学びの場で「人間関係」をつないでいく
イントロ
今年度、会社の研修担当として勤務するようになり、全国から集まる従業員や社員が受講する姿を見てふっと思うことがありました。彼らは仕事に必要となる知識や技術を習得する目的でここに集まるのですが、「人間関係」も学んでいってくれたらよいなぁと感じるのです。受講生は、勤務場所や仕事もそれぞれ違いますが、研修後もコンタクトをとり「人間関係」を広げていく。ここが、そのきっかけの場になれば素敵なことだと思います。こうしたことから、「人間関係」の大切さについて、思いを馳せてみました。
1)「人間関係」をつないでいく
『スモール・ワールド現象』(※1)
『スモール・ワールド現象』とは、知り合い関係を芋づる式にたどっていけば比較的簡単に世界中の誰にでも行き着くという仮説です。これは「6次の隔たり」とも言われており、友人の友人をたどっていくと6人目でアメリカ大統領にさえたどり着くというものです。
・なぜたどり着く?
友人の友人をたどっていくと、途中で広い人脈をもつ人に巡り合うことが多く、そこから飛躍的に目標とする人に近づくことができます。この広い人脈を持つ人のことを「ハブ」といい、この「ハブ」との偶然の出会いにより、人脈が飛躍的に広がっていくのです。
・人と人をつないでいく
研修での「出会い」から人脈が広がり、キャリアに大きな影響を及ぼす人と巡り逢うことも想像に難くありません。このチャンスを逃してはもったいないです。受講生との「出会い」は研修期間だけの付き合いに終わらせず、ご自身の人脈を広げるため、受講後も人をつないでいくよう意識していただきたいと考えています。
2)大切な人と出会うチャンスは偶然に訪れるもの
予め計画し行動しても、実際はそのとおりにならないことが多いです。全米で成功している人物へのリサーチから、成功者の80%が成功に導いた人との出会いは偶然だったと回答しています※2。このように、自分で想像もしなかった偶然の「出会い」がキャリアに大きく影響する可能性もあり、研修での「出会い」がそうなるかもしれません。 そのために、好奇心、継続性、柔軟性、楽観性、冒険心を大切にすると良いとされています※3。これは教育学の理論に基づくお話であり、個人的な考えではありません。
3)一歩を踏み出すため(まずは考え過ぎない)
ただ、研修終了後に継続してコンタクトをとろうとしても、研修の短期間では親交を深められず、「連絡したら迷惑かな」「嫌がられないだろうか」と躊躇することもあるでしょう。しかし、躊躇しては何も始まりません。人間は考えれば考えるほどネガティブに考えてしまう生き物です※4、※5、※6。 連絡しようかと躊躇し考え続けると、高い確率で連絡しない結論を導き出します。一歩踏み出すためには、熟考するより思い立ったら勇気をもって(※補足)行動に出てしまうほうが良いのです。
4)6割の自分でいこう(完璧を目指さなければ一歩踏み出しやすく「人間関係」も広げやすい?)
独りで何でもできるなら、人とのつながりは必要なく「人間関係」は不要です。しかしながら、人間社会は完全自給自足ができない仕組みであり、他者と関わり生きていかざるを得ません。よって、現実的には「人間関係」が必要であり、仕事でも同じことが言えると推察します。こうしたことを踏まえ、 弊社のグループ討議を伴う研修では、初日のオリエンテーションでグループ討議の心構えとして、以下7点を予め説明しています※7。
①「まずはやってみる」を心掛ける
②コンフォートゾーンから飛び出してみる
③「6割の理解」で突き進もう
④何度でも同じプロセスを繰り返そう
⑤いつでも軌道修正しよう
⑥すぐに成果が出なくても焦らない
⑦発展途上の自分に自信をもとう
例えば、「③6割の理解・・・」で進めるとき※8、残り4割は他者の助けが必要です。これを独りで行うと、作業効率は落ち、細部のツメで見落としが増え、仕事をミスってしまいます※9。結局、残り4割を他者に頼ることで、「人間関係」形成の手助けのほか、仕事の完成度も高くなろのでしょう※10、※11。
最後に
以上のとおり「人間関係」の形成を必要とする意味について書き起こしてみました。仕事でも私生活でも、自分や他者も不完全であることを認識し、考え過ぎず他者とつながり協力していけば、「人間関係」は自ずと広がっていくと推察します。研修でせっかく集合するなら、大切な知見や技術を学ぶだけの機会に終わらせず、「人間関係」も広げる機会として研修の場を活かし、研修終了後も交流を継続してほしいと感じます。そのための仕掛けをたくさん準備して、これからも受講生を待ち構えます。
以上
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(※補足)
一歩を踏み出すための「勇気」がほしい・・・(ヒント4つ)
1. 自分に価値があると思えるときだけ「勇気」を持てる
「(人は)自分に価値があると思えるときだけ『勇気』を持てる。自分に価値があると思えるときとは、自分の行動が周囲の人々にとって役に立つと思えるときだけである(A・アドラー)※12」。 人は貢献感を覚えると「勇気」を持つらしいです。「勇気」には困難を克服する力があり、研修で出会った受講生の「人間関係」形成の助けになると想像できれば、困難を克服し一歩踏み出す「勇気」になるでしょうか。
