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ラブと枝豆

2025年6月10日(火)11:03
身に覚えのないサインイン通知が来ました。

「許可しない」

大いに身に覚えはあります。
紫陽花だって咲いていますし、
ちょっと油断したらバゲットにカビ生えてましたし、
半袖だと寒かったですし、
長袖だと暑かったですし、
頭だって痛かった。
そもそも雨も降っていましたからね。

そうです、認めたくないだけです。

許可するもしないも“梅雨”には強制サインインです。

とはいえ悪口ばかりも言ってはいられません。

今日は雨に合わせてしっとりと、
梅雨の思い出をば語りましょう、の第一弾。

【ラブラドールの肉球とだだちゃ豆】(7歳の頃小学2年)

気の早い“だだちゃ豆”がスーパーに並ぶものですから、母が買ってきては茹でるのです。
ただ、この頃の私はまだ“だだちゃ豆”を知りませんでした。

ちょうど今日のような雨の日、
学校から帰り家に入った途端“あの匂い”がしたのです。
チョコ黒いラブラドール(犬)の足のにおいする!
そうです。
ラブラドール・レトリバーの肉球の匂いを煮詰めたような凄まじい臭気。
単刀直入に申し上げると、
臭っさクッサ
とはいえ、そんなことを言ったら
帰宅した私に尻尾をブンブン振り回しながら
「おかえりー!おつかれー!」
と言わんばかりに近づいてくるチョコに申し訳ないので、
とりあえず
「ただいま」
とだけ言ってその場をやり過ごす。

しかし、家の中心部分に近づく程に強くなるラブラドールの足臭
チョコは私が玄関に放り投げた靴下に食いついていて私とは距離が離れている。
臭いの強さとチョコとの距離は反比例。
7歳だった私の脳は半ば錯乱状態。

チョコの姿が見えないことを確認し、台所にいる母に声をかける。
「お母さん、今日チョコの足の匂いすごくない?」
「そう?何も匂わないけど。」
母の眼鏡が曇っている。
相変わらずチョコは玄関にいるのか姿すら見えない。
しかし明らかに台所が最も臭う。

とはいえ、
「台所が臭い」
なんて言うのも母に申し訳ない気がするので黙って幾ばくか臭いの薄いリビングのテーブルに宿題を広げる私。
“曜”という漢字は上手く書けないし、
くり下りの計算は訳がわからないし、
部屋は臭いし、
もうお手上げだぜ状態の私に母が眼鏡を曇らせながら接近してくる。
その手には湯気を放ちまくる緑色が乗せられた皿がある。

「まあ息抜きにどう?茹でたてだよ!」
眼鏡が曇っていてもわかる、母は笑顔だ。
それも最高潮の時の笑顔だ。
同時にラブラドールの足臭も最高潮に達している。
私の我慢の限界も最高潮に達した。
臭っさクッサ!!!!
自分でも驚くほどの大きな声が出た。
トドロキッシシモ轟轟轟をも遥かに凌駕する音量だ。

※トドロキッシシモ:凄まじく大きな音のこと

「お母さん、これチョコの足の匂いする。」
「そう?何も匂わないけど。」
母よ、犬の足の匂いでないまでも
何も匂わないということはないでしょう。
母の嗅覚に一抹の不安を覚える私をよそに、
“息抜きにどう?”と持ってきた湯気を放ちまくる緑色を自分で食べている母。

「これ何?枝豆みたいに見えるけど…」
だだちゃ豆っていうんだよ。枝豆みたいも何も枝豆だからね。」
とはいえ嗅ぎ慣れた枝豆のそれとは全く異なる臭気。
「食べてみなって。美味しいから。」
そうは言わても凝縮されたラブラドールの肉球のかほりのおかげで“美味しいから”に対する疑念を拭い去ることができない。
母は次から次へと口の中へだだちゃ豆とやらを放り込んでいく。
悪食を自称する母だからこそなし得る技なのか、
はたまた自分が臆病過ぎるのか。
意を決した私は湯気がおさまり始めた緑色の中から一番小さなものをつまみ上げた。
恐る恐る口元に持ってくる。
臭っさクッサ!!!
一瞬揺らぎかけた決心。
口から大きく息を吸い、グッと息を止めた。
サヤを指で挟み、口の中目掛けて弾き飛ばした。
奥歯で豆を潰す。
わずかに塩味えんみを感じる。
ゆっくりと鼻から外気を吸い込んで、呼吸を再開した。
口いっぱいに広がるチョコの足の匂い。
慌てて水で喉の奥へと押し込んだ。

