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スケバンの愛したりんご飴

笑いすぎて門が福で大渋滞している。

門の前が福で溢れかえっちまうくらい笑いに笑った。

もう我が家の前は新型iPhone発売前夜のApple Storeの如く福が大行列している。

笑う門には福来まくる、である。

この3連休、我が街最大級のイベントが開催されていた。
基本的に過疎なのだが、どこにそんなに人いたんだよというくらいこの時ばかりは人だらけになる。

最終日、義母と娘と私はこのクセツヨイベントに参加した。
私は人混みが苦手なので、最後までごねたのだが
2人があまりにも玄関で騒ぐので仕方がないからついて行った。
私は天照大神あまてらすおおみかみなのか?

我が家から現場までは、脚が長くてシャキシャキ歩ける人なら徒歩10分、
ダックスフンドをも凌駕する脚の短さを誇る私のような人なら徒歩15分程度である。

進行方向が同じ生物に普段の5倍は遭遇した。

推定、地面から5cm程浮いて歩いているのが祭に行く人たちで、
地に足つけて、陽の光に怯えている地底人みたいなのが仕事に行く人たち。

クサヤとか、おこわとか到底祭の屋台飯とは思えないような激渋ラインナップから
足揉みとかリース作りなどの体験型まで多種多様。

蛇口を売っている屋台もあった。
よく見たらこの間ワシが詰まらせたトイレ直してくれた会社の屋台だった。

果たして屋台で蛇口が売れるのかは極めて「?」である。
72時間密着カメラ設置したい。

初手でクサヤを購入して、激臭を撒き散らしながら移動するワシ。
前を歩く人に振り向かれるし、後ろから来たトイプードルが追い抜きざまに「グヘェくせえ」みたいな顔をしていた。
終始、へこへこと頭を下げる。

と、ここで義母が突然大声を出す。
パノラマの視線を浴びる我々。
へこへこの角度はどんどん鋭くなり、回数も増えていく。
赤べこが青べこになるくらい、へこへこ通り越してべこべこする。

義母「私、りんご飴食べるけど2人は?」
私「パスで!」
娘「パスで!」

割り箸に刺さったりんご飴が太陽の光を弾いてキラキラと輝いている。
「お待たせ!」
並んでいる中でひときわ大きなものを手にしてうれしそうにしている義母は、この3人の中の誰よりも5歳児を極めている。

……なんという朗らかな時間!
……なんという心温まる光景!
とハートウォーミングファミリームービーの素敵なラストシーンと言った世界観を言語化しようとする私……

──の思いを怒涛の勢いでぶち壊していく義母。

「最近のりんご飴は気合いが足りない!」
とか言いながらバリバリとりんご飴を噛み砕いている。
顎強すぎ!

ハートウォーミングファミリームービーではない!
パニックアドベンチャームービーじゃないか!
『マンイーター』でしかない。

マンイーター】原題: Rogue
監督:グレッグ・マクリーン
脚本:グレッグ・マクリーン
製作:グレッグ・マクリーン
       マット・ハーン
       デヴィッド・ライトフット
※グレッグ・マクリーンだらけ
製作国:オーストラリア、アメリカ
公開:2007年11月8日(オーストラリア)
        2012年4月14日(日本)
〈内容〉
リバー・クルーズに参加した一行は予定外のルートを通り、前人未到の湖を発見。
喜びも束の間、何かが下から突き上げてくる。
沈没を避けるため、近くにあった小島に上陸した彼らを待ち受けていたのは、巨大な人食い生物デカいワニだった。

Wikipedia+MOVIE WALKER PRESS

マンイー……ではなく義母、りんご飴をバリバリ砕きながら人混みをズイズイ進んでいく。
そして、地元のブルワリーの屋台を発見。

とここで、話の続きが破綻するので早めに皆さまに自白しておかねばならないことがある。

“割り箸に刺さったりんご飴が太陽の光を弾いてキラキラと輝いている。”
には大嘘が潜んでいるのだが、わかるだろうか。

今日はもったいぶらずに言うぞ!

“りんご飴が太陽の光を弾いて”
ここは、りんご以上に真っ赤な嘘だ。

私の雨乞いパワーは全国のどの「雨女」よりも強い。
家を出る直前までビカビカと照っていた太陽、私が外に出た瞬間雲隠れしたからな。
にわかにかき曇りってやつ。

りんご飴を買った時はすでに空は容量オーバーの膀胱といった様相を見せていた。

そんな曇り空ですらキラキラしているように見えたんだよ、りんご飴が。

我ながら素晴らしい妄想補正力じゃないか?
加工アプリなんかよりよっぽど私の方が優れていると自負している。

とはいえ太陽の奴、私に見られちゃ困ることをしているんじゃなかろうか。
どんなに晴れていても大概隠れますよね?
私が出ると。

だが、真夏に関しては違うよな。
私が出た瞬間に雲を蹴散らして焼き尽くそうとしてくる。

太陽に恨まれるようなことしたか?
ワシの先祖がプロミネンス妨害したとか?
黒点のレーザー治療に失敗したとか?

我こそが、天不照大神あまてらさないおおみかみである!

