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降伏宣言-予告-

夏休みという名の刺客スナイパーにより生活リズムが血を流している崩壊している

血に染まっていないのは、
隣の隣の家のおじさんの爆発音で起床する私と、
おじ爆発の爆風で吹き飛ばされてきた鳩を見ながらEAAアミノ酸爆弾を飲む私と、
猫の死闘ボイスを聴きながらピラティスをする私だ。

猫「シャァァァァア!!!!」
私「(ジャックナイフウィーンガシャンッ)」

猫「ブニャァァアァァアッ!!!!」
私「(ハンドレッド顎しゃくれ腕ブンブン)」


iPhoneのアラームより目覚まし時計を極めている隣の隣の家のおじさんの宣伝記事。

問題はこの後の私である。

AM9:00の私

紅に染まったこのオレオ〜正:紅に染まったこの俺を!」
とふざけている私に向かって
舌でオームΩを作りながらオセロ勝負を仕掛けてくる娘。

Ωオーム
国際単位系(SI)の電気抵抗の単位。

デジタル大辞泉

しかもオームΩの逆、
つまり無抵抗を装いながら勝負を仕掛けてくるのだからタチが悪い。

娘からすれば自分の母親は
白と黒のオレオを勝手に“紅”に染めている暇人である。

「断る理由がねェよなァ?フフッ…」
とでも言いたげなニヒルな目つきをしている。
口元は依然として逆オームΩである。

断ると
「不戦勝!」
とか言って勝手に自分の戦績に輝き+1プラスワンなどと鬱陶しいことをされそうなので
受けて立つことにした。

こうして
四隅を巡る白と黒の激闘※オセロの火蓋は
AM9:00土日祝も営業に切られるように設定されたのだ。

オセロとオレオの記憶

“オセロ勝負挑まれ体質”は5歳の頃から始まった。
当時アラウンドサーティだった母に挑まれたのが最初だ。
白と黒といえば自分が保育園に履いていくタイツの色か、スヌーピーくらいしか知らない私を完膚なきまで打ちのめすアラサー

私は獅子の子か。
オセロ=獅子の子落としなのか。

獅子の子落とし
自分の子に苦難の道を歩ませ、その器量を試すことのたとえ。
─獅子は子を生むとその子を深い谷に
投げ落とし、よじ登って来た強い子だけを
育てるという言い伝えから。

デジタル大辞泉

母は、
「勝負は手を抜いたら相手に失礼だから。」
と言い、私を3回も打ち負かした。
盤面は真っ白。
私の頭も真っ白。

燃え尽きたぜ…真っ白にな…

駒もろとも白に染められてしまった。

黒が一段階過剰なのがオレオ、
黒が一段階控えめなのがオセロ。

よもぎ(5歳)による「オセロとオレオの相違点」

オセロでしこたま遊んだ後、
母がおやつにオレオを繰り出してきた。
食べずにオレオを凝視している私の企みは確実に見透かされている。

でも言わせてくれ。
これ、熱湯風呂で言うところの
「押すなよ?」=準備完了今だ、押せ!
でしょう?

あれから3年経ってもなお私は
オセロ盤にオレオを乗せてみたかった。
夢を夢のまま終わらせるほど大人ではなかった。
小学3年生になった私はついにやった。
親がいない隙に乗せた。

オレオがご在宅で、親が不在…
この2つのタイミングが揃った奇跡的なあの日。

ガサガサ音がしないように、
慎重に、慎重にオレオの封を切った。

誰もいな…
いや、黒い犬がこちらを見ている。
裏返しても黒い犬が。


裏返しても黒いし、足から“だだちゃ豆”のにおいがする犬の話。

─コトン…
オセロ盤に乗せられたオレオは堂々としている。

だが様子がおかしい。
1オレオにつき4マスだ。
さながら電車の座席で開脚している迷惑客である。

しかし、当時母により真っ白に染められた盤面を
真っ黒に染め上げ
どこか清々しくもある。
とはいえさすがに黒しかないというのも何かわざとらしくて嫌だった。
並べたオレオのうち2つは黒面を剥がしてやった。
すると、何やら自然に勝利したかのような見た目に仕上がった。