臭っさクッサ
「そう?この匂いがいいのに!」
さっきまで何も匂わないと言っていたにも関わらず
“この匂いがいい”と言ってのける母に
安堵してしまう自分を嘲笑しながら私は天を仰いだ。

「これはラブラドールの肉球味チョコの足味だ…」
そう心の中でつぶやいた。

いつの間にかチョコがリビングに来ていた。
完全に湯気の出なくなった緑色を物欲しげな瞳で見つめている。
母が手のひらに豆を出し、チョコに差し出すと
物凄い勢いで食べた。
食べたというより、丸呑みにした。
ラブラドール・レトリバーラブラドールの肉球味を丸呑みにした。

とんでもない共食いを見てしまったような、
何とも言えない湿度のある感覚が今もまだべったりと鳩尾のあたりに残っている。

「ラブと枝豆」

途中から小説風になりましたね。
唐突に芥川龍之介になりたくなってしまったんですね。
定期的に芥川龍之介になりたくなるんです。
で、毎回何者にもなれずに終わるのですが
それでいいんですよね、きっと。

それはさておき、今では大好物となっただだちゃ豆7歳の頃小学2年は全然だめでした。
「きっと、大人の味なんだ。」と言い聞かせていたあの日の私を嘲笑うかのように
3歳の頃からだだちゃ豆を好んで食べている娘(8)小学2年
昨日も夕飯に食べましたよ、ラブラドーだだちゃ豆

いやよいやよも好きのうち。
当時の私、だだちゃ豆こそだめでしたが
犬の足の匂いは大好きで、それこそ犬が迷惑そうにしていても嗅ぎにいくような奴だったんです。
もしかしてもしかすると、犬が家にいなければ特段何も思わず食べられていた可能性がわずかにありますが、それはもう確かめようがないので
迷宮入りです。

書いていたらだだちゃ豆食べたくなってしまいました。
ところでだだちゃ豆の“だだ”って何なのでしょう。
駄々だだをこねるの“だだ”でしょうか。

1.山形県庄内地方説(最有力)
だだちゃ”=親父・お父さん
(山形県庄内地方の方言)
庄内藩、鶴岡の殿様が相当な枝豆ラヴァーで
毎日枝豆を持ち寄らせては
「今日はどこのだだちゃ“オヤジ”の枝豆か?」
と訊ねた事から、「だだちゃ豆」と呼ばれるようになったという説。

2.家長である“お父さん”=ダダチャ(庄内弁)
最初に食べるのが正当であるということからダダチャ(お父さん)が先に食べるから「だだちゃ豆」と呼ぶようになったという説。

3.福島県伊達郡説
福島県伊達郡から豆を持ち込んで作った
伊達だての茶豆」から“だだちゃ豆”に転じたという説。
加えて、表面が茶色の毛で覆われていることから
だだちゃ豆”と言われるようになったという考え方もある。

山形 味の農園HP

全然駄々こねていませんでしたね。
なお、私のだだちゃ豆ダダチャは仕事が凄まじくて帰宅が遅すぎるので家族の中で最初に枝豆を食べたことはないと思います。
最後に食べていたはずです。
なので、我が家の場合は
ガガチャ豆です。
ガガチャ=お母さん(庄内弁)

さあ、関東地方は梅雨本番。
今年こそ特大かたつむり、見つけたいですね。


【ラブと●●シリーズ】
第二弾


ラブラドールに染みついた蚊取り線香の香りがたまらない話。

第三弾


ラブラドールがインドア派だったけれどSDGs的にオッケーです。


【参考資料】
◽︎JA鶴岡online
だだぱら

◽︎山形 味の農園
「だだちゃ豆」の名前の由来とは

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