2. ランダムにコイントスをして動いた人は、躊躇している人より幸運を手にしている
「ランダムにコイントスをして動いた人は、躊躇している人より幸運を手にしている」ことがわかっています※13。さらに、「何か自分なりに無理なく行動できることがあるはず。一歩踏み出したいのなら、現状維持を選ばず、変化を現す行動をすべきである。」とも述べられています。理屈抜きに、一歩を踏み出してみることかもしれません。
3. 軸足を未来に置くと「勇気」が出しやすくなる
こうした一歩を踏み出す「勇気」とは、軸足を未来に置くと出しやすくなるようです。逆に、軸足が現在にあると、「減点主義」「完璧主義」に向かうようです。そうなると、現実を重視し過ぎて、未来に向かうための一歩を踏み出すことに躊躇してしまうこともうなずけますね。どうしたらよいか?未来に軸足を置くためには、反省する時間を少なくして「トライ&エラー」で取り組み、常に次へ次へ向かう意識を持つことです※14。つまり、一歩を踏み出すとは失敗を恐れるなということです。
4. 深刻に受け止めないこと
究極的にはあまり深刻に受け止めないこと。勇気が出ないのに無理をすれば過度なストレスになります。実は、人間が悩まずストレスをためない為に必要な感覚が3つあります。❶把握可能感(だいたいわかった)、❷達成可能感(なんとかなる)、❸有意味感(こんな状況にも大切な意味がある)という感覚※15。これは、第二次大戦後、アウシュビッツから生還したユダヤ人のその後の人生を追跡調査し、多くの生還者がフラッシュバックやPTSDに苛まれる中、およそ3割の生還者はこうした症状がなく、生還後も幸せな人生を送っており、この3割の生還者を調べたところ上記3つの感覚を持ち合わせていた。この3つの感覚があることで、絶望的な状況も気持ちよく生きていけるというなら、平和な今の時代に深く考え悩み躊躇する必要はないかもしれませんね。
詰まるところ、深刻に考えず、「まあ、なんとかなるわ」くらいに考え、コイントスでもして、鼻歌交じりにフットワークよく動き出し、軽やかに「人間関係」を形成していったほうがよい結果につながるかもしれません。
参考:
※1 S・ミルグラム『スモール・ワールド現象』Wikipediaより
※2 J・クランボルツ『その幸運は偶然ではないんです!』(ダイヤモンド社)2005年 P225
※3 「計画的偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)は、偶然の出来事や出会いを積極的に活用してキャリアを築く考え方。予期せぬ偶然の出来事がキャリア形成に重要な役割を果たすとしその偶然を計画的に活用することを提唱するもの。
※4 心理学ではこれを「反すう」といい、ストレスや不安を増幅させ健康に悪影響を及ぼすこともわかっています。
※5 鳥潟幸志『AIが答えを出せない問の設定力』(クロスメディアパブリッシング)2024年P48-49
※6 鈴木進介(思考の整理家/株式会社コンパス代表取締役)『人の考えごとの8割はネガティブ「余裕がない」状況を生む3つのクセ』(PHP online)20230918より
※7 後藤宗明(一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事)「40、50代が始めるリスキリングで重要な7つの心得~すぐに結果は出ないもの焦らずチャレンジを~」(東洋経済online)20240826より
※8 竹内絢香『がんばらなくても死なない』(kadokawa)2020年 P35
※9 M・ロベルト『Ulocked Creativity』(東洋経済新報社)2020年
※10 Robert M. Axelrod「つきあい方の科学: バクテリアから国際関係まで」(HBA出版局)1987年
※11 「囚人のジレンマ」は、個々の最適な選択が全体の最適な結果と一致しないゲーム理論の問題。数学者A・タッカー(1950年)が共同研究で明らかにした概念。
※12 岸見一郎「嫌われる勇気」ダイヤモンド社(2013) P205
※13 Levitt, S.D. 2021. Heads or Tails: The Impact of a Coin Toss on Major Life Decisions and Subsequent Happiness. Rev. Econ. Stud. 88, 378–405.」
※14 遠藤功((株)シナ・コーポレーション代表取締役)『いま企業経営において大切なこと~衰退を越えて躍動する組織の条件~』(Uniposセミナー講演)20220127より
※15 船木彩乃「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)2018年 PP52-56
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