本当の強敵はUSDGか!? ─ Open USDの先を走る共同体
Open USDより約1年半早く立ち上がり、参加企業を増やしながら経済圏を広げている共同体が存在する。
その名はGlobal Dollar Network――。
そのステーブルコインが「USDG」である。
Open USDがこれから動き出す共同体なら、USDGはすでに走り始めた共同体と言える。その背後にいるのは、ステーブルコイン業界の古参企業Paxosである。
<Paxosとは何者なのか>
Paxosは2012年に設立され、企業向けにデジタル資産の発行・保管・決済などの金融インフラを提供してきた。2025年12月には米通貨監督庁(OCC)の承認を受け、連邦認可信託銀行へ移行している。
その実績は豊富で、PayPalのステーブルコイン「PYUSD」の発行を担うほか、かつては世界最大級の発行残高を持っていたBinanceブランドのステーブルコイン「BUSD」の発行も手掛けていた。
そのPaxosが、自ら中心となって作り始めた共同体がGlobal Dollar Networkである。
<USDGとは何か>
Global Dollar Networkは、2024年11月に7社の主要企業によって始まった。
・発行を担うPaxos
・機関投資家向けのカストディを提供するAnchorage Digital
・流動性を生み出すBullishとKraken
・機関投資家向け金融サービスを展開するGalaxy Digital
・決済を担うNuvei
・個人投資家への入口となるRobinhood
発行・保管・流通・利用までを意識した構成となっていた。その後、続々と多くの企業が加わり、国際決済、暗号資産取引、欧州市場、DeFi(分散型金融)へと利用範囲を広げている。
そして現在、参加企業数は130社を超え、発行残高も30億ドルを突破した。

<企業がUSDGを広げる理由>
Global Dollar Networkは、USDGのネットワーク拡大へ貢献した企業に、準備資産から生まれる収益の大部分を還元する。
取引所にとって、USDCやUSDTを取り扱うだけでは、発行会社が得る準備資産収益の大部分は自社へ入ってこない。一方、USDGを積極的に取り扱い、顧客に保有してもらえば、自社も継続的な収益を得られる。
Global Dollar Networkが狙っているのは、この好循環である。「USDGを広げれば、自社も利益を得られる」という経済合理性によって、企業を動かそうとしているのである。
<Open USDとUSDGの違い>
Open USDとUSDGは、どちらも「一社だけで利益を独占せず、参加企業とともにステーブルコインを普及させる」という考え方を持つ。しかし、現在地は大きく異なる。
Open USDは、Stripe傘下のBridgeを中心に、参加企業の規模と幅ではUSDGを上回る。その潜在力は大きく、一気にUSDGを追い抜く可能性もある。一方で、年内の発行が予定されているものの、役割分担や利用サービスなど、その全体像はまだ見えていない。
対するUSDGは、すでに稼働している点が強みである。Paxosが発行を担い、Kraken、Bullish、Robinhoodなどが流通経路を支えている。
一度USDGを組み込んだ企業は、簡単には別のステーブルコインへ切り替えなくなる。また利用企業が増えるほど取引は活発になり、その結果、新たな企業も参加しやすくなる。
前回見た「参加した方が得」から「参加しない方が不利」へ移る転換点に、USDGはより近い位置にある。
<SoFiUSDとの違い>
SoFiUSDはSoFiが発行する銀行発行型ステーブルコインである。SoFiは自らが持つ金融サービスの中へSoFiUSDを組み込むことができる。
・約1,500万人の会員
・預金・融資・投資・クレジットカードなどを提供するSoFiアプリ
・金融機関向けインフラを提供するGalileoとTechnisys
・法人顧客へ銀行サービスを提供するBig Business Banking
これらを一つにつなぐことで、SoFiUSDを送金・決済・投資・企業間取引へ広げられる可能性がある。
Open USDとUSDGは、参加企業へ利益を分配することで経済圏を作る。SoFiUSDは、銀行と金融サービスを一体化させることで経済圏を作る。
言い換えれば、Open USDとUSDGは「外部の企業をどう巻き込むか」が成功の鍵になる。SoFiUSDは、「SoFiがすでに持つ顧客・預金・金融商品・技術基盤をどこまで一つにつなげられるか」が最初の勝負になる。
さらに、SoFiが外部の銀行、フィンテック、取引所、決済会社へSoFiUSDを提供できれば、銀行発行という信用力を武器に、Open USDやUSDGとは異なる方法で巨大な経済圏を作る可能性がある。
だから、SoFiUSDはOpen USDやUSDGより小さな構想とは限らない。目指している金融インフラへの道筋が違うのである。
<三つの異なる戦い方>
Open USDは、Stripe・Bridgeを中心に、最初から巨大な企業連合を作る。USDGは、Paxosが規制対応と発行を担い、運用利益を参加企業へ分配しながらネットワークを広げる。
SoFiUSDは、銀行・会員・預金・金融サービス・テクノロジー基盤を一つにつなぎ、銀行発行型の金融インフラを作ろうとしている。
・Open USDの武器は参加企業の広さ
・USDGの武器は先行して動いている経済圏
・SoFiUSDの武器は銀行と金融サービスの一体性
では、最後に金融インフラを制するのは誰なのか。
・140社超を集めたOpen USDか
・すでに130社超のネットワークを動かすUSDGか
・銀行という強みを武器に挑むSoFiUSDか
そして、SoFiは自らSoFiUSDを発行しながら、なぜOpen Standardにも参加したのか。
次回は、Open USD・USDG・SoFiUSDの三つを比較しながら、最後に金融インフラを制するのは誰なのか、そしてSoFiが複数の未来へ備えている可能性について考えてみたい。
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