でも満たされることはない。
あくまでもこの勝利はフェイクなのだから。

ふと我に帰った時、
とんでもないことに気づいた。

私はオレオが、いや、この白いクリームがどう頑張っても食べられない。
だから親がいる時しか食べてこなかった。

…また“白”に苦しめられている。

証拠隠滅がはかれない。
絶対絶滅である。

裏返しても黒い犬ラブラドール・レトリバー「俺に任せろ!」

犬にオレオはNGである。

裏返しても黒い犬ラブラドール・レトリバー「…俺なら一瞬で消せる丸呑みんだがなあ…」

犬にオレオは絶対にNGである。
これはひっくり返せない掟だ。

とりあえず剥がしたオレオを丁寧に貼りつけ
袋に戻した。

オセロ盤は水拭きした。

しかしだ、一度“黒”になったらそう覆らないのが犯した罪。
あれだけ“白”を“黒”に変えたかったのに
今では“黒”を“白”にしたくてもがいている。

皮肉なものだ。

いっそ袋に入れて砕けば灰色くらいにはなりそうだが、
砕いたからといってこの罪は消えない。


カタカタ…
カチャンカチャン…
キィ…パタン…


──────────
母、帰る
──────────


私は諦めた。
真っ黒な罪を抱えたまま、白旗を揚げる。

黒と黒で白を挟んだクッキーを持って、
白状した。

3年越しの夢をつい、叶えてしまった事実を。

母は無言で真っ白な皿に夢の残骸を乗せた。
しばらく空白の時が流れた。

「食べよっか。」
私の前にはアイスクリームスプーンが置かれている。
これはオレオのクリームを剥がすのに私がいつも使っているスプーンである。
年に1回陽の目を見るか見ないかのシロモノ。

私はオレオを真っ黒にしながら泣いた。
母はオレオの白ばかりを食べながら笑った。

オセロも、オレオも
まだ親には敵わない。

そう悟った小学3年の夏の半ばであった。

オレオ
生年月日:1912年タイタニック沈没3月6日(魚座)
出身地:アメリカ

世界18か国で製造されるオレオは年間400億枚を超え、それらをすべて繋げると、なんと地球5周分20,000kmの長さに匹敵します!

モンデリーズ・インターナショナル


オレオdeオセロ罪悪事はほとんど走らなかったけれど、オレオ自身は1年間で約5093里走る。

そしてあのオセロ盤は時を超えて今、再び私を苦しめている。

毎朝9時の四隅を巡る白と黒の激闘※オセロである。

勝負の間も逆オームΩで無抵抗を装いながら煽ってくる娘。
なかなかに手強い。

「結構、やるじゃん。」
となぜか若干上の方からものを言う。

「勝負は手を抜いたら相手に失礼だから。」
どころではない。
必死に食らいついているのは私の方である。
“獅子の子落とし”ではない。
を生んだのだ。

盤面の白と黒が入れ替わるたびに私は目を白黒させる。

娘の瞳には闘志に満ちた紅の炎が燃えている。

今の所、毎回5枚差で私がかろうじて勝利している。
負けたところでひしゃげる娘ではない。
何度でも挑んでくるが、1日に1勝負までと決めている。
それ以上だと、私のオセロとのシンクロ率が上がりすぎて精神汚染が起こるためだ。

何度も打ち負かされたトラウマが蘇り、心身ともに破滅する。

…来年の今頃にはもう娘の大勝利だろう。
それでいい。

紅に染まる空を眺めながら
オレオの黒をかじる。

結局白を克服することはできなかった。


【参考資料】
◽︎KINNIKU LAB
ジャック・ナイフ、ハンドレッド


◽︎X JAPAN
「紅」

◽︎モンデリーズ・ジャパン
OREO

◽︎モンデリーズ・インターナショナル

◽︎ROCKET NEWS24
『オレオ』のデザインをジッと見たことある? こんな「意味や過去」が隠されているかもしれないんだって!

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