と、太陽との攻防戦を繰り広げていると
義母は完膚かんぷなきまでに砕かれた残りわずかとなったりんご飴をくわえ、両手にビールを持ってドヤ顔をしている。

……美人の変顔って何でこんなにも変を極めてるんだよ。
クサヤが今にも泳ぎ出すくらいの天変地異級の変なドヤ顔やめてくれよ。

そして、ついに空の膀胱が限界を迎え、降り出した雨がビールの泡を穿うがつ。

りんご飴をつまみに、ビールをチェイサーにビールを飲む義母。
違う。
ビールの雨割りをチェイサーにビールの雨割りを飲む義母。

その後再び太陽が顔を出した。

道ゆく人は私から放たれるクサヤ臭に顔をしかめたり、
「あ、晴れてきたね!」
と空に希望を見出したりと感情が忙しない。

その希望を砕くように、盛大にキツネが挙式を始めた。

またギャアギャアと群衆は駆けていく。
群衆雪崩が平地で起こりかねない。
さすがに身の危険を感じた我々は帰路につくことにした。

その前に義母はもう一本りんご飴を買い足し、祭りとは無関係の閑散とした道でバリバリ食べながらシャキシャキ歩いていた。
娘は平然と並走ならぬ並歩している。
ずぶ濡れダックスフンドの私はその5mほど後ろを歩く。

一方、その頃天野は我が実家にて残る柿の巨木2本分の収穫作業を率先して担ってくれていたので様子を見にいく。

なぜか知らないがアラウンドサーティ男性が柿の巨木のわりとてっぺん寄りの枝にまたがって暴風に曝されている。

私「いやあの、雨降ってるし風強いし降りたら?」
天野「この下に鳩がいて、寝てる?寝てるのかは知らないけど動かないの!俺が動いたら迷惑だと思うんだよね、鳩に。」

鳩に気をつかう男、天野。
しかしだ。
その大声で鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔面になっているではないか!

義母がずいぶんとだんまりなので、
息子の優しさに感動しているのかと思い、やっとハートウォーミングな流れに……と思いきや。

火袋200枚も注文する奴の血をひいているのだからろくなもんではないと自分の息子をディスる義母。

防火袋を200枚も注文する奴
義母の夫、天野の実父、私の義父、娘の祖父。
夏頃、話題の「リチウムイオンバッテリー大爆発」を恐れ家中のありとあらゆるものを防火袋に突っ込んでいた猛者。
不安に駆られまくり、誤発注。
200枚もの防火袋を発注し、家を段ボールだらけにした。

Yomopedia

要するに、スットコドッコイ義父
近頃話題の“リチウムイオンバッテリー大爆発”に並々ならぬ恐怖心を抱き、
家中のリチウムイオンバッテリーというリチウムイオンバッテリー全てを防火袋に入れてしまったというのがことの顛末らしい。
(中略)
で、積み上がっている段ボールの中身は全てこの防火袋なのだと告げる義母。
(中略)
これに関してはただの発注ミスで
20買おうとして200買ったらしい。

いや、そもそも20もいらんだろう。

そんでもって200。

もうそのうち家ごと防火袋に包まれるんじゃねェかな、と淡い期待を抱き始めた頃。

「義母と私のロケンロー」

とはいえこんな優しい息子を無情にも切り捨てる義母、規格外じゃなかろうか。
びっくりした!

「あらあ、私のかわいいかわいい息子ちゃんがびしょ濡れで暴風に曝されて……!なんてことなの!」
とはならんのか!

のんきに
「りんご飴、予備にあと2本買っとけばよかった……」
などと言っている。

なお、
「最近のりんご飴は気合いが足りない!」
と言われた屋台の店主は
「うちのはがっつり気合い入ってますんで!」
と応戦。

言われなくてもわかるくらい飴、ぶ厚かった。

で、義母曰く
「あそこのりんご飴は最高に気合い入ってた!」
と絶賛。

りんご飴を“気合い入ってる”“気合い入ってない”で評価する人、初めて見た。

そして、息子がもいだ柿を食べてひとこと。
「この柿、気合い入ってんね!」

夜、天野に聞いた。

私「元ヤン義母はさ、昔っからああなの?りんご飴は気合いとか気合いじゃないとかなの?」
天野「わりとそうだね。弁当の唐揚げ失敗した時とか、今日の唐揚げ気合い入りまくってるからって言われたことあるし。」

娘「この唐揚げ、気合い入ってんね!」

──やめろ!!
唐揚げあげながら無関係の妄想をしてきたら火山岩が大量に生成されちまっただけだよ!
気合い入ってる唐揚げではない!
それは玄武岩!

玄武岩
苦鉄質火山岩の一種。
深成岩。
塩基性斜長石と輝石や橄欖石かんらんせきを主成分とする灰黒色から黒色の緻密、細粒の岩石。
斑状を呈することが多い。
化学組成により、ソレイアイト質玄武岩、アルカリカンラン石玄武岩、カルクアルカリ玄武岩に分類される。
ふつう溶岩流や岩床として産出する。

Wikipedia+精選版日本国語大辞典

こうして、気合の入った玄武岩を囲み笑い合う連休最終日の夜は更けていく。

忌み嫌われがちな月曜日の代わりに今週は火曜日がその一役を担う。

別に気合いなんて入れなくてもいい。

ゆるくいこうぜ!

玄関前では福が大勢でどんちゃん騒ぎしている。

笑う門には福来まくる。

お後がよろしいようで。

(なにもよろしくはない)


私の作った唐揚げを“気合い入ってる”と言い放った娘が実は優しい人物である件。



【参考資料】
◽︎MOVIE WALKER PRESS
映画『マンイーター』

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