参加企業の中には競合関係にある企業も多い。共同体の理念には賛同しても、自社の利益と衝突すれば、積極的な導入をためらう可能性もある。
今後のOpen USDに必要なのは、参加企業が自社のサービスへOpen USDを組み込み、実際の利用を生み出すことである。140社の「参加」が、140社の「実装」へ変わるか。
Open USDの本当の勝負は、これから始まる。
<USDGの戦い方>
USDGは、Paxosを発行の中心に置き、流通に必要な企業を集めた。そして、USDGを広げた企業へ準備金から生まれる運用収益を分配する仕組みを作った。
参加企業は130社を超え、発行残高は30億ドルを突破した。今やUSDT/USDCに次ぐ、第2グループを形成する一角である。

現時点では、USDGの方が第2回で考えた「共同体の上で企業が商売できる環境」へより近づいている。参加企業にとってUSDGは、収益を生み出す通貨になり始めている。
ただし、この仕組みには弱点もある。
準備資産から得られる収益は、金利環境に大きく左右される。金利が高い間は、多くの収益を参加企業へ分配できるため、USDGを広げる動機も強くなる。しかし、金利が低下すれば、その原資は減る。
この課題は、同じモデルを採用するOpen USDにも共通だ。
収益分配が小さくなっても、企業はそのステーブルコインを使い続けるのか。真の金融インフラになるためには、単なる「収益を生む通貨」から、「金融サービスを動かすために必要な通貨」へ進化しなければならない。
USDGも、まだゴールへの道のりは遠い。
<SoFiUSDの戦い方>
SoFiには約1,500万人の会員がいる。しかし、その戦略は会員向けサービスだけにとどまらない。より重要なのは、Big Business Bankingである。
Big Business Bankingの参加企業には、デジタル資産の取引・保管・流動性・決済に関わる企業が並ぶ。SoFiもまた、多くの企業を結ぶ巨大な金融ネットワークの構築を目指している。
その中核となるのが、企業が一つの銀行で法定通貨とデジタル資産を扱い、24時間365日、資金移動や決済を行える法人向け基盤である。
企業はSoFiへ預金を置き、通常の銀行送金を利用する。必要に応じてSoFiUSDを発行し、ブロックチェーン上で相手企業へ送金する。受け取った企業は、そのSoFiUSDを再びドルへ償還できる。
「銀行預金 → SoFiUSD → ブロックチェーン → 銀行預金」という一連の流れを、一つの金融機関の中でシームレスに完結できることこそが、SoFiUSD最大の特徴なのである。
さらに、SoFiはSoFiUSDの準備金となる現金をFRB口座で管理できる。これは、準備金を民間銀行へ預ける発行体にはない独自の強みである。
2023年のシリコンバレー銀行(SVB)破綻時には、CircleがSVBへ預けていたUSDC準備金を回収できるか不透明となり、USDCは1ドル割れを経験した。
FRBに置かれた準備金には、このような民間銀行の信用リスクがなく、流動性も高いため、準備金の安全性を高められる。
ここまで三者を見てきた。改めて整理すると、普及を目指す方法も、現在地も、抱えている課題も大きく異なる。

現時点で、どこが絶対的に優れているということはない。最終的に勝敗を決めるのは、実際に企業と利用者が使う市場を作れるかどうかである。
しかし、三者が同じ市場で一つの椅子を奪い合っているとも限らない。
<勝者は一つとは限らない>
現実の金融市場は、単一の企業・通貨・ネットワークだけで動いているわけではない。
・企業は複数の銀行口座を持っている
・加盟店は複数の決済手段を受け入れている
・取引所は複数のステーブルコインを扱っている
・利用目的によって、最適な金融インフラは変わる
だからこそ、三者すべてが、それぞれの市場で成功する未来も十分に考えられる。
だから、SoFiがOpen Standardへ参加した理由を、「SoFiUSDが失敗した場合の保険」と捉えるのは適切ではない。それは、SoFiUSDの可能性を自ら小さく見積もることになる。私は、SoFiの参加をもっと積極的に捉えている。
<なぜSoFiはOpen Standardへ参加したのか>
考えられる未来は一つではない。
第一の未来は、SoFiUSDが銀行発行型ステーブルコインとして信用を獲得し、広がっていくことである。この場合、SoFiはSoFiUSDと、その金融サービスから大きな利益を得られる。
第二の未来は、Open USDが普及することである。しかし、この場合でもSoFiは、自社の銀行・法人向けサービス・Galileo・Technisysを通じて、その金融インフラを支える側へ回れる可能性がある。
第三の未来は、SoFiUSDとOpen USDの両方が普及することである。SoFiUSDはSoFiの会員向けサービスや金融ネットワークで利用が広がり、Open USDはより広い加盟店・決済ネットワークで使われる。その間の交換や資金移動をSoFiが担えば、両者は十分に共存できる。
第四の未来は、USDGを含む別のステーブルコインが普及することである。しかし、ステーブルコインを現実の金融システムへつなぐ役割をSoFiが担えれば、ここでも新たな事業機会が生まれる。
SoFiは、どの未来でも金融インフラの一部を担える立場を確保しようとしている。本当の狙いは、どのステーブルコインが普及しても、その資金がSoFiの金融インフラを通る世界を築くこと――、
そう考えると、Open Standardへの参加は「保険」ではなく、「未来の選択肢を広げる戦略」なのである。
<最後に金融インフラを制するのは誰か>
SoFiがOpen Standardへ参加したのは、SoFiUSDだけに未来を限定しなかったからだ。
次の金融インフラがどのような形になるのか、現時点では誰にも分からない。だからSoFiは、一つの未来に賭けるのではなく、考えられる複数の未来へ同時に道を延ばしている。
SoFiUSDは、その戦略の中心に位置する。しかし、SoFiの戦略はそれだけではない。
勝者は、最も多くのステーブルコインを発行した企業とは限らない。最後に金融インフラを制するのは、どの通貨が選ばれても、その資金の流れを支えられる企業である。
スキ💙やフォロー🌼をポチっ🐶🐾と、またSNSでのシェア💫も大歓迎です!みなさんの温かいご支援が最大の励みです。
📌2026年2月からメンバーシップを始めました。初月は無料です。ご加入いただくと、過去の有料記事や掲示板の投稿もすべて読めます。
【免責事項】 本ブログは情報提供を目的とし、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。内容は執筆時点の情報に基づき、将来的に変更される可能性があります。投資判断は自己責任で行い、十分な調査のうえ決定してください。本ブログの内容を基にした投資損失について、当方は一切の責任を負いません。また、外部リンクや第三者情報の正確性も保証するものではなく、各自の判断でご利用ください。

