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『社会人研修は、失敗を学ぶ貴重な体験ができる時間』

(実戦では経験したくない「失敗」も、研修だから遠慮なくやってしまおう)

プロローグ
 日本の社会は失敗を恐れチャレンジできないといったことを著した書籍が多数出版されています※1。実は、そうした雰囲気を、私が担当する社会人研修を通じ実際に感じたこともあり、そのことについて少し書き起こしてみました。
 以前、研修の目的には「知識や技術の習得」だけでなく、「人間関係の形成」も暗に内包しているようなことを書き起こしてみましたが(↓)、さらにもうひとつ大切な目的がありそうなことに気がついた感じでした。

 結論から申しますと、せっかくの研修の機会だから、あえて失敗してみようよ!という失敗経験できる場でもあるということでした。

◆できれば失敗は避けたいもの
 起きたこと(経験したこと)は、成功も失敗もどんどん蓄積し人生をさらに豊かにしていくことを書物を通して感じました。ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、本田宗一郎、ウィンストン・チャーチル、ネルソン・マンデラ・・・※2、多くの偉人や成功者は失敗からの学びが大切であることを述べております。例えば、スティーブ・ジョブズは『失敗は成功への道のりの一部だ』と語っています※3。
 とは言え、実態としては、やっぱり失敗はいやですよね。私のような凡人ならば、出来れば失敗したくないですし、避けてしまいたいと考えるのが普通ではないかと想像します。日々の仕事もいっぱいいっぱいで、失敗する余裕などありませんしね(しかも、人の目も気になりますしね)。

◆”負けるは恥”の日本人
 そもそも、普通の日本人は負け=恥と考える傾向にあることは、例えば、武士道では<生き恥を晒さず名誉を守る>(「武士道とは死ぬことと見つけたり」※4)という価値観さえある民族なのでよくわかること。つまり、負けたあとに生き延びる世界まで考えないことも多そうな印象でした(失敗したら切腹しちゃうので、そこでゲームオーバーですもんね)。
 場合によっては、失敗後の世界から正しく学べたはずのチャンスを逸しているのかも。実際の未来は想像する未来と違うのですけどね、残念。※5

◆現代社会でも同じことが
 こうしたことを、担当する社会人研修の実習時間を通じて実際に感じたのでした。
 些末なことではありますが、実習前日のデスクワークで、❶受講生が導き出した作業方法と❷講師が導き出した作業方法があり、実習当日どちらで実行するか講師が受講生に問いかけたところ、ほぼ全員が❷を選択していました。講師が❶でやってみない?と投げかけても、周りの顔を見てなかなか決断できず・・・。そんな姿に、失敗しないようどうするか気を使い、恥をかかないための選択肢を一生懸命探している印象もあり、徒に時間を費やしている感じでした。失敗すると恥ずかしいし、あとあと尻拭いのめんどくささもあり、始める前から正解探しで思考ぐるぐるの労働荷重状態。私も同じですから、その気持ちがよくわかるのでした。

◆「ドンマイ」「ナイスファイト」
 そんなこと考えていたら、ある書物※6のことを思い出し、フッと失敗に対する態度はアメリカ人から学べそうな気がしました。
 例えば、失敗した時、日本人は「ドンマイ」、アメリカ人は「ナイスファイト」といいます。誰かが失敗した時に、気にするな(ドンマイ)と声をかける日本人と、よくやった(ナイスファイト)と声をかけるアメリカ人では、失敗に対する感覚が全く違う印象です。当然、未来に向けた考え方や姿勢も全然異なるのかもしれません。
 一体どうしたらアメリカ人のように「ナイスファイト」といえるようになるのでしょうか。

◆失敗には反省より次に向かう意識
 失敗を恐れる場合、往々にして自分の目線が現在にあるため「減点主義」や「完璧主義」に陥りやすく、失敗を恐れる原因となるのかもしれません。そんなときは、意識的に目線を未来におくとよいそうです。どうするか?反省時間を少なくし、次に向かうことがコツ※7とのことです。
 日本人は反省しすぎか?失敗から学ぼうという真摯さはよいですが、考えすぎるとネガティブ思考にはまり逆効果になるところは心配なのです。※8、※9
 未来に何が起きるか誰にもわかりませんから、まずは振り返り時間を減らしてみるのはよい方法かもしれません。

◆失敗には寛容的な態度
 万一、反省時間を減らしたことで失敗に繋がっても、みんなで「ナイスファイト!」とエールを送って、次に向かうよう切り替えることは悪いことでもない印象です。そうすることで失敗への抵抗感は少しずつ減り、チャレンジ精神が培われていくかもしれませんから。
 このため、こうした仲間をどんどん増やすためにも、まずは自分が他者の失敗に対し、寛容な態度をとるところから始めてみるのはいかがでしょう。これが周囲に感染し、やがて組織全体がナイスファイトでチャレンジする雰囲気に向かうとよいですよね。
 みなさんは、最近、失敗したからこそ次に向かうことができたという良い経験をしたことはありましたか?

◆まとめ
 最後に、現実社会では失敗からしか学べないこともけっこう多いはず。失敗をどんどん経験していけるとよいのですが、実践の場でいきなり失敗に飛び込むのはたいへん難しいもの。
 そのため、研修の場がひとり一人の失敗経験ができる場として寄与できたらよいなあと思うのです。そして、その経験を「人間関係」(↓)を通じて繋いでいけたら、きっとチャレンジ精神があちこちで醸成されていくかもしれませんね。
 このように、研修の場が「大切な知識や技術の習得」だけでなく、失敗経験からチャレンジ精神を醸成していくための第一歩となることも、目的のひとつとして暗に内包していけたらよいなと思うところでした。そういう仕掛けをこれからも何気に仕込んでいきたいと思います。

                             以上
                               4110

参考)
※1 たとえば・・・畑村洋太郎「失敗学のすすめ」(講談社)2005年、野中郁次郎 他「失敗の本質」(中央公論新社)1994年、マシュー・サイド「失敗の科学」(ディスカバー・トゥエンティワン)2016年など
※2 大野正人「失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!」(文響社)2018年 
※3 竹内一正「スティーブ・ジョブズ 失敗を勝利に変える底力」(PHP新書)2010年
※4 山本常朝「葉隠」(岩波文庫)1940年
※5 池上彰『池上彰の未来予測 After 2040』(主婦の友社)2024年
※6 アーヴィング・ジャニス「政策決定と大失敗の心理学的研究」(新曜社)2022年
※7 遠藤功((株)シナ・コーポレーション代表取締役)『いま企業経営において大切なこと~衰退を越えて躍動する組織の条件~』(Uniposセミナー講演)20220127より
※8 心理学ではこれを「反すう」といい、ストレスや不安を増幅させ健康に悪影響を及ぼすこともわかっています。
※9 人間は一日1.2~6万回何かを考えており(鳥潟幸志『AIが答えを出せない問の設定力』(クロスメディアパブリッシング)2024年P48-49)、そのうち8割はネガティブなことを考えているそうです(鈴木進介(思考の整理家/株式会社コンパス代表取締役)『人の考えごとの8割はネガティブ「余裕がない」状況を生む3つのクセ』(PHP online)20230918より)。考えすぎは心身ともによくないのかもしれません